東京の感染者数を5週間ぶん予測した (8月18日版)
※ 8月25日版を公開しました knoa.hatenablog.com
前回の予測
前回、8月11日の5週予測のうち、1週目の週平均は予測24970人→現実26379人となりました。ただし、7月21日以降、千葉県のオンライン登録分が東京都に計上されていたことが8月16日に発覚しました。誤計上の人数も千葉県の言い分と東京都の言い分が食い違うほか、発覚後も、制度上の都合で東京都は千葉県分を含んだ感染者数を発表し続ける事態になっています。残念ながら、予測精度の確認もぐだぐだになってしまっていると言うほかありません。
予測日 | -7/04 | -7/11 | -7/18 | -7/25 | -8/01 | -8/08 | -8/15 |
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7/06 | 7000 | 18569 | 38890 | 66093 | 75440 | ||
7/13 | 15060 | 24500 | 34902 | 34228 | 26896 | ||
7/21 | 26693 | 31452 | 30849 | 18850 | |||
7/28 | 31458 | 28408 | 19137 | ||||
8/04 | 32808 | 23079 | |||||
8/11 | 24970 | ||||||
現実 | 3380 | 8054 | 16216 | 25927 | 32116 | 31151 | 26379 |
(スマホなど小さな画面でご覧の方は、隠れてしまった表の中身を左右にスライドさせることができます)
人流の影響を3週前から2週前へ修正する前の、7/06の予測とはズレが大きくなっています。7/21までは実質的に「千葉除外」の推移を予測していたと言えます。8/11までは千葉を含んだデータに基づいて、千葉を含まないはずの推移を予測していたことになります。また、8/04には繁華街人流の増加を受けて、8/11には帰省の大幅回復を受けて上方修正しています。
今回の予測
(注: 東京都の独特なデータ公開形式の都合で、週の区切りが火曜から翌週月曜までであることに注意してください。グラフ中の「-8/22」は「8/16(火)-8/22(月)」の7日間の週平均を指します)
今回の予測は、前回とほぼ同じです。千葉県のオンライン登録分については、これまでの予測もそれを含んだデータに基づいていたことになり、先述の通り、今後とも東京都の発表数には含まれ続けるとのことです。
BA.2.75 (ケンタウロス) と BA.4.6
引き続き、●BA.2.75の流行はインドのみに留まり続けています。いっぽう、●BA.4.6がイギリスとアメリカで5%に達するなど、各国で少しずつ「割合を」増やしていくことが予想されます。ただし、(一時的にお盆明けのリバウンドで増えている地域もありますが)日本も含めて多くの国で既にBA.5を減らしている環境になっていて、そのような環境下では、BA.5のほうがもっと減るので●BA.4.6の割合は増えるものの、●BA.4.6が実数で大きく増える(前週比が1.0を大きく超える)ことは考えにくいです。
東京都では●BA.2.75の検出ゼロの週が続いていて、当面、全体の感染者数に影響を与えるほど増加する心配はまったくありません。●BA.4.6は東京都ではなく日本全体のゲノム解析でしか統計がありませんが、全体のわずか0.1-0.2%となっていて、先述の通り、当面、比率は増えても実数で増えることは考えにくいです。
予測の条件など
前回と同様です。(詳細: 3週前の人流がデルタ株の増減と最も相関していたという解説)
- 変異株ごとの前週比
BA.2の前週比に対してBA.2.12.1は1.4倍、BA.5は2.25倍。現実には曲線になると思われるが、BA.2の前週比1.0倍付近では近似できるとみなしている。 - 2週前の人流
1週前×1 + 2週前×3 で、実質1.75週前の人流と前週比を対応させている。12日くらい前をピークにした正規分布のほうがより適切だと思われるが、労力の都合で人流データを週単位でしか取れていないので、苦肉の策。厚労省のアドバイザリーボードの資料または都のモニタリング会議の資料から、繁華街の滞留人口を人力で(!)読み取っている。 - 3週前の感染者数
3週前の感染者数によって、2週前の人流が変動するという仕組み。これのおかげで、観測された過去の人流だけでは2週先までが限界になる予測を、二段ばしごのようにさらに先まで伸ばすことができる。以前の予測では感染者数の「最大値が前週比に影響する」としていたが、「週合計が人流に影響する」ほうが現実に即していたので変更した。 - ワクチン接種
個人単位では (1-(経過週数/56週))1/4 の曲線で効果が減衰するものとする。都民全員がワクチンと自然免疫を同時に獲得した直後の集団免疫を仮に200%とし、減衰後の 1-(集団免疫/200%)2 だけ前週比が減るものとする。これはワクチンと自然免疫の重なりをひとまとめに扱うための便宜的な近似。また、仮に経過週数が同じなら、対デルタに比べて対オミクロンの効果は80%とする。これらは前週比に与える影響自体は大きいが、週単位で大きく変動するわけではないので、5週予測の精度というよりも、過去の感染の波との整合性に影響している。(大局的な齟齬がなければ、これらの計算式は週単位の予測にはあまり影響しない) - 感染による自然免疫
発表の4倍の感染者数を想定。効果はワクチンと同等とみなす。5週予測に与える影響もワクチンと同様。 - 入国者数(海外渡航歴のある感染者)
感染者の絶対数が少ない時期ほど、BA.2の前週比の割にBA.5の前週比が前述の倍率より高くなりやすいので、入国によるかさ増しを想定している。 - 祝日や連休など
祝日は休診の影響でいったん感染者数が減り、逆にその後は休診明けのリバウンドと行楽などによる感染増で感染者数が増えるものとする。月曜と金曜の違いや連休日数に応じて、3.5%から35%までの幅で決め打ちしているが、まだ改善の余地がある。
他の予測など
今週は、CATsによる予測が毎日更新されているほか、内閣府のAI・シミュレーションプロジェクトで8月16日(火)に2つ公開されていました。(敬称略)
今回から、各予測の履歴グラフを追加しました。縦軸の感染者数はそれぞれスケールが異なりますが、横軸と予測の色は比較しやすいように時期を揃えてあります。予測が多数ある場合は、楽観と悲観など、代表例のみ紹介しています。日付は原則として予測資料の公開日。より正確には各予測のリンク先を参照してください。
※ 特に断りがない限り、感染者数はいずれも7日平均なので、祝日などによるブレがなければ1日単位の最大値はその1.2-1.5倍くらいになることが多いです。
CATs / 三浦瑠麗
8/15(月) 8/16(火) 8/17(水) 8/18(木) 8/19(金) ※毎日更新されるが、同じURLで記事が上書きされてしまうので、可能な範囲で記録に残してリンクしている。参考: 当予測
あとがき
BA.5の感染力、重症や死者数、ワクチンの追加接種などの考察は、7月6日版の記事に書いています。
ここに載せていないものも含む各種グラフは、毎日更新しています。