東京の感染者数を5週間ぶん予測した (8月4日版)

※ 8月11日版を公開しました knoa.hatenablog.com


前回の予測

前回、7月28日の5週予測のうち、1週目の週平均は予測31458人→現実32116人となりました。

予測日-7/04-7/11-7/18-7/25-8/01
7/06 7000185693889066093
7/13 150602450034902
7/21 2669331452
7/28 31458
現実 33808054162162592732116

人流の影響を3週前から2週前へ修正する前の、7月6日の予測とはズレが大きくなっています。


今回の予測

(注: 東京都の独特なデータ公開形式の都合で、週の区切りが火曜から翌週月曜までであることに注意してください。グラフ中の「-8/08」は「8/02(火)-8/08(月)」の7日間の週平均を指します)

今回の予測は、大まかな山の形はあまり変わりませんが、先週と見込んでいた週平均のピークを今週3万3000人、1日単位では3万9000人とし、それに伴って全体が後ろへずれ込んでいます。ただし、予測2週目(-8/15)は山の日やお盆の影響も含んでいるので、予測の週平均ほど減少する印象にはならないかもしれません。

この変更の主な要因は「感染増に伴って予測通りに減り続けていた人流が、逆にわずかに増加していた」ことによります。今後ともこのまま増加を続けるようなら、さらに修正が必要かもしれません。

このような人流の急変はデルタ時にも起こっていて、当時の予測記事では「タガが外れたような推移」と表現しています。当時はオリンピックが開幕されたお祭り感、今回は行動制限をしないという強いメッセージが安心感を与えたのではないかとも想像しますが、なにぶん心理的な問題なので、難しいところです。また、変異株の特性もあってか、今回は当時以上に人流の影響がすぐに現れるようになっています。(とは言え、多くの専門家が将来の人流を「現状維持とする」「前年と同様の推移とする」「1%ずつ減るものとする」などと決め打ちしているのに比べれば、都医学研の研究でも示されている「感染者数が人流に影響する」という動的な指標は、それでも優れていると思っています)

ただ、ここ1週間ほど、検査報告の遅れ具合が非常に激しく変動していて、感染者数だけでなく、陰性報告ほど優先度が低くなることから陽性率もアテにならず、実態の正しい把握が難しくなっています。検査数が上限付きで削減されてしまった第6波ほどの事態ではないにしろ、発熱外来の受診抑制の要請(マイナス要因)や、無料検査キットの送付オンラインでの検査診断の開始(プラス要因)などもあって、日々の感染者数の一貫性は薄れてしまっているように思います。


BA.2.75 (ケンタウロス)

引き続き、データが不足していて、今回の予測に組み入れるには至りませんでした。これは逆に言うと、十分なデータが集まるほどBA.2.75の感染が増えていないということでもあります。唯一、ある程度の感染規模になっているインドの推移を見ても、いまのところBA.5とあまり変わらない前週比が続いています。

また、東京都もBA.2.75系統を早期に把握する検査を開始しましたが、BA.5と比べても拡大の兆候は見られません。「大したことなかった」というニュースは報道されないでしょうが、本予測記事では、近いうちにそのように宣言することができるのではないかと期待しています。


予測の条件など

「祝日や連休などの」の数字で試行錯誤しています。そのほかは、前回と同様です。(詳細: 3週前の人流がデルタ株の増減と最も相関していたという解説)

  • 変異株ごとの前週比
    BA.2の前週比に対してBA.2.12.1は1.4倍、BA.5は2.25倍。現実には曲線になると思われるが、BA.2の前週比1.0倍付近では近似できるとみなしている。
  • 2週前の人流
    1週前×1 + 2週前×3 で、実質1.75週前の人流と前週比を対応させている。12日くらい前をピークにした正規分布のほうがより適切だと思われるが、労力の都合で人流データを週単位でしか取れていないので、苦肉の策。厚労省のアドバイザリーボードの資料または都のモニタリング会議の資料から、繁華街の滞留人口を人力で(!)読み取っている。
  • 3週前の感染者数
    3週前の感染者数によって、2週前の人流が変動するという仕組み。以前の予測では感染者数の「最大値が前週比に影響する」としていたが、「週合計が人流に影響する」ほうが現実に即していたので変更した。
  • ワクチン接種
    個人単位では (1-(経過週数/56週))1/4 の曲線で効果が減衰するものとする。都民全員がワクチンと自然免疫を同時に獲得した直後の集団免疫を仮に200%とし、減衰後の 1-(集団免疫/200%)2 だけ前週比が減るものとする。これはワクチンと自然免疫の重なりをひとまとめに扱うための便宜的な近似。また、仮に経過週数が同じなら、対デルタに比べて対オミクロンの効果は80%とする。これらは前週比に与える影響自体は大きいが、週単位で大きく変動するわけではないので、5週予測の精度というよりも、過去の感染の波との整合性に影響している。(大局的な齟齬がなければ、これらの計算式は週単位の予測にはあまり影響しない)
  • 感染による自然免疫
    発表の4倍の感染者数を想定。効果はワクチンと同等とみなす。5週予測に与える影響もワクチンと同様。
  • 入国者数(海外渡航歴のある感染者)
    感染者の絶対数が少ない時期ほど、BA.2の前週比の割にBA.5の前週比が前述の倍率より高くなりやすいので、入国によるかさ増しを想定している。
  • 祝日や連休など
    祝日は休診の影響でいったん感染者数が減り、逆にその後は休診明けのリバウンドと行楽などによる感染増で感染者数が増えるものとする。月曜と金曜の違いや連休日数に応じて、3.5%から21%までの幅で決め打ちしているが、まだ改善の余地がある。


他の予測など

今週は、CATsによる予測が毎日更新されているほか、8月2日(火)にも3つ公開されていました。(敬称略)

※ 特に断りがない限り、感染者数はいずれも7日平均なので、祝日などによるブレがなければ感染ピークの1日単位の最大値はその1.2倍くらいになることが多いです。


あとがき

BA.5の感染力、重症や死者数、ワクチンの追加接種などの考察は、7月6日版の記事に書いています。

ここに載せていないものも含む各種グラフは、毎日更新しています。