東京の感染者数を5週間ぶん予測した (9月22日版)

※ 10月13日版を公開しました knoa.hatenablog.com


※ 9月29日追記: 本日、9月29日版を予定していましたが、人流データが更新されないので予測ができないかもしれません。検査報告体制の簡略化に伴って、もう更新されないのかもしれません。感染者数は目下のところかなり順調に減っていますが、これが2連続の台風による強制的な人流減少(まだ人流データが手に入らないので、どれだけ減少したのかはわかっていません)のおかげではないかとも感じています。そのあたりの考察記事を、予測の替わりに後日公開するかもしれません。


前回までの予測

前回、9月15日の5週予測のうち、1週目の週平均は予測7534人→現実8153人となりました。

予測日 -8/08-8/15-8/22-8/29-9/05-9/12-9/19
7/0675440
7/133422826896
7/213084918850 9508
7/28284081913710648 6641
8/04328082307915521 8387 4481
8/11 249702288714588 8805 4350
8/18 2425515084 9934 5578 3338
8/25 207251553810032 6956
9/01 12024 7700 5659
9/08 9258 6125
9/15 7534
現実 3115126379247431880112286 9475 8153

(スマホなど小さな画面でご覧の方は、隠れてしまった表の中身を左右にスライドさせることができます)

人流の影響を3週前から2週前へ修正する前の、7/06の予測とはズレが大きくなっています。

8/16に最初の誤計上が発覚しましたが、7/21までは実質的に「都のみ」の推移を予測していたと言えます。8/11までは誤計上されたデータに基づいて、それを知らずに予測していたことになります。7月分の誤計上の修正値は8月末に発表されましたが、8月分の修正値は9月末に発表されるものと思われます。

8/04には繁華街人流の増加を受けて、8/11には帰省の大幅回復を受けて上方修正しています。

8/25には感染による免疫の係数を「発表の4倍」から「発表の3.5倍」に修正しました。また、この日の翌日から誤計上が大きく解消されていきました。


今回の予測

(注: 東京都の独特なデータ公開形式の都合で、週の区切りが火曜から翌週月曜までであることに注意してください。グラフ中の「-9/26」は「9/20(火)-9/26(月)」の7日間の週平均を指します)

東京は3連休が「2回とも」台風の影響を受ける見込みで、予測の上では連休による感染増加効果をゼロへ修正しました。(あいにく、本日時点では1つ目の台風が接近する前、9/17までの人流データしか公開されておらず、影響の程度は読めません)

5週先の予測はやや増加傾向になっていますが、将来の台風はもちろん、現時点ではワクチンがオミクロン対応に切り替わる効果も、(接種率の変化が予測できないこともあって)考慮していません。


新たな変異株など

引き続き、東京でも日本全体でも、BA.2.75 や BA.4.6 の検出は少ないままです。

いっぽう、東京に限定したデータはないものの日本全体のゲノム解析データでは BA.5 系統に属する BF.5 が割合を増やしつつあります。最新の-9/11までの週は誤差が大きいので必ずしも下記グラフの通り実数で増加しているとは限りませんが、少なくとも他の BA.5 系統に比べて減らしにくいことは間違いないと言えます。


予測の条件など

8月25日版以降と同様です。(詳細: 3週前の人流がデルタ株の増減と最も相関していたという解説)

  • 変異株ごとの前週比
    BA.2の前週比に対してBA.2.12.1は1.4倍、BA.5は2.25倍。現実には曲線になると思われるが、BA.2の前週比1.0倍付近では近似できるとみなしている。
  • 2週前の人流
    1週前×1 + 2週前×3 で、実質1.75週前の人流と前週比を対応させている。12日くらい前をピークにした正規分布のほうがより適切だと思われるが、労力の都合で人流データを週単位でしか取れていないので、苦肉の策。厚労省のアドバイザリーボードの資料または都のモニタリング会議の資料から、繁華街の滞留人口を人力で(!)読み取っている。
  • 3週前の感染者数
    3週前の感染者数によって、2週前の人流が変動するという仕組み。これのおかげで、観測された過去の人流だけでは2週先までが限界になる予測を、二段ばしごのようにさらに先まで伸ばすことができる。以前の予測では感染者数の「最大値が前週比に影響する」としていたが、「週合計が人流に影響する」ほうが現実に即していたので変更した。
  • ワクチン接種
    個人単位では (1-(経過週数/56週))1/4 の曲線で効果が減衰するものとする。都民全員がワクチンと自然免疫を同時に獲得した直後の集団免疫を仮に200%とし、減衰後の 1-(集団免疫/200%)2 だけ前週比が減るものとする。これはワクチンと自然免疫の重なりをひとまとめに扱うための便宜的な近似。また、仮に経過週数が同じなら、対デルタに比べて対オミクロンの効果は80%とする。これらは前週比に与える影響自体は大きいが、週単位で大きく変動するわけではないので、5週予測の精度というよりも、過去の感染の波との整合性に影響している。(大局的な齟齬がなければ、これらの計算式は週単位の予測にはあまり影響しない)
  • 感染による免疫
    発表の3.5倍の感染者数を想定。効果はワクチンと同等とみなす。5週予測に与える影響もワクチンと同様。
  • 入国者数(海外渡航歴のある感染者)
    感染者の絶対数が少ない時期ほど、BA.2の前週比の割にBA.5の前週比が前述の倍率より高くなりやすいので、入国によるかさ増しを想定している。
  • 祝日や連休など
    祝日は休診の影響でいったん感染者数が減り、逆にその後は休診明けのリバウンドと行楽などによる感染増で感染者数が増えるものとする。月曜と金曜の違いや連休日数に応じて、3.5%から35%までの幅で決め打ちしているが、まだ改善の余地がある。


