東京の感染者数を5週間ぶん予測した (9月15日版)

※ 9月22日版を公開しました knoa.hatenablog.com


前回までの予測

前回、9月8日の5週予測のうち、1週目の週平均は予測9258人→現実9475人となりました。

予測日-8/01-8/08-8/15-8/22-8/29-9/05-9/12
7/066609375440
7/13349023422826896
7/21314523084918850 9508
7/2831458284081913710648 6641
8/04 328082307915521 8387 4481
8/11 249702288714588 8805 4350
8/18 2425515084 9934 5578
8/25 207251553810032
9/01 12024 7700
9/08 9258
現実 321163115126379247431880112286 9475

(スマホなど小さな画面でご覧の方は、隠れてしまった表の中身を左右にスライドさせることができます)

人流の影響を3週前から2週前へ修正する前の、7/06の予測とはズレが大きくなっています。

8/16に最初の誤計上が発覚しましたが、7/21までは実質的に「都のみ」の推移を予測していたと言えます。8/11までは誤計上されたデータに基づいて、それを知らずに予測していたことになります。7月分の誤計上の修正値は8月末に発表されましたが、8月分の修正値は9月末に発表されるものと思われます。

8/04には繁華街人流の増加を受けて、8/11には帰省の大幅回復を受けて上方修正しています。

8/25には感染による免疫の係数を「発表の4倍」から「発表の3.5倍」に修正しました。また、この日の翌日から誤計上が大きく解消されていきました。


今回の予測

(注: 東京都の独特なデータ公開形式の都合で、週の区切りが火曜から翌週月曜までであることに注意してください。グラフ中の「-9/19」は「9/13(火)-9/19(月)」の7日間の週平均を指します)

今回の予測は、曲線の形はだいたい同じですが、現実の減少の鈍化を受けて全体が底上げされました。いっぽう、繁華街の人流がいまのところ停滞気味であることを受けて、シルバーウィーク後のリバウンドはやや穏やかになっています。

もっとも、-9/26(月)までの週平均6135人という予測は、シルバーウィーク中の2日分の祝日による検査減少を含めての数字なので、実質的には大まかに「間もなく停滞期を迎える」という予測になっています。新たに強力な変異株が現れたわけではありませんが、少しずつの人流の回復を見込んでいるほか、後述する、少しだけ感染力が増した BF.5 などの影響もあると見ています。


新たな変異株など

前回に引き続き、脅威となるような変異株はありません。

しかし、東京に限ったデータが入手できないのがもどかしいところですが、日本全体のゲノム解析データとして BA.5 系統に属する BF.5 が割合を増やしつつあり、これが直近の鈍化の(ささやかな)一因である可能性もあります。


予測の条件など

8月25日版以降と同様です。(詳細: 3週前の人流がデルタ株の増減と最も相関していたという解説)

