東京の感染者数を5週間ぶん予測した (7月28日版)

※ 8月4日版を公開しました knoa.hatenablog.com


前回の予測

前回、7月21日の5週予測のうち、1週目の週平均は予測26693人→現実25927人となりました。予測がほぼ的中していた割には、34995人が発表された先週金曜などは、現実がかなり上回っていくように見えていたかもしれません。この週は3連休明けだったので、火曜・水曜の少なさと木曜・金曜のリバウンドの差が激しく、週平均の予測だけで済ませているデメリットが出てしまいました。

予測日-7/04-7/11-7/18-7/25
7/06 70001856938890
7/13 1506024500
7/21 26693
現実 338080541621625927

人流の影響を3週前から2週前へ修正する前の、7月6日の予測とはズレが大きくなっています。


今回の予測

(注: 東京都の独特なデータ公開形式の都合で、週の区切りが火曜から翌週月曜までであることに注意してください。グラフ中の「-8/01」は「7/26(火)-8/01(月)」の7日間の週平均を指します)

前回とほぼ同じ予測で、ピークは今週、週平均で3万1000人、1日単位のピークで3万8000人くらいと見ています。なお、昨日7月27日(水)は1日単位のピークの有力候補の1つでしたが、直前のHER-SYSの不具合によって感染者数の一部が持ち越されてしまったため、本日7月28日(木)が本来より大きく膨れ上がってしまいました。直接的な数字でいえば本日の4万0406人が1日単位のピークになる可能性が高いです。

これまで増加していたものを急減に転じさせる原動力は、自然免疫が6割、人流減が4割といったところです。第6波ではBA.1系統によるピークの後、入れ替わるようにBA.2が増えたために減少が鈍くなりましたが、今回は後述のBA.2.75も含めて、そのような兆候はいまのところありません。お盆の影響は読みにくいところですが、お盆をきっかけにした人流の活発化はあくまで一時的なものなので、仮に悪い影響が出るとしても5月のゴールデンウィーク時のように「一回休み」か「ひとマス戻る」だけで、大きな流れとしての減少傾向は継続します。

前回の予測とのわずかな違いは、主にワクチン接種のわずかな加速化と、人流減少のわずかな鈍化の影響によるものです。

さて、検査の逼迫が報道される中で、この感染者数が実態をどれだけ反映しているかという問題があります。当然、検査をあきらめるなどした不足分はあるはずですが、いっぽうで陽性率は既にピークを迎えつつあるように見えます。少なくとも現実の市中で感染が増え続けている状況ではなさそうです。

また、陽性率と感染者数の関係を示したグラフも、今回の波で感染が少なかった時期から順当な曲線を描いて推移していて、前回の第6波で国が検査数を抑制したときのような急変はいまのところありません。少なくとも、検査不足の程度は第6波よりはマシだと言えそうです。


医療の逼迫と社会の停止

ワクチンや自然免疫のおかげで、感染規模が大きいにもかかわらず、前回の第6波に比べて入院は同等、重症は少なくなっていますが、救急医療など現場は既に逼迫しています。満床になりえない、数字だけの7046床という入院病床数に意味はありません。また、死者数は高齢者を中心に感染規模に比例しがちな側面があるので、今後増えていくことも考えられます。

いっぽう、病状の軽重にかかわらず、感染者数が多すぎるあまりに社会が停止する事態にもなっています。低くなった重症化率を喜ぶのはいいのですが、それで問題がなくなったと感じさせてしまうのは間違いです。(欧米並みに今の何倍も感染を経験して、より強い集団免疫を獲得すれば、また新しいステージに至るかもしれませんが、まだ日本はその域に達していません)


BA.2.75 (ケンタウロス)

新しい強力な変異株として報道されていますが、謙虚に見ていまのところ「まだデータが少なすぎてわからない」状態で、杞憂に終わる可能性も十分あります。来週には予測に組み入れることができるかもしれませんが、大した影響がないことに期待します。


予測の条件など

前回と同様ですが、言葉足らずを承知の上で、数字と共に詳しく書き出しておきます。解説記事にはもともと書いてありますが、「祝日や連休など」も列挙項目に加えました。(詳細: 3週前の人流がデルタ株の増減と最も相関していたという解説)

  • 変異株ごとの前週比
    BA.2の前週比に対してBA.2.12.1は1.4倍、BA.5は2.25倍。現実には曲線になると思われるが、BA.2の前週比1.0倍付近では近似できるとみなしている。
  • 2週前の人流
    1週前×1 + 2週前×3 で、実質1.75週前の人流と前週比を対応させている。12日くらい前をピークにした正規分布のほうがより適切だと思われるが、労力の都合で人流データを週単位でしか取れていないので、苦肉の策。厚労省のアドバイザリーボードの資料または都のモニタリング会議の資料から、繁華街の滞留人口を人力で(!)読み取っている。
  • 3週前の感染者数
    3週前の感染者数によって、2週前の人流が変動するという仕組み。以前の予測では感染者数の「最大値が前週比に影響する」としていたが、「週合計が人流に影響する」ほうが現実に即していたので変更した。
  • ワクチン接種
    個人単位では (1-(経過週数/56週))1/4 の曲線で効果が減衰するものとする。都民全員がワクチンと自然免疫を同時に獲得した直後の集団免疫を仮に200%とし、減衰後の 1-(集団免疫/200%)2 だけ前週比が減るものとする。これはワクチンと自然免疫の重なりをひとまとめに扱うための便宜的な近似。また、仮に経過週数が同じなら、対デルタに比べて対オミクロンの効果は80%とする。これらは前週比に与える影響自体は大きいが、週単位で大きく変動するわけではないので、5週予測の精度というよりも、過去の感染の波との整合性に影響している。(大局的な齟齬がなければ、これらの計算式は週単位の予測にはあまり影響しない)
  • 感染による自然免疫
    発表の4倍の感染者数を想定。効果はワクチンと同等とみなす。5週予測に与える影響もワクチンと同様。
  • 入国者数(海外渡航歴のある感染者)
    感染者の絶対数が少ない時期ほど、BA.2の前週比の割にBA.5の前週比が前述の倍率より高くなりやすいので、入国によるかさ増しを想定している。
  • 祝日や連休など
    祝日数×4%だけ休診の影響で感染者数が減るものとする。逆に前週の祝日数×10%だけ、休診明けのリバウンドと行楽などによる感染増で感染者数が増えるものとする。ここはパーセンテージのみならず月曜と金曜の違いや連休日数の違いなど、まだ改善の余地がある。


他の予測など

今週から、第6波でも予測していたCATsによる予測が毎日更新されるようになったほか、7月26日(火)にも1つ公開されていました。(敬称略)

※ 特に断りがない限り、感染者数はいずれも7日平均なので、祝日などによるブレがなければ感染ピークの1日単位の最大値はその1.2倍くらいになることが多いです。


あとがき

BA.5の感染力、重症や死者数、ワクチンの追加接種などの考察は、7月6日版の記事に書いています。

ここに載せていないものも含む各種グラフは、毎日更新しています。