ゲノム解析について東京都健康安全研究センターに要望してみた
11月5日に「都のゲノム解析と変異株PCR検査体制の問題で、まともな予測精度にならない、というような記事をのんびり書くかも(または、書かないかも)」と追記したあと、なかなか筆が進まないまま日が経ってしまいましたが、本日の東京都のモニタリング会議で、ゲノム解析についてうれしい改善がありました。
それをきっかけに、さらなる改善の要望を東京都健康安全研究センターに送ってみようという気になり、メールを書きました。
本来であれば、このブログの読者向けにわかりやすい形で記事を書きたかったのですが、丁寧に書こうとすると大変な長文になってしまうので、労力を端折って、東京都健康安全研究センター宛に書いたメールを紹介することで、お茶を濁すことにします。(いきなりメールを紹介されてもピンと来ないとは思うのですが、労力を端折りました。すみません)
以下のメールは、一部、ブログ向けに装飾しています。
件名: 週単位のゲノム解析結果に BF.5 を追加してほしい こんにちは。 本日の第107回東京都新型コロナウイルス感染症モニタリング会議にて、 変異株のゲノム解析結果についても「週単位」のデータを公開していただき、 (以前、お問い合わせフォームから当該要望を送った者です) ありがとうございました。 変異株PCR検査に比べて1週ほど遅いとは言え、 モニタリング会議で賀来所長が言及されたように(動画の38:26)、 精度の高さは段違いで、大変役に立ちます。 欲を言えば、感染研の 新型コロナウイルス ゲノムサーベイランスによる国内の系統別検出状況 (.csv) https://www.niid.go.jp/niid/ja/2019-ncov/2551-cepr/10745-cepr-topics.html と同様の、全変異株系統について細かく CSVなどの形で公開していただきたいですが、 それが難しくてもせめて、BF.5 については、 その他の BA.5 系統に比べて明らかに優位性があるため、 個別に項目を分けていただきたいと思っています。 またそもそも、 上記の感染研のゲノム解析データには、 都が公開しているゲノム解析データが含まれていないように思います。 (たとえば BQ.1.1 だと、都だけで累計255件なのに、感染研は66件) 東京都の変異株の状況を分析しようとしても、 あらゆるデータが「一長一短」の状態で、歯がゆく感じています。 都のゲノム解析は、GISAIDや感染研に共有されないのでしょうか? 1. covSPECTRUM おそらく検疫データが含まれているせいで、国内状況とズレがある。 東京都など、地域によってはデータが(大部分)含まれていない(?)。 2. 感染研の「新型コロナウイルス~系統別検出状況 (.pdf)」 貴重な都道府県別データだが、グラフを「目」で読むしかない。 東京都に限ると、後述の5.に比べてもデータが少ない上に遅い。 3. 感染研の「新型コロナウイルス~国内の系統別検出状況 (.csv)」 東京都など、地域によってはデータが(大部分)含まれていない。 最新の Pango Lineages への追随がやや遅い(?)。 4. 感染研の「民間検査機関の~検出状況(.pdf)」 3.に比べると1-2週遅い。 目標が全国で週800件でしかなく(下記74ページ参照)、精度が悪い。 https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/001010889.pdf#page=74 5. 都のモニタリング会議資料(ゲノム解析) 月単位から週単位になったことは、大変すばらしい改善。 できればパーセンテージだけでなく、実数も併記を。 BF.5 が BA.5 に含まれているなど、分類がゆるい。 最新の Pango Lineages への追随がやや遅い(?)。 6. 都のモニタリング会議資料(変異株PCR検査) 可能ならもっと検査数を増やしてほしい。 後述の7.のL452R検査ばかりやってる場合ではないはず。 新興株が乱立する状況下では、今後の迅速な対応が難しいのでは? (結局は、イギリス並の迅速なゲノム解析こそ目指すべきなのでは?) 7. 都のモニタリング会議資料(L452R PCR検査) BA.5の拡大時には幸運にも(!)大変役に立ったが、 (しかし私 https://knoa.hatenablog.com/archive 以外には、 6.以上の高い精度を求めて7.を活用していた事例がなく、もったいなかった) いまや残念ながら意義が薄い。他へ労力を振り向け直してはどうか。 (同じことは BA.2 拡大時にも、6.へ振り向けてほしいと感じていた) (実際にモニタリング会議での賀来所長の扱いも毎回ぞんざいである) (L452Rの試薬ばかり大量に余って困っているのかと邪推してしまう)
大まかに言って、「BF.5 を追加してほしい」という要望を足がかりに、日本と東京の歯がゆい状況を書いているのですが、他国は他国で問題点を抱えているし、東京におけるL452Rの変異株PCR検査は、偶然とは言え BA.5 の拡大時にとても有用だったので、いまの歯がゆい状況も、裏を返せば「運が悪かった」部分も大きいと感じています。(東京都は、新しい変異株が次々に乱立する状況には対応しにくい体制になっている)
※11月24日に、下記のメールを追加で送信しました。
こんにちは。 本日の変異株資料で、BN.1が追加されたことは心強く思います。 しかし、BF.5のゲノム解析はBA.5から分離されていませんでしたね。 楽観的に「要望してから時間が足りなかっただけ」だと思いたいですが、 「BF.5が、他を抑えて将来の支配的な変異株になることは考えにくい」 という理由でBF.5を軽視しているのではないかと危惧しましたので、 念のため、BF.5を分離する意義について付け加えておきたいと思います。 重要なのは、BA.5とBF.5や、BF.5とBQ.1.1、BF.5とBN.1などの、 相対的な感染力の差(前週比の差など)です。 それを元に、将来的なBQ.1.1などの増え方を予測することができます。 BQ.1.1の感染力を測るための物差しが、「BA.5とBF.5のミックス」じゃ 困るわけです。 かかる労力が分からないので気軽に要望しますが、 欲を言えば、「BA.5とBF.5の増え方の違い」について、 BF.5が増え始めた6-7月あたりまでさかのぼって、 ずっと追うことができれば助かります。 どうかご検討のほど、よろしくお願いいたします。
※11月30日に、お返事をいただきました。
ご指摘いただきありがとうございます。 都のゲノム解析データは、 GISAIDや国立感染症研究所のデータベースに共有しておりますが、 公開までにタイムラグが生じてしまいます。 また、ゲノム配列のクオリティによって、 登録できない場合があることも、どうぞご了承ください。 東京都のモニタリング会議資料や 国立感染症研究所で公開されている内容については、 恐れ入りますが、それぞれにお問い合わせください。
データベースの共有はしているけど、公開までタイムラグが大きくて(東京での資料公開から数週間?)、まるで共有していないかのように見えてしまっているのですね…。(そしてBF.5についてはゼロ回答…!健康安全研究センターじゃなくて東京都そのものに問い合わせろってこと?善意に解釈するなら、健康安全研究センターは都にデータを提供しているので、BF.5が含まれていないのは都の資料作成担当者だという意味かな?)