他の予測など

今週でCATsによる予測が終了しました。内閣府のAI・シミュレーションプロジェクトの更新もありませんでした。(敬称略)

縦軸の感染者数はそれぞれスケールが異なりますが、横軸と予測の色は比較しやすいように時期を揃えてあります。予測が多数ある場合は、楽観と悲観など、代表例のみ紹介しています。日付は原則として予測資料の公開日。より正確には各予測のリンク先を参照してください。

※ 特に断りがない限り、感染者数はいずれも7日平均なので、祝日などによるブレがなければ1日単位の最大値はその1.2-1.5倍くらいになることが多いです。

  • CATs / 三浦瑠麗
    9/20(火) 9/21(水) ※9/21に第7波の総括をしている。ピークについて 予測開始初日(7/20) :35,000人 と書かれているが、予測が公開されたのは7/25の5万4000人が最初なので、善意に解釈して「公開はせずに内々で予測していた数字」なのかもしれない。しかし、ピークが上振れした理由として他府県の誤計上を挙げている点は、7/25時点の発表7日平均2万2377人に対して他府県を除いても693人減の2万1684人でしかなく、いくら将来の感染者数に「てこの原理」が働くにしても、それだけで5万4000人という上振れを説明するのは無理があるのではないかと思う。また、第8波へのあるべき対応 として「初動の1週間で検知、続く2週間でピーク日とピークアウトの高さを予測」と述べている割には、CATsが初動を検知した日:6/23(6/28に判定) にもかかわらず世間に対する予測公開が7/25になってしまったのは、第8波に向けての反省という意味なのだろうか。しかし他の予測に比べれば精度が高いほうだと思うし、次の波を検知した時にはまた予測を公開してほしい。

  • 名古屋工業大学 平田晃正
    ※8/18版は「千葉県の感染者数の東京計上を補正」など。大阪・埼玉・新潟・高知の報道は反映されていないと思われる。公開日は8/18となっているが、実際の掲載日は8/22だった。

  • 筑波大学 倉橋節也

  • 東京大学 大澤幸生
    ※スケールの差が大きいので、グラフを2つに分けた。

  • 慶應義塾大学 栗原聡
    ※スケールの差が大きいので、グラフを2つに分けた。
    8/30に東京都ではなく全国の予測が公開されている。8/30時点の現実の7日平均17万8000人に対して、11月末まで13万人を超える高止まりという内容。(→現実は9/21時点で6万2000人)
    9/13の予測は来年3月までの長期予測。ただし、オミクロン対応ワクチンの接種率の影響比較が主眼。

  • 創価大学 畝見達夫

  • 参考: 当予測

  • 参考: 東京大学 仲田泰祐
    ※「今後新規陽性者数がこうだったら」という仮定に基づいて、病床推移などを予測するのが主眼なので、感染者数の予測ではない。ただし、ピークの仮定が「1万人・2万人・3万人」や「第6波の2倍(3万6000人)」などと、結果的に現実(3万2000人)に近い数字が考察されている。


あとがき

BA.5の感染力、重症や死者数、ワクチンの追加接種などの考察は、7月6日版の記事に書いています。 knoa.hatenablog.com

8月下旬から大きく減った原因は、どうして、こんなに、減ってるの!? という記事で解説しています。 knoa.hatenablog.com

ここに載せていないものも含む各種グラフは、毎日更新しています。