ワクチン、人流、変異株。

(6月23日: 各グラフを新しいものに差し替えました)

ワクチンは、ちゃんと効く。

都民のワクチン3回接種率はおよそ6割。2回接種で96%も効果があった対デルタには劣りますが、それでも対オミクロン感染に84%の効果があります。

入院においては効果がさらに顕著で、全員ワクチン未接種なら2000人に対して100人が入院するような状況を、全員3回接種済みなら、なんと3人にまで抑えてくれます。

東京での今年3月の実測で感染に対して84%の効果。また、2回接種後に減衰した効果も平均して37%残っている。

また、カタールの報告では自然免疫もワクチンと同等の効果を示しています。高齢者から接種しているワクチンとは逆に、若い世代ほど自然免疫を広く獲得していると言えます。

実際には、ワクチンの効果は接種後に減衰していきます。ただし入院、重症、死亡など重いものに対してほど効果は持続しやすいので、社会全体としての医療への負荷はやわらげられます。


人流が関係ない、わけがない。

感染者のあなたが誰かと会食して、相手を感染させてしまったとしましょう。もしその場にあと2人いたとしたら、その2人は感染を免れたでしょうか?

平均して1000人が900人に感染させていた環境を、1000人が1100人に感染させる環境へ変えるのは、とても簡単なことです。人々の接触機会を少し増やすだけでいい。その逆もまたしかりです。

にもかかわらず、人流を少しずつ増やしながらも感染者を大きく減らすことができていたのは、やはりワクチンのおかげです。なにしろ、あれから6割もの都民が3回目のワクチンを接種したんですよ?

モニタリング項目の分析(令和4年6月16日公表)|東京都防災ホームページ

※ 人流と感染の関係については、都医学研の報告当増田出張所の記事がある。

※ 連休などによる人流増加と休診明けの反動は、あくまで一時的な増加圧力に過ぎず、継続するわけではない。

※ もちろん人流は指標のひとつに過ぎず、マスク着用や換気などの感染対策、人々の行動が広く影響する。


新しい変異株は、増えやすい。

古い変異株が増えていようと減っていようと、新しい変異株はかまわず増え続けることができます。実際、東京での4月の一時的なリバウンドは、BA.1 が一貫して減少していたにもかかわらず、BA.2 の増加によってもたらされています。

BA.2 と BA.1.1 (日本で主流だった BA.1 の系統) の関係は、だいたい「BA.1.1 が前週比1.0倍なら、BA.2 は1.8倍」くらいの関係でした。

そんな強力な BA.2 さえもその後に減らすことができたのは、ワクチン接種が強力に進められてきたおかげだと言えます。特に、人数的に感染の主力となっている若い世代は、3月から4月にかけて接種が進みました。

今後はオミクロンチルドレンの中で最も感染力が高い BA.5 が増えていくと思われますが、1月に比べれば都民の集団免疫力もずっと増していることから、感染規模も医療負荷も、過去を上回ることはないでしょう。

※ BA.2.12.1 も BA.4 も BA.5 も、重症化率やそれに対するワクチンの効果などは、これまでのオミクロンと変わらないと考えられている。

オミクロンチルドレンが大きく増えた先行事例は BA.2.12.1 がアメリカ、BA.4 が南アフリカ、BA.5 がポルトガルくらいしかないのですが、いずれも相対的には感染爆発というレベルには至っていないのが安心材料です。ただし、日本も含めてこれまで BA.2 を減らし続けていた国々で、感染者数が増加に転じる要因とはなっています。


確かに、感染者数の増減は、「ワクチン・人流・変異株」という三大要素を同時に考慮しないといけないことが、話をややこしくしています。しかし、ややこしいという前提さえ知っていれば、不思議もいくらか軽減されるのではないでしょうか。

そしてくれぐれも、三大要素が影響を与えるのは感染者の絶対数じゃなくて、増減比です。感染者が1000人か1万人かではなく、前週比が0.8倍か1.5倍か、ということです。誤解されませんように。