  • 変異株ごとの前週比
    BA.2の前週比に対してBA.2.12.1は1.4倍、BA.5は2.25倍。現実には曲線になると思われるが、BA.2の前週比1.0倍付近では近似できるとみなしている。
  • 2週前の人流
    1週前×1 + 2週前×3 で、実質1.75週前の人流と前週比を対応させている。12日くらい前をピークにした正規分布のほうがより適切だと思われるが、労力の都合で人流データを週単位でしか取れていないので、苦肉の策。厚労省のアドバイザリーボードの資料または都のモニタリング会議の資料から、繁華街の滞留人口を人力で(!)読み取っている。
  • 3週前の感染者数
    3週前の感染者数によって、2週前の人流が変動するという仕組み。これのおかげで、観測された過去の人流だけでは2週先までが限界になる予測を、二段ばしごのようにさらに先まで伸ばすことができる。以前の予測では感染者数の「最大値が前週比に影響する」としていたが、「週合計が人流に影響する」ほうが現実に即していたので変更した。
  • ワクチン接種
    個人単位では (1-(経過週数/56週))1/4 の曲線で効果が減衰するものとする。都民全員がワクチンと自然免疫を同時に獲得した直後の集団免疫を仮に200%とし、減衰後の 1-(集団免疫/200%)2 だけ前週比が減るものとする。これはワクチンと自然免疫の重なりをひとまとめに扱うための便宜的な近似。また、仮に経過週数が同じなら、対デルタに比べて対オミクロンの効果は80%とする。これらは前週比に与える影響自体は大きいが、週単位で大きく変動するわけではないので、5週予測の精度というよりも、過去の感染の波との整合性に影響している。(大局的な齟齬がなければ、これらの計算式は週単位の予測にはあまり影響しない)
  • 感染による免疫
    発表の3.5倍の感染者数を想定。効果はワクチンと同等とみなす。5週予測に与える影響もワクチンと同様。
  • 入国者数(海外渡航歴のある感染者)
    感染者の絶対数が少ない時期ほど、BA.2の前週比の割にBA.5の前週比が前述の倍率より高くなりやすいので、入国によるかさ増しを想定している。
  • 祝日や連休など
    祝日は休診の影響でいったん感染者数が減り、逆にその後は休診明けのリバウンドと行楽などによる感染増で感染者数が増えるものとする。月曜と金曜の違いや連休日数に応じて、3.5%から35%までの幅で決め打ちしているが、まだ改善の余地がある。


他の予測など

今週は、CATsによる予測が毎日更新されているほか、内閣府のAI・シミュレーションプロジェクトで9月13日(火)に2つ公開されていました。(敬称略)

縦軸の感染者数はそれぞれスケールが異なりますが、横軸と予測の色は比較しやすいように時期を揃えてあります。予測が多数ある場合は、楽観と悲観など、代表例のみ紹介しています。日付は原則として予測資料の公開日。より正確には各予測のリンク先を参照してください。

※ 特に断りがない限り、感染者数はいずれも7日平均なので、祝日などによるブレがなければ1日単位の最大値はその1.2-1.5倍くらいになることが多いです。

  • CATs / 三浦瑠麗
    9/12(月) 9/13(火) 9/14(水) 9/15(木) 9/16(金) ※毎日更新されるが、同じURLで記事が上書きされてしまうので、可能な範囲で記録に残してリンクしている。

  • 名古屋工業大学 平田晃正
    ※8/18版は「千葉県の感染者数の東京計上を補正」など。大阪・埼玉・新潟・高知の報道は反映されていないと思われる。公開日は8/18となっているが、実際の掲載日は8/22だった。

  • 筑波大学 倉橋節也

  • 東京大学 大澤幸生
    ※スケールの差が大きいので、グラフを2つに分けた。

  • 慶應義塾大学 栗原聡
    ※スケールの差が大きいので、グラフを2つに分けた。
    8/30に東京都ではなく全国の予測が公開されている。8/30時点の現実の7日平均17万8000人に対して、11月末まで13万人を超える高止まりという内容。(9/14時点で現実は8万9500人)
    9/13の予測は来年3月までの長期予測。ただし、オミクロン対応ワクチンの接種率の影響比較が主眼。

  • 創価大学 畝見達夫

  • 参考: 当予測

  • 参考: 東京大学 仲田泰祐
    ※「今後新規陽性者数がこうだったら」という仮定に基づいて、病床推移などを予測するのが主眼なので、感染者数の予測ではない。ただし、ピークの仮定が「1万人・2万人・3万人」や「第6波の2倍(3万6000人)」などと、結果的に現実(3万2000人)に近い数字が考察されている。


あとがき

BA.5の感染力、重症や死者数、ワクチンの追加接種などの考察は、7月6日版の記事に書いています。 knoa.hatenablog.com

8月下旬から大きく減った原因は、どうして、こんなに、減ってるの!? という記事で解説しています。 knoa.hatenablog.com

ここに載せていないものも含む各種グラフは、毎日更新しています。