東京の感染者数を5週間ぶん予測する替わりに、台風の影響について考察した (10月13日版)

※ 11月17日 記事を書きました。 knoa.hatenablog.com

※ 11月5日追記: 本来ならとっくに予測記事を書いてるところなんだけど、都のゲノム解析と変異株PCR検査体制の問題で、まともな予測精度にならない、というような記事をのんびり書くかも(または、書かないかも)。本日時点でまだ人流増の影響も新しい変異株の影響もMAXになっていないので、急増はまだ続くはずです。

※ 10月21日追記: 昨日、更新を予定していましたが、お休みします。海外の変異株が気になっていますが、引き続き、日本国内での強力な変異株の増加はないようです。いまのところ「急増も急減も予兆はない」と言えます。そして、それは「データとして今、日本国内に予兆がないだけで、来週には一変してしまうという可能性もある」ということでもあります。毎週水曜公開の国内変異株データで予兆を捉えることができるので、急変があればまた記事を書くつもりです。


(見出し太字赤字だけに目をすべらせても、だいたいわかるように書きました。ちょっと多めですが。)


9月22日版を最後に更新をお休みしていましたが、予測の再開ではなく、いったん台風の考察を挟みます。

お休みは、更新を予定していた9月29日(木)に人流データが入手できなかったことがきっかけでしたが、データ公開の日程がずれたのはその週だけだったようで、今後は木曜までに入手できそうです。それでも、2連続の台風、シルバーウィーク、全数把握の簡略化と、3つの不安定要素が重なり予測が難しくなってしまったため、予測をお休みしています。

前回までの予測

最近の予測の一覧:
7/06 | 7/13 | 7/21 | 7/28
8/04 | 8/11 | 8/18 | 8/25
9/01 | 9/08 | 9/15 | 9/22

前回9/22の予測では、台風による影響を「連休による感染増加効果をゼロ」(=本来増えるはずだったぶんが増えなくなる)とみなしていましたが、まったく甘すぎる見積もりでした。むしろ短期間だけ緊急事態宣言が発令されたかのような、強い減少圧力を与えたと見ています。

台風は9/17からの3連休と9/23からの3連休の二度にわたってタイミング悪く(?)それぞれ接近し、実際の被害こそ想定を下回ったと言えるものの、当予測の根幹でもある「2週前の人流」が感染に影響するという原則に基づいて、おおむね2週にわたって感染者数を大きく減らしました

(より詳しくは、当予測では、現実と照らし合わせた結果、12日くらい前をピークにした正規分布のような影響があると仮定している)


台風の影響について

今回の2つの台風について、現時点での考察を書いておきます。(いちおうそれぞれ反例や矛盾がないかは確認しましたが、そのようなデータがあればご指摘を歓迎します)

  • 前提として、本来連休はその後の感染者数を一時的に増やす圧力になる。(が、コロナ以後、シルバーウィークは三年連続で大なり小なり台風の接近があった)
  • 今回の2つの台風は、特に1つ目の14号について、過去最強とも言われて強く警戒されていた。
  • 台風接近が平日ではなく連休と重なったことで行動自粛による効果がより高まった一方、連休そのものによる影響との切り分けが難しい。
  • 9/26からの全数把握の簡略化(全数自体は報告されるものの、濃厚接触や連絡先などの把握が簡略化される)とも時期が重なったため、やはり影響の切り分けが難しい。
  • 既に感染していた人が、台風接近時に外出が困難で検査受診ができないことによる一時的な遅延や、そのまま症状が治まることによる見かけ上の減少もある。
  • 通常の悪天候の日とは違って、「台風は事前に進路や接近日が予想されているために、当日の実際の降水量や風速にかかわらず、人々がそもそも予定を入れないとか、中止したり延期したりする」という影響が大きい。
  • オミクロンの世代時間(感染してから次の人に感染させるまでの時間)が約2日と短いからこそ、台風による強い行動自粛が、短期間でも高い効果を発揮した。
  • 人流とのデータ上の関係は、「本来、連休中は都心の人流が減る(他県へ出かける)はずなのに、減らなかった」という形で現れるので、公開されている都心の人流データと統計的に関係させるのは難しい。


台風以外の変動要因は?

先週は7日平均の前週比が60%にまで落ち込んでいたのに、今週いきなり100%以上をうかがう勢いで増えているわけですが、この変動をすべて台風だけのせいにしてもよいのでしょうか?

  • スポーツの日の3連休のしわ寄せでは?
    いいえ。しわ寄せは確かにありますが、過去の月曜祝日の連休と比較しても、通常のしわ寄せよりはるかに大きな感染者数が出ています。
  • 全国旅行支援のための(ワクチンの替わりの)検査需要が増えているのでは?
    いいえ。検査需要は確かにその分だけ増えていると思いますが、陽性率を押し下げるほどの規模ではなさそうです。
  • 季節的なものでは?
    いいえ。季節要因は常にありえますが、先週と今週で急激な変動を生み出せるものがあったとすれば、それはむしろ台風のことでしょう。影響が2週遅れる仕組みは、3週前の人流がデルタ株の増減と最も相関していたという解説をご確認のうえ、デルタに比べてオミクロンは世代時間が短いことを考慮してください。
  • 新たな変異株が増えているのでは?
    いいえ。後述しますが、少なくとも10/02(日)までの国内データでそのような兆候は見られません。BF.5の感染力も「やや強い」程度です。ごく短期間で急激に増える未知の変異株が発生している可能性は、ゼロではないですが、低いと思われます。
  • じゃあ、すべて台風のせい?
    いいえ。台風が最大要因ですが、ここに挙げた各項目も、(全項目に「いいえ」と答えたものの、)それぞれ少しずつ寄与していると思います。

なお、台風接近の直前まで、東京都の7日平均の前週比は、9月1日の65%から18日の86%へと少しずつ上昇していた途上だったことにも留意が必要です。これは、仮に連休も台風もなく同じ傾向があと2週間続いたとすれば、9月中に100%に近づくほどのペースでした。


今回の予測 (今回は予測なし)

具体的な予測はまだできませんが、今週から少しずつ増えると見ています。その点では下記の前回9/22の予測と同じですが、土台となる出発点は台風のおかげで低くなっています。


新たな変異株など

引き続き、日本全体のゲノム解析データでは BA.5 系統に属する BF.5 が割合を増やしています。他の BA.5 系統に比べて減らしにくく、増えやすいということです。

欧米ではBF.5以外のいくつかの変異株系統が実数でも少しずつ増えていて、感染者数全体としても増加に転じているところもありますが、BA.5の時のように圧倒的に強い変異株が登場しているわけではなさそうです。

欧米のBF.5と日本のBF.5は分類上はいまのところ同じですが、欧米のBF.5は日本のような感染力の強さを示していません。これはおそらく、日本の系統特有の変異箇所の影響ではないかと考えています。


他の予測など

今週ではなく先週ですが、内閣府のAI・シミュレーションプロジェクトで10月4日(火)に3つ公開されていました。(敬称略)

第7波の総括は9/22の記事を参照してください。

縦軸の感染者数はそれぞれスケールが異なりますが、横軸と予測の色は比較しやすいように時期を揃えてあります。予測が多数ある場合は、楽観と悲観など、代表例のみ紹介しています。日付は原則として予測資料の公開日。より正確には各予測のリンク先を参照してください。

※ 特に断りがない限り、感染者数はいずれも7日平均なので、祝日などによるブレがなければ1日単位の最大値はその1.2-1.5倍くらいになることが多いです。


あとがき

8月下旬から大きく減った原因は、どうして、こんなに、減ってるの!? という記事で解説しています。 knoa.hatenablog.com

ここに載せていないものも含む各種グラフは、毎日更新しています。