東京の感染者数を5週間ぶん予測した (8月18日版)

前回の予測

前回、8月11日の5週予測のうち、1週目の週平均は予測24970人→現実26379人となりました。ただし、7月21日以降、千葉県のオンライン登録分が東京都に計上されていたことが8月16日に発覚しました。誤計上の人数も千葉県の言い分と東京都の言い分が食い違うほか、発覚後も、制度上の都合で東京都は千葉県分を含んだ感染者数を発表し続ける事態になっています。残念ながら、予測精度の確認もぐだぐだになってしまっていると言うほかありません。

予測日-7/04-7/11-7/18-7/25-8/01-8/08-8/15
7/06 700018569388906609375440
7/13 1506024500349023422826896
7/21 26693314523084918850
7/28 314582840819137
8/04 3280823079
8/11 24970
現実 338080541621625927321163115126379

(スマホなど小さな画面でご覧の方は、隠れてしまった表の中身を左右にスライドさせることができます)

人流の影響を3週前から2週前へ修正する前の、7/06の予測とはズレが大きくなっています。7/21までは実質的に「千葉除外」の推移を予測していたと言えます。8/11までは千葉を含んだデータに基づいて、千葉を含まないはずの推移を予測していたことになります。


今回の予測

(注: 東京都の独特なデータ公開形式の都合で、週の区切りが火曜から翌週月曜までであることに注意してください。グラフ中の「-8/22」は「8/16(火)-8/22(月)」の7日間の週平均を指します)

今回の予測は、前回とほぼ同じです。千葉県のオンライン登録分については、これまでの予測もそれを含んだデータに基づいていたことになり、先述の通り、今後とも東京都の発表数には含まれ続けるとのことです。


BA.2.75 (ケンタウロス) と BA.4.6

引き続き、BA.2.75の流行はインドのみに留まり続けています。いっぽう、BA.4.6がイギリスとアメリカで5%に達するなど、各国で少しずつ「割合を」増やしていくことが予想されます。ただし、(一時的にお盆明けのリバウンドで増えている地域もありますが)日本も含めて多くの国で既にBA.5を減らしている環境になっていて、そのような環境下では、BA.5のほうがもっと減るのでBA.4.6の割合は増えるものの、BA.4.6が実数で大きく増える(前週比が1.0を大きく超える)ことは考えにくいです。

東京都ではBA.2.75の検出ゼロの週が続いていて、当面、全体の感染者数に影響を与えるほど増加する心配はまったくありません。BA.4.6は東京都ではなく日本全体のゲノム解析でしか統計がありませんが、全体のわずか0.1-0.2%となっていて、先述の通り、当面、比率は増えても実数で増えることは考えにくいです。


予測の条件など

前回と同様です。(詳細: 3週前の人流がデルタ株の増減と最も相関していたという解説)

  • 変異株ごとの前週比
    BA.2の前週比に対してBA.2.12.1は1.4倍、BA.5は2.25倍。現実には曲線になると思われるが、BA.2の前週比1.0倍付近では近似できるとみなしている。
  • 2週前の人流
    1週前×1 + 2週前×3 で、実質1.75週前の人流と前週比を対応させている。12日くらい前をピークにした正規分布のほうがより適切だと思われるが、労力の都合で人流データを週単位でしか取れていないので、苦肉の策。厚労省のアドバイザリーボードの資料または都のモニタリング会議の資料から、繁華街の滞留人口を人力で(!)読み取っている。
  • 3週前の感染者数
    3週前の感染者数によって、2週前の人流が変動するという仕組み。以前の予測では感染者数の「最大値が前週比に影響する」としていたが、「週合計が人流に影響する」ほうが現実に即していたので変更した。
  • ワクチン接種
    個人単位では (1-(経過週数/56週))1/4 の曲線で効果が減衰するものとする。都民全員がワクチンと自然免疫を同時に獲得した直後の集団免疫を仮に200%とし、減衰後の 1-(集団免疫/200%)2 だけ前週比が減るものとする。これはワクチンと自然免疫の重なりをひとまとめに扱うための便宜的な近似。また、仮に経過週数が同じなら、対デルタに比べて対オミクロンの効果は80%とする。これらは前週比に与える影響自体は大きいが、週単位で大きく変動するわけではないので、5週予測の精度というよりも、過去の感染の波との整合性に影響している。(大局的な齟齬がなければ、これらの計算式は週単位の予測にはあまり影響しない)
  • 感染による自然免疫
    発表の4倍の感染者数を想定。効果はワクチンと同等とみなす。5週予測に与える影響もワクチンと同様。
  • 入国者数(海外渡航歴のある感染者)
    感染者の絶対数が少ない時期ほど、BA.2の前週比の割にBA.5の前週比が前述の倍率より高くなりやすいので、入国によるかさ増しを想定している。
  • 祝日や連休など
    祝日は休診の影響でいったん感染者数が減り、逆にその後は休診明けのリバウンドと行楽などによる感染増で感染者数が増えるものとする。月曜と金曜の違いや連休日数に応じて、3.5%から35%までの幅で決め打ちしているが、まだ改善の余地がある。


他の予測など

今週は、CATsによる予測が毎日更新されているほか、内閣府のAI・シミュレーションプロジェクトで8月16日(火)に2つ公開されていました。(敬称略)

今回から、各予測の履歴グラフを追加しました。縦軸の感染者数はそれぞれスケールが異なりますが、横軸と予測の色は比較しやすいように時期を揃えてあります。予測が多数ある場合は、楽観と悲観など、代表例のみ紹介しています。より正確には各予測のリンク先を参照してください。

※ 特に断りがない限り、感染者数はいずれも7日平均なので、祝日などによるブレがなければ1日単位の最大値はその1.2-1.5倍くらいになることが多いです。


あとがき

BA.5の感染力、重症や死者数、ワクチンの追加接種などの考察は、7月6日版の記事に書いています。

ここに載せていないものも含む各種グラフは、毎日更新しています。

東京の感染者数を5週間ぶん予測した (8月11日版)

※ 8月18日版を公開しました knoa.hatenablog.com


前回の予測

前回、8月4日の5週予測のうち、1週目の週平均は予測32808人→現実31151人となりました。

予測日-7/04-7/11-7/18-7/25-8/01-8/08
7/06 700018569388906609375440
7/13 15060245003490234228
7/21 266933145230849
7/28 3145828408
8/04 32808
現実 3380805416216259273211631151

(スマホなど小さな画面でご覧の方は、隠れてしまった表の中身を左右にスライドさせることができます)

人流の影響を3週前から2週前へ修正する前の、7月6日の予測とはズレが大きくなっています。


今回の予測

(注: 東京都の独特なデータ公開形式の都合で、週の区切りが火曜から翌週月曜までであることに注意してください。グラフ中の「-8/15」は「8/09(火)-8/15(月)」の7日間の週平均を指します)

前回と同様に、8月上旬のピークを越えて、大きく減っていくという予測です。ただし、お盆の影響をより悲観的に見直したことで、下り坂の形が大きく膨らんでいます。これは感染状況や医療の逼迫が伝えられる中でも、なお帰省が昨年に比べて大きく回復しているとの報道によります。

本日の山の日も含めたお盆の影響は、明日以降の減少と、その後の一時的な増加という形で現れるはずですが、正月やゴールデンウィークなどと共に、予測の難しい時期となっています。(帰省の人流が交通機関の予約状況などからデータ化できれば助けになるとは思いますが、本予測では都心の繁華街しかデータ化できていません)


BA.2.75 (ケンタウロス)

引き続き、データが不足して予測に組み込める状況ではありません。が、少なくとも東京においては、BA.5の増加の割に、BA.2.75の検出数は相対的に極めて少なくなっています。インドではBA.5に対する優位が現れてきましたが、世界的に見ると、流行していると言えるのは依然としてインドだけとなっています。


予測の条件など

「祝日や連休など」のパーセンテージを除けば、前回と同様です。(詳細: 3週前の人流がデルタ株の増減と最も相関していたという解説)

  • 変異株ごとの前週比
    BA.2の前週比に対してBA.2.12.1は1.4倍、BA.5は2.25倍。現実には曲線になると思われるが、BA.2の前週比1.0倍付近では近似できるとみなしている。
  • 2週前の人流
    1週前×1 + 2週前×3 で、実質1.75週前の人流と前週比を対応させている。12日くらい前をピークにした正規分布のほうがより適切だと思われるが、労力の都合で人流データを週単位でしか取れていないので、苦肉の策。厚労省のアドバイザリーボードの資料または都のモニタリング会議の資料から、繁華街の滞留人口を人力で(!)読み取っている。
  • 3週前の感染者数
    3週前の感染者数によって、2週前の人流が変動するという仕組み。以前の予測では感染者数の「最大値が前週比に影響する」としていたが、「週合計が人流に影響する」ほうが現実に即していたので変更した。
  • ワクチン接種
    個人単位では (1-(経過週数/56週))1/4 の曲線で効果が減衰するものとする。都民全員がワクチンと自然免疫を同時に獲得した直後の集団免疫を仮に200%とし、減衰後の 1-(集団免疫/200%)2 だけ前週比が減るものとする。これはワクチンと自然免疫の重なりをひとまとめに扱うための便宜的な近似。また、仮に経過週数が同じなら、対デルタに比べて対オミクロンの効果は80%とする。これらは前週比に与える影響自体は大きいが、週単位で大きく変動するわけではないので、5週予測の精度というよりも、過去の感染の波との整合性に影響している。(大局的な齟齬がなければ、これらの計算式は週単位の予測にはあまり影響しない)
  • 感染による自然免疫
    発表の4倍の感染者数を想定。効果はワクチンと同等とみなす。5週予測に与える影響もワクチンと同様。
  • 入国者数(海外渡航歴のある感染者)
    感染者の絶対数が少ない時期ほど、BA.2の前週比の割にBA.5の前週比が前述の倍率より高くなりやすいので、入国によるかさ増しを想定している。
  • 祝日や連休など
    祝日は休診の影響でいったん感染者数が減り、逆にその後は休診明けのリバウンドと行楽などによる感染増で感染者数が増えるものとする。月曜と金曜の違いや連休日数に応じて、3.5%から35%までの幅で決め打ちしているが、まだ改善の余地がある。


他の予測など

今週は、CATsによる予測が毎日更新されているのみで、いまのところ内閣府のAI・シミュレーションプロジェクトの更新はありませんでした。(敬称略)

※ 特に断りがない限り、感染者数はいずれも7日平均なので、祝日などによるブレがなければ1日単位の最大値はその1.2-1.5倍くらいになることが多いです。

※ 感染者数のピークを過ぎたので、各予測の内容は、ピークの代わりに適宜指標を決めて紹介していきます。

  • 東京都のコロナ新規感染者数(第7波)は「減少加速」 (CATs)
    8月01日: 東京都は8月上旬にピークで3万4000人
    8月02日: 東京都は8月上旬にピークで3万3000人
    8月03日: 東京都は8月上旬にピークで3万5000人
    8月04日: 東京都は8月上旬にピークで3万3000人
    8月05日: 東京都は8月上旬にピークで3万3000人
    8月06日: 更新なし
    8月07日: 更新なし
    8月08日: 東京都は8月31日時点で2万0000人
    8月09日: 東京都は8月31日時点で2万0000人
    8月10日: 東京都は8月31日時点で1万9000人
    8月11日: 東京都は8月31日時点で1万8000人
    8月12日: 東京都は8月31日時点で1万6000人
    8月13日: 更新なし
    8月14日: 更新なし
    8月15日: 東京都は9月7日時点で1万3000人
    8月16日: 東京都は9月7日時点で1万4000人
    8月17日: 東京都は9月7日時点で1万3000人
    ※毎日更新されるが、同じURLで記事が上書きされてしまうので、可能な範囲で記録に残してリンクしている。


あとがき

BA.5の感染力、重症や死者数、ワクチンの追加接種などの考察は、7月6日版の記事に書いています。

ここに載せていないものも含む各種グラフは、毎日更新しています。

東京の感染者数を5週間ぶん予測した (8月4日版)

※ 8月11日版を公開しました knoa.hatenablog.com


前回の予測

前回、7月28日の5週予測のうち、1週目の週平均は予測31458人→現実32116人となりました。

予測日-7/04-7/11-7/18-7/25-8/01
7/06 7000185693889066093
7/13 150602450034902
7/21 2669331452
7/28 31458
現実 33808054162162592732116

人流の影響を3週前から2週前へ修正する前の、7月6日の予測とはズレが大きくなっています。


今回の予測

(注: 東京都の独特なデータ公開形式の都合で、週の区切りが火曜から翌週月曜までであることに注意してください。グラフ中の「-8/08」は「8/02(火)-8/08(月)」の7日間の週平均を指します)

今回の予測は、大まかな山の形はあまり変わりませんが、先週と見込んでいた週平均のピークを今週3万3000人、1日単位では3万9000人とし、それに伴って全体が後ろへずれ込んでいます。ただし、予測2週目(-8/15)は山の日やお盆の影響も含んでいるので、予測の週平均ほど減少する印象にはならないかもしれません。

この変更の主な要因は「感染増に伴って予測通りに減り続けていた人流が、逆にわずかに増加していた」ことによります。今後ともこのまま増加を続けるようなら、さらに修正が必要かもしれません。

このような人流の急変はデルタ時にも起こっていて、当時の予測記事では「タガが外れたような推移」と表現しています。当時はオリンピックが開幕されたお祭り感、今回は行動制限をしないという強いメッセージが安心感を与えたのではないかとも想像しますが、なにぶん心理的な問題なので、難しいところです。また、変異株の特性もあってか、今回は当時以上に人流の影響がすぐに現れるようになっています。(とは言え、多くの専門家が将来の人流を「現状維持とする」「前年と同様の推移とする」「1%ずつ減るものとする」などと決め打ちしているのに比べれば、都医学研の研究でも示されている「感染者数が人流に影響する」という動的な指標は、それでも優れていると思っています)

ただ、ここ1週間ほど、検査報告の遅れ具合が非常に激しく変動していて、感染者数だけでなく、陰性報告ほど優先度が低くなることから陽性率もアテにならず、実態の正しい把握が難しくなっています。検査数が上限付きで削減されてしまった第6波ほどの事態ではないにしろ、発熱外来の受診抑制の要請(マイナス要因)や、無料検査キットの送付オンラインでの検査診断の開始(プラス要因)などもあって、日々の感染者数の一貫性は薄れてしまっているように思います。


BA.2.75 (ケンタウロス)

引き続き、データが不足していて、今回の予測に組み入れるには至りませんでした。これは逆に言うと、十分なデータが集まるほどBA.2.75の感染が増えていないということでもあります。唯一、ある程度の感染規模になっているインドの推移を見ても、いまのところBA.5とあまり変わらない前週比が続いています。

また、東京都もBA.2.75系統を早期に把握する検査を開始しましたが、BA.5と比べても拡大の兆候は見られません。「大したことなかった」というニュースは報道されないでしょうが、本予測記事では、近いうちにそのように宣言することができるのではないかと期待しています。


予測の条件など

「祝日や連休などの」の数字で試行錯誤しています。そのほかは、前回と同様です。(詳細: 3週前の人流がデルタ株の増減と最も相関していたという解説)

  • 変異株ごとの前週比
    BA.2の前週比に対してBA.2.12.1は1.4倍、BA.5は2.25倍。現実には曲線になると思われるが、BA.2の前週比1.0倍付近では近似できるとみなしている。
  • 2週前の人流
    1週前×1 + 2週前×3 で、実質1.75週前の人流と前週比を対応させている。12日くらい前をピークにした正規分布のほうがより適切だと思われるが、労力の都合で人流データを週単位でしか取れていないので、苦肉の策。厚労省のアドバイザリーボードの資料または都のモニタリング会議の資料から、繁華街の滞留人口を人力で(!)読み取っている。
  • 3週前の感染者数
    3週前の感染者数によって、2週前の人流が変動するという仕組み。以前の予測では感染者数の「最大値が前週比に影響する」としていたが、「週合計が人流に影響する」ほうが現実に即していたので変更した。
  • ワクチン接種
    個人単位では (1-(経過週数/56週))1/4 の曲線で効果が減衰するものとする。都民全員がワクチンと自然免疫を同時に獲得した直後の集団免疫を仮に200%とし、減衰後の 1-(集団免疫/200%)2 だけ前週比が減るものとする。これはワクチンと自然免疫の重なりをひとまとめに扱うための便宜的な近似。また、仮に経過週数が同じなら、対デルタに比べて対オミクロンの効果は80%とする。これらは前週比に与える影響自体は大きいが、週単位で大きく変動するわけではないので、5週予測の精度というよりも、過去の感染の波との整合性に影響している。(大局的な齟齬がなければ、これらの計算式は週単位の予測にはあまり影響しない)
  • 感染による自然免疫
    発表の4倍の感染者数を想定。効果はワクチンと同等とみなす。5週予測に与える影響もワクチンと同様。
  • 入国者数(海外渡航歴のある感染者)
    感染者の絶対数が少ない時期ほど、BA.2の前週比の割にBA.5の前週比が前述の倍率より高くなりやすいので、入国によるかさ増しを想定している。
  • 祝日や連休など
    祝日は休診の影響でいったん感染者数が減り、逆にその後は休診明けのリバウンドと行楽などによる感染増で感染者数が増えるものとする。月曜と金曜の違いや連休日数に応じて、3.5%から21%までの幅で決め打ちしているが、まだ改善の余地がある。


他の予測など

今週は、CATsによる予測が毎日更新されているほか、8月2日(火)にも3つ公開されていました。(敬称略)

※ 特に断りがない限り、感染者数はいずれも7日平均なので、祝日などによるブレがなければ感染ピークの1日単位の最大値はその1.2倍くらいになることが多いです。


あとがき

BA.5の感染力、重症や死者数、ワクチンの追加接種などの考察は、7月6日版の記事に書いています。

ここに載せていないものも含む各種グラフは、毎日更新しています。

東京の感染者数を5週間ぶん予測した (7月28日版)

※ 8月4日版を公開しました knoa.hatenablog.com


前回の予測

前回、7月21日の5週予測のうち、1週目の週平均は予測26693人→現実25927人となりました。予測がほぼ的中していた割には、34995人が発表された先週金曜などは、現実がかなり上回っていくように見えていたかもしれません。この週は3連休明けだったので、火曜・水曜の少なさと木曜・金曜のリバウンドの差が激しく、週平均の予測だけで済ませているデメリットが出てしまいました。

予測日-7/04-7/11-7/18-7/25
7/06 70001856938890
7/13 1506024500
7/21 26693
現実 338080541621625927

人流の影響を3週前から2週前へ修正する前の、7月6日の予測とはズレが大きくなっています。


今回の予測

(注: 東京都の独特なデータ公開形式の都合で、週の区切りが火曜から翌週月曜までであることに注意してください。グラフ中の「-8/01」は「7/26(火)-8/01(月)」の7日間の週平均を指します)

前回とほぼ同じ予測で、ピークは今週、週平均で3万1000人、1日単位のピークで3万8000人くらいと見ています。なお、昨日7月27日(水)は1日単位のピークの有力候補の1つでしたが、直前のHER-SYSの不具合によって感染者数の一部が持ち越されてしまったため、本日7月28日(木)が本来より大きく膨れ上がってしまいました。直接的な数字でいえば本日の4万0406人が1日単位のピークになる可能性が高いです。

これまで増加していたものを急減に転じさせる原動力は、自然免疫が6割、人流減が4割といったところです。第6波ではBA.1系統によるピークの後、入れ替わるようにBA.2が増えたために減少が鈍くなりましたが、今回は後述のBA.2.75も含めて、そのような兆候はいまのところありません。お盆の影響は読みにくいところですが、お盆をきっかけにした人流の活発化はあくまで一時的なものなので、仮に悪い影響が出るとしても5月のゴールデンウィーク時のように「一回休み」か「ひとマス戻る」だけで、大きな流れとしての減少傾向は継続します。

前回の予測とのわずかな違いは、主にワクチン接種のわずかな加速化と、人流減少のわずかな鈍化の影響によるものです。

さて、検査の逼迫が報道される中で、この感染者数が実態をどれだけ反映しているかという問題があります。当然、検査をあきらめるなどした不足分はあるはずですが、いっぽうで陽性率は既にピークを迎えつつあるように見えます。少なくとも現実の市中で感染が増え続けている状況ではなさそうです。

また、陽性率と感染者数の関係を示したグラフも、今回の波で感染が少なかった時期から順当な曲線を描いて推移していて、前回の第6波で国が検査数を抑制したときのような急変はいまのところありません。少なくとも、検査不足の程度は第6波よりはマシだと言えそうです。


医療の逼迫と社会の停止

ワクチンや自然免疫のおかげで、感染規模が大きいにもかかわらず、前回の第6波に比べて入院は同等、重症は少なくなっていますが、救急医療など現場は既に逼迫しています。満床になりえない、数字だけの7046床という入院病床数に意味はありません。また、死者数は高齢者を中心に感染規模に比例しがちな側面があるので、今後増えていくことも考えられます。

いっぽう、病状の軽重にかかわらず、感染者数が多すぎるあまりに社会が停止する事態にもなっています。低くなった重症化率を喜ぶのはいいのですが、それで問題がなくなったと感じさせてしまうのは間違いです。(欧米並みに今の何倍も感染を経験して、より強い集団免疫を獲得すれば、また新しいステージに至るかもしれませんが、まだ日本はその域に達していません)


BA.2.75 (ケンタウロス)

新しい強力な変異株として報道されていますが、謙虚に見ていまのところ「まだデータが少なすぎてわからない」状態で、杞憂に終わる可能性も十分あります。来週には予測に組み入れることができるかもしれませんが、大した影響がないことに期待します。


予測の条件など

前回と同様ですが、言葉足らずを承知の上で、数字と共に詳しく書き出しておきます。解説記事にはもともと書いてありますが、「祝日や連休など」も列挙項目に加えました。(詳細: 3週前の人流がデルタ株の増減と最も相関していたという解説)

  • 変異株ごとの前週比
    BA.2の前週比に対してBA.2.12.1は1.4倍、BA.5は2.25倍。現実には曲線になると思われるが、BA.2の前週比1.0倍付近では近似できるとみなしている。
  • 2週前の人流
    1週前×1 + 2週前×3 で、実質1.75週前の人流と前週比を対応させている。12日くらい前をピークにした正規分布のほうがより適切だと思われるが、労力の都合で人流データを週単位でしか取れていないので、苦肉の策。厚労省のアドバイザリーボードの資料または都のモニタリング会議の資料から、繁華街の滞留人口を人力で(!)読み取っている。
  • 3週前の感染者数
    3週前の感染者数によって、2週前の人流が変動するという仕組み。以前の予測では感染者数の「最大値が前週比に影響する」としていたが、「週合計が人流に影響する」ほうが現実に即していたので変更した。
  • ワクチン接種
    個人単位では (1-(経過週数/56週))1/4 の曲線で効果が減衰するものとする。都民全員がワクチンと自然免疫を同時に獲得した直後の集団免疫を仮に200%とし、減衰後の 1-(集団免疫/200%)2 だけ前週比が減るものとする。これはワクチンと自然免疫の重なりをひとまとめに扱うための便宜的な近似。また、仮に経過週数が同じなら、対デルタに比べて対オミクロンの効果は80%とする。これらは前週比に与える影響自体は大きいが、週単位で大きく変動するわけではないので、5週予測の精度というよりも、過去の感染の波との整合性に影響している。(大局的な齟齬がなければ、これらの計算式は週単位の予測にはあまり影響しない)
  • 感染による自然免疫
    発表の4倍の感染者数を想定。効果はワクチンと同等とみなす。5週予測に与える影響もワクチンと同様。
  • 入国者数(海外渡航歴のある感染者)
    感染者の絶対数が少ない時期ほど、BA.2の前週比の割にBA.5の前週比が前述の倍率より高くなりやすいので、入国によるかさ増しを想定している。
  • 祝日や連休など
    祝日数×4%だけ休診の影響で感染者数が減るものとする。逆に前週の祝日数×10%だけ、休診明けのリバウンドと行楽などによる感染増で感染者数が増えるものとする。ここはパーセンテージのみならず月曜と金曜の違いや連休日数の違いなど、まだ改善の余地がある。


他の予測など

今週から、第6波でも予測していたCATsによる予測が毎日更新されるようになったほか、7月26日(火)にも1つ公開されていました。(敬称略)

※ 特に断りがない限り、感染者数はいずれも7日平均なので、祝日などによるブレがなければ感染ピークの1日単位の最大値はその1.2倍くらいになることが多いです。


あとがき

BA.5の感染力、重症や死者数、ワクチンの追加接種などの考察は、7月6日版の記事に書いています。

ここに載せていないものも含む各種グラフは、毎日更新しています。

東京の感染者数を5週間ぶん予測した (7月21日版)

※ 7月28日版を公開しました knoa.hatenablog.com


今回から、水曜深夜に厚労省のアドバイザリーボードの資料として、または木曜午後に都のモニタリング会議の資料として、繁華街の人流データが公開されることを頼りに、木曜に更新することにします。

前回の予測

前回7月13日の5週予測のうち、1週目の週平均は予測15060人→現実16216人となりました。

予測日-7/04-7/11-7/18
7/06 700018569
7/13 15060
現実 3380805416216


今回の予測

前回の予測と大きな差はありませんが、少しだけピークが低くなりました。今週は3連休の影響もあってブレるかもしれませんが、ピークは7月末から8月上旬、週平均で3万1000人、1日単位のピークで3万8000人くらいと見ています。

(追記) 前回との少しの差は、主に4回目接種が加速化していることによります。感染拡大を受けて加速化するのは当然予想できることなので、本来は予測に織り込んでおくべきなのでしょうが、手がかりとすべき指標が乏しくて思案しています。接種の予約状況などが公開されていればいいのですが(笑)。

人流も感染拡大に伴って減っていますが、こちらはもともと織り込み済みです。

ただし、ついに検査の逼迫が報道されるようになりました。7月21日現在での検査数は、少なくとも今年初めに比べれば順調に伸びているように見えますが、頭打ちの懸念は常につきまといます。

入院数も3000を超えて、これまでデルタでも年初のオミクロンでも医療崩壊が報道された、4000床の壁に近づいています。デルタ時と違って、いま医療崩壊を引き起こすボトルネックとなっているのは、重症数よりも入院数です


予測の条件など

前回と同様です。


他の予測など

今週は7月19日(火)に4つ公開されていました。(敬称略)

(7月22日更新: 東京大学 仲田泰祐 氏による予測を追加。7月19日が公開日となっていますが、手続き上のミスなのか、資料の表紙には7月14日の日付があり、掲載は7月21日だったと思われます)

(7月27日更新: 名古屋工業大学 平田晃正 氏による予測を追加。7月19日が公開日となっていますが、掲載は7月21日だったと思われます。気付くのが遅れました)

※ 特に断りがない限り、感染者数はいずれも7日平均なので、祝日などによるブレがなければ感染ピークの1日単位の最大値はその1.2倍くらいになることが多いです。


あとがき

BA.5の感染力、重症や死者数、ワクチンの追加接種などの考察や、詳しい予測の条件などは、7月6日版の記事に書いています。

ここに載せていないものも含む各種グラフは、毎日更新しています。

東京の感染者数を5週間ぶん予測した (7月13日版)

※ 7月21日版を公開しました knoa.hatenablog.com


前回の予測

前回7月6日の5週予測のうち、1週目は予測7000人→現実8054人となりました。(※7月19日修正: 単純ミスで7月6日の感染者数 8341人 と入れ違えていましたが、正しくは 8054人 でした)

予測より現実のほうが上回っていますが、しかし本日時点で「前週比」が予測に反して既に下落傾向にあり、今後は現実のほうが下回っていく可能性が高いと見ています。


今回の予測

8万の予測が4万に、減る? という批判は、まったくその通りで、謹んでうけたまわります。前述の通り、「前週比」が既に下落していることを重視しました。

その前回予測とのズレの主な要因としては、

  • 人流の影響が3週遅れではなく2週遅れで早くも現れている可能性

を想定して、予測を見直しています。ブレーキが早めに効き始めているというわけです。前回この条件の違いを想定しなかったのは失態でした。

なお、いまのところ本日までの感染者数に検査飽和などの影響は出ていないか、仮に出ていたとしてもまだ大きな影響ではないとみなしています。

今回の予測であれば、入院などの医療の逼迫はかなり緩和されるとは思いますが、それでも病床の不足が報道される実質的な満床飽和(東京では4000床くらい?)はギリギリの線だと思います。


予測の条件など

前回と同様です。

ただし、3週前の人流ではなく2週前の人流に変更しました。また、繁華街の人流データの完全版が

といった事情で入手できなかったため、前回に比べると精度が落ちています。イギリスでさえ各種報告の頻度を落としているくらいですから、コロナに対する危機意識や実際の危険性がやわらいでいくにつれて、欲しいデータが不足する傾向はやむを得ないのかもしれません。

また、ワクチンの4回目接種が都の全人口に対して直近3週で 0.4% → 1.3% → 3.0% と伸びていて、まだまだ絶対数としては少ないものの、リスクの高い人から接種しているわけなので、医療に対する負荷軽減という意味では数字以上に影響があると思われます。これが今後加速するのかどうかの予測は難しく、いまのところ単純に直近の増加分をそのまま延長しているだけです。(当面は加速していく可能性のほうが高い気はしていますが)


他の予測など

今週は1つだけ更新されていました。(敬称略)

※ 特に断りがない限り、感染者数はいずれも7日平均なので、祝日などによるブレがなければ感染ピークの1日単位の最大値はその1.2倍くらいになることが多いです。

東京の感染者数を5週間ぶん予測した (7月6日版)

※ 7月13日版を公開しました knoa.hatenablog.com


東京の感染者数を5週間ぶん予測するのをやめた (3月24日版) あと、しばらく様子をうかがっていましたが、再開を試みます。

今回の予測

(更新: 部分拡大グラフを追加しました。数値に変更はありません)

1日8万人とか、そんなことある? という感想は、わたしも抱いています。1ヶ月後に笑い話になっていれば、謹んで辱めを受けたいと思います。しかしワクチンの減衰や自然免疫の程度など、どの条件をいじっても、7月末から8月上旬ごろに6-8万くらいのピークが来てしまいました。もっとも、3-4月にかけて増えていたBA.2のピークはもっと大きくなると悲観的な予測をして外していますから、今回も未知の要因を考慮し損ねていたり、既知の要因を過大・過小評価している可能性はあります。

なお、いちおう都は検査数について「最大約29万件/日の体制を確保」と謳っているようですが、これまでも都が事前の目標を達成したことはないので、おそらく1日8万人の感染者はとても検査できないでしょう。


なんでそんなに増えるわけ?

BA.5の感染力が8割、人流増加による感染拡大の下支えが2割と言ったところです。ワクチン効果の減衰は確かにありますが、今も追加で接種する人がいるので、都民全体の集団免疫力が急落しているわけではありません。また、東京以外でも、島根のようにBA.5が持ち込まれれば、どの地域でも同様の感染爆発は避けられません。

下記散布図の●黄色い点に注目してください。BA.5の前週比は、かなりバラツキがあるものの、「横軸BA.2の前週比が1.0倍なら、縦軸BA.5の前週比は2.0-3.0倍になる」という関係が見てとれます。目下のところ、東京をはじめとした多くの地域でBA.2の前週比は0.8-1.0倍(■赤領域)と推定されるので、このまま環境が変わらなければ、BA.5は毎週1.5-3.0倍くらいの勢いで増えていくはずです。

ワクチンは急には大量接種できないので、BA.5の急増を食い止めるのは人流と自然免疫です。しかし、いまの世情的に緊急事態宣言はおろか、まん防さえ、少なくとも予防的なタイミングで実施されることはないように思います。感染拡大に伴って「自然と」外出を自粛する力は働きますが、あくまで後追いなので予防的な効果はありません。最後に頼りになるのが自然免疫ですが、当たり前ですが、これは感染してこそ得られる免疫です。

現時点でBA.5を減らしている貴重な先行事例のポルトガルは、東京より少ない1000万の人口に対して昨年末から28週連続で毎週5万人以上、期間の累計で400万人という感染者を出しているため、少なくとも自然免疫の面で東京とはまったく条件が異なります。


重症や死者数は?

ワクチンの効果は感染→発症→入院→重症→死亡と重くなるものほど効果が持続するので、特に重症についてはかなり抑えられるのではないかと期待しています。ただ死亡については、特に高齢者ほど、感染者の絶対数が増えると必然的に増えてしまうので、年初に比べて少なくなるとは限らないでしょう。また、入院に対してもワクチンが効果を保ってくれているはずですが、少なくともイギリスでは直近で入院率が上がっているという報告があり、感染者数の分母も大きく増えることを想定すれば、実質的な満床飽和(東京では4000床くらい?)は避けられないように思います。

個人的には「今後は、医療崩壊さえ避けられるなら、行動制限に頼らなくてもよい」と考えてきましたが、実現可能性は別にして、ピークをやわらげるために7月中に短期間の行動制限が必要だと感じています。(長期間にしないのは、感染力が強いので結局は自然免疫による全員感染に頼らざるをえず、行動制限は永遠には続けられないと考えるためです)

また、「たとえインフルエンザ程度だとしても、都民が全員寝込んだら社会が止まる問題」が、1-2月以上に問題になるでしょう。無症状なら働いてもらうくらいのことはやれなくもないでしょうが、そもそも都の感染者数として表に出てくる人数のうち無症状なのは全体の1割以下なので、焼け石に水です。鼻水程度なら働いてもらうのか、いくらか社会を止めるしかないのか、韓国や台湾に学ぶ必要があるかもしれません。


できることは?

3回目接種がまだの人は、いつか接種するつもりがあるなら、今がその時です。感染者数の上り坂から下りまで、全期間守ってもらえます。山頂や下り坂で接種するのは、本来めちゃくちゃもったいないことです。これは、ピークが1万人になろうが、8万人になろうが、同じことです。ピークより前に打つのです。

4回目が接種できる人も、同じ理屈で、今打つべきです。むしろ、これは政府にこそ言いたいのですが、接種サイクルの目先の効率性を大事にして「前回接種からきっちり5ヵ月待ってもらう」よりも、1ヵ月前倒ししてでも感染の上り坂で接種してもらった方が、個人のリスクとしても医療全体の負荷としても、圧倒的に効率的です。逆に、もし今後、幸運にもしばらく感染が落ち着く時期が来たならば、たとえ5ヶ月経ってワクチン効果が減衰してしまったとしても、次なる感染拡大の兆候が現れるまでは、6ヶ月だろうが7ヶ月だろうが待ってもらうべきです。そして、いざというときに短期間で大量に接種できる体制こそ、整えておくべきかと思います。


予測の条件など

考慮されている条件は基本的にはかつての予測と同じです。(詳細: 3週前の人流がデルタ株の増減と最も相関していたという解説)

  • 変異株ごとの前週比
  • 3週前の人流
  • 4週前の感染者数
  • ワクチン接種
  • 感染による自然免疫

今回はこれらに加えて

  • 入国者数(海外渡航歴のある感染者)

を考慮しています。ただし、国内の感染者数が少なく、入国分の影響が大きいときに限ります。

今回なぜ予測を再開できたかというと、

などの予測を難しくさせる時期を終えて、比較的安定した数週間のデータが得られたことと、

  • 海外の先行したBA.5データの蓄積

のおかげです。


他の予測など

ちょうど7月5日に感染者数の予測が3つ公開されていたので紹介しておきます。(敬称略)

(7月19日更新: 筑波大学 倉橋節也 氏による予測を追加。7月5日が公開日となっていますが、手続き上のミスなのか、掲載は7月11日だったと思われます)

※ 特に断りがない限り、感染者数はいずれも7日平均なので、祝日などによるブレがなければ感染ピークの1日単位の最大値はその1.2倍くらいになることが多いです。


あとがき

引き続き増田で書けなくもなかったのですが、グラフ描画などを実現していた方法が使えなくなったので、こちらにしました。

今後、以前のように毎週更新するかは、未定です。(ここに載せていないものも含む各種グラフは、毎日更新しています)

ワクチン、人流、変異株。

(6月23日: 各グラフを新しいものに差し替えました)

ワクチンは、ちゃんと効く。

都民のワクチン3回接種率はおよそ6割。2回接種で96%も効果があった対デルタには劣りますが、それでも対オミクロン感染に84%の効果があります。

入院においては効果がさらに顕著で、全員ワクチン未接種なら2000人に対して100人が入院するような状況を、全員3回接種済みなら、なんと3人にまで抑えてくれます。

東京での今年3月の実測で感染に対して84%の効果。また、2回接種後に減衰した効果も平均して37%残っている。

また、カタールの報告では自然免疫もワクチンと同等の効果を示しています。高齢者から接種しているワクチンとは逆に、若い世代ほど自然免疫を広く獲得していると言えます。

実際には、ワクチンの効果は接種後に減衰していきます。ただし入院、重症、死亡など重いものに対してほど効果は持続しやすいので、社会全体としての医療への負荷はやわらげられます。


人流が関係ない、わけがない。

感染者のあなたが誰かと会食して、相手を感染させてしまったとしましょう。もしその場にあと2人いたとしたら、その2人は感染を免れたでしょうか?

平均して1000人が900人に感染させていた環境を、1000人が1100人に感染させる環境へ変えるのは、とても簡単なことです。人々の接触機会を少し増やすだけでいい。その逆もまたしかりです。

にもかかわらず、人流を少しずつ増やしながらも感染者を大きく減らすことができていたのは、やはりワクチンのおかげです。なにしろ、あれから6割もの都民が3回目のワクチンを接種したんですよ?

モニタリング項目の分析(令和4年6月16日公表)|東京都防災ホームページ

※ 人流と感染の関係については、都医学研の報告当増田出張所の記事がある。

※ 連休などによる人流増加と休診明けの反動は、あくまで一時的な増加圧力に過ぎず、継続するわけではない。

※ もちろん人流は指標のひとつに過ぎず、マスク着用や換気などの感染対策、人々の行動が広く影響する。


新しい変異株は、増えやすい。

古い変異株が増えていようと減っていようと、新しい変異株はかまわず増え続けることができます。実際、東京での4月の一時的なリバウンドは、BA.1 が一貫して減少していたにもかかわらず、BA.2 の増加によってもたらされています。

BA.2 と BA.1.1 (日本で主流だった BA.1 の系統) の関係は、だいたい「BA.1.1 が前週比1.0倍なら、BA.2 は1.8倍」くらいの関係でした。

そんな強力な BA.2 さえもその後に減らすことができたのは、ワクチン接種が強力に進められてきたおかげだと言えます。特に、人数的に感染の主力となっている若い世代は、3月から4月にかけて接種が進みました。

今後はオミクロンチルドレンの中で最も感染力が高い BA.5 が増えていくと思われますが、1月に比べれば都民の集団免疫力もずっと増していることから、感染規模も医療負荷も、過去を上回ることはないでしょう。

※ BA.2.12.1 も BA.4 も BA.5 も、重症化率やそれに対するワクチンの効果などは、これまでのオミクロンと変わらないと考えられている。

オミクロンチルドレンが大きく増えた先行事例は BA.2.12.1 がアメリカ、BA.4 が南アフリカ、BA.5 がポルトガルくらいしかないのですが、いずれも相対的には感染爆発というレベルには至っていないのが安心材料です。ただし、日本も含めてこれまで BA.2 を減らし続けていた国々で、感染者数が増加に転じる要因とはなっています。


確かに、感染者数の増減は、「ワクチン・人流・変異株」という三大要素を同時に考慮しないといけないことが、話をややこしくしています。しかし、ややこしいという前提さえ知っていれば、不思議もいくらか軽減されるのではないでしょうか。

そしてくれぐれも、三大要素が影響を与えるのは感染者の絶対数じゃなくて、増減比です。感染者が1000人か1万人かではなく、前週比が0.8倍か1.5倍か、ということです。誤解されませんように。

ワクチンの副反応を年齢別にグラフ化した

子供へのワクチン接種は社会全体としてのメリットがある一方で、子供自身にとっては他の世代に比べた症状の軽さから副反応などのデメリットに見合わないとする考えもある。

じゃあ、子供の副反応ってどのくらいなの?

ということで、厚労省による日本国民向けの案内がこちら。

小児(5~11歳)の接種にはどのような副反応がありますか。|新型コロナワクチンQ&A|厚生労働省

簡潔にまとめられているいっぽうで、もともと存在している詳しいデータがごっそり削られているとも言える。

そこで、親の立場での実体験と比較しやすい形でグラフにまとめたので、参考にしてもらいたい。(親の実体験を元に判断するのが適切かどうかという問題はあるが、現実的に判断に影響を与えていると思われる)

赤みと腫れを除けば、概して子世代の症状率は、親世代に比べて少ないと言える。

元データ: Pfizer-BioNTech COVID-19 Vaccine Reactions & Adverse Events | CDC

※ 5-11歳が接種する有効成分の量は12歳以上の1/3。

モデルナは年齢区分が違うし、18歳未満はデータがないので今回は除外した。

※ 3回目接種の副反応については、厚労省の見解は「(2回目と)概ね同様」


以下は2022年5月21日現在の参考資料である。

ワクチン接種は各世代で進行中だが、5-11歳の伸びは鈍い。

元データ: ワクチン接種実績 東京都福祉保健局

10歳未満は現時点までに世代人口の17%、6人に1人がオミクロンに感染済みとなっている。

元データ: 東京都 新型コロナウイルス陽性患者発表詳細 - データセット - 東京都オープンデータカタログサイト

3週前の人流がデルタ株の増減と最も相関していたという解説

まずこちらの散布図をご覧ください。これを見ても特に興味が湧かなかった人は、この先を読んでもたぶんおもしろくないです。これから、どうやってこの図にたどり着くかを解説していきます。 f:id:Knoa:20220216204457p:plain

人流と感染者数の正しい見方

緊急事態宣言やまん防などについて、効果が出ているかどうか、一般のニュース番組などでサラッと触れるだけの場合、次のような図が示されることがあります。しかしこれははなはだ不親切と言わざるを得ません。むしろこんな図を見せられてもふつうは効果が出ているのかピンと来ないので、「緊急事態宣言に意味はない」などとする論説を勢いづかせてしまいます。 f:id:Knoa:20220216143040p:plain

最低限、図示にあたって必要なのは人流です。ここでは、LocationMind xPop の提供による、都内の主要繁華街の人流データを使いました。

下記の図を見れば、少なくとも政府による行動制限が人流に影響を及ぼしていることは明らかでしょう。その上で、人流を減らすことが感染者数の抑制にどれだけ寄与しているのかを、ここから少しずつ浮き彫りにしていきます。 f:id:Knoa:20220216143049p:plain

※ お盆と年末年始の人流は、都民は帰省などで移動しているはずだが、繁華街の人流データには反映されないので、不整合を避けるために空白としている。

まず、感染者数そのものの替わりに、感染者数の前週比を示します。専門家会議などの資料や、少ししっかりした報道番組なら、ここまで掘り下げることもめずらしくないでしょう。しかし見るべき指標という意味では正しいのですが、まだ不足です。 f:id:Knoa:20220216143058p:plain

※ 場合によっては前週比の替わりに実効再生産数になることもありますが、右の目盛りが変わるだけで、実質的にはまったく同じこと。

まったく同じ人流でも、アルファなら減らせるけどデルタは増えてしまうといったことがありえますから、人流に対する前週比は必ず変異株ごとに見なければなりません。ひとつ前のグラフを灰色で示していますが、7月の段階ではアルファを含んだ感染者数全体より、デルタだけの前週比はずっと高かったですし、年明けのオミクロンの爆発に比べれば、デルタ自身の増加比はそこまで大きくはありませんでした。 f:id:Knoa:20220216143107p:plain

※ 誤差が大きくなるのを避けるため、デルタ株が全体の10%以上を占めていた時期のみ。

さらに、ワクチンの効果を考慮しなければなりません。青色がワクチンが「なかった場合」の前週比で、ワクチンのおかげで現実には灰色のレベルまで前週比を下げ続けてきたということになります。 f:id:Knoa:20220216143118p:plain

ちなみにデルタ当時は、従来株に比べてワクチンの効果が劣ると言われていましたが、結果的には非常に高い効果をもたらしていたことが、感染が下火になった後になってわかってきました。まだ当時は欧米の接種後数ヶ月を経たことによる効果の低下と、デルタに対する効果の低下が区別されていなかったせいで、誤った理解がされていたのかと推察しています。そして、この誤った情報と実際の高い効果の差が、いわゆる「ファクターX」の大部分を占めていたと考えています。

さて、感染を防いでくれるのは、ワクチンだけでなく、感染による自然免疫もあります。特に、デルタはかなりの規模で感染が広まりましたし、検査して感染者として発表された人だけでなく、気付かずに感染して無症状のまま免疫だけを獲得した人がその何倍もいると推定されます。ここでは、日本の従来株時の調査で報告された「発表された感染者数の4倍」という想定で、ワクチンと同様に自然免疫の効果を差し引きます。全体に与える影響はワクチンより小さいですが、無視してよいほどでもありません。 f:id:Knoa:20220216143127p:plain

※ 感染から2週間で、自然免疫がワクチン2回接種と同等の効果を持つと想定。デルタ時の自然免疫の効果は85%というアメリカの報告がある。

※ 日本の従来株時で実際の感染者が発表の4倍という倍率は、デルタ時にどうなっているかはまだ不明。ワクチンの普及のおかげで無症状のまま気付かないひとが増えている可能性はある。アメリカではデルタ時に4倍という推計があるが、国が違うことは大いに考慮されるべき。※ 2月17日追記: 日本のデルタ時の速報で、実際の感染者(抗体保有者)と発表の感染者がほとんど変わらないという調査結果が出た。さすがに従来株時の調査とも空港検疫の無症状率とも海外の推計とも矛盾が大きく、速報の「留意点」としても、抗体を十分に獲得できない感染者もいることや、抗体が長期的に減衰することが付記されている。

ここまでやって初めて、人流と前週比の関係を正しく見比べることができます。赤丸で示した人流が、少し右にずれて青丸の前週比と連動している様子がつかめてきたでしょうか。 f:id:Knoa:20220216143137p:plain

いよいよ散布図です。まずはデルタの前週比を、1, 2, 3, 4週前の人流とそれぞれ比較してみましょう。どれもある程度の相関はありそうですが、特に3週前がきれいに相関しているように見えます。(人流も感染者の増減も連続的に変化しますから、3週前が相関していれば2週前や4週前もそれなりに相関します)

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※ いちばん左に伸びている人流の最低点は、8月16-22日の微妙にお盆とかぶっている週なので、本来はもう少しだけ右側にスライドした位置を想定すべきと思われる。

基本的にはここで終わってもよいのですが、さらに精度を高めるかもしれない補正を紹介しておきます。

それは「祝日のあった週の翌週は、前週比が大きくなる」という経験則に基づく補正です。医療機関の休診の影響で翌週にしわ寄せが出ているとか、単純に休日が感染機会を生んでいるのかもしれません(翌週すぐ現れるので3週のズレとはまた別の機序か)。本来は祝日の曜日別に数年分のデータで統計を取りたいところですが、そんなデータはないので、ひとまず「祝日の日数 × (1/7) だけ前週比が増している」と仮定して、その分を差し引きます。結果、少しだけ目立っていた上方向の突起が、きれいにへこみました。 f:id:Knoa:20220216204541p:plain

※ (1/7)という補正値は現時点では恣意的だが、データさえ蓄積されれば統計的に値を決めて反映できる、統一的な操作だという点が大切。また、お盆の週はカレンダー通りに加えて2日分、年末年始は3日分を加算しているが、この加算量についても同様。

このようにして、「3週前の人流」がデルタ株の増減に最も相関していたことを可視化できました。同様の手法で、LocationMind xPop の提供による繁華街ではなく、Agoop の提供による新宿の人流を元にした図も示しておきます。こちらは全国多数の観測地点が用意されている中で、人力の限界と代表性の観点から新宿を選んでデータ化しているだけなので、より多くの地点のデータを元にすれば、さらに精度は高まるものと思います。

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人流こそが悪なのか?

いったん脱線します。ここまで長々と、人流が感染の増減をもたらしていることを浮き彫りにしてきましたが、ことさら人流が悪であると言いたくない気持ちもあります。あくまで 悪いのは感染なのです。

本来であれば、人流抑制に頼らない感染対策があればよいのですが、幸いにも日本人はマスクは既に着用していますし、徹底した黙食を大人に強いることは現実的ではないと考えられているため、やむなく根元の人流から断つしかないというのが実情だと思います。

しかし、たとえば変異株が少しずつ世代間隔を短くしてきたことも活かして、徹底した本気の黙食3日間キャンペーンを打ってみるなど、ワクチンや人流抑制に頼らない方法がもっと模索されてもよいとも感じます。何ヶ月も続ける行動抑制より、費用対効果はよほど高い気がしますが、都民や国民の心をひとつにするには、隕石やゴジラが来襲しないと難しいでしょうか?

3週遅れる理由

さて話を戻して、どうして人流に対して3週も遅れるのか考察しておきます。

まず、感染から報道発表までは、少なくともデルタにおいておおむね7日間の遅延があります。また、感染者同士の発症間隔は平均して4日、発症から診断までの平均は2日と推定されていますから、次のような時系列が考えられます。

  0日 感染
 +4日 発症まで
 +6日 診断まで
 +7日 報道発表まで
+11日 2次感染の報道発表まで
+15日 3次感染の報道発表まで
+19日 4次感染の報道発表まで

それに加えて、下記のような事情が考慮されるべきです。

  • 週の区切りを「日曜までの7日間」としている影響
    • そもそも感染のきっかけとなる人流が週末に偏っている可能性
    • 検査は週末に少なく月曜に多いことで、感染発表が火曜以降に偏る
  • 最初の人流をきっかけにした感染から何日も遅れて発生する、家庭内や施設内の2次・3次感染の影響
  • あくまで3週目に最も相関するだけで、最速の影響は1週後から出はじめて、3週目に最大となるだけ

とは言え、機序の解明も興味深いことではありますが、「3週前の人流と相関するのは偶然の一致で、もっと長期的に見ていけば、散布図はバラバラになっていくはずだ」ということでもない限り、感染者数を予測する上では、結果だけを活用することができます。もっとも、オミクロンに対しても同じ結果が得られるかは、引き続き検証が必要です。

考えられる誤差

「本来描かれるべき真の散布図」に対して、バラツキを大きくさせてしまう要因を列挙しておきます。

  • 検査飽和の誤差: 8月ごろの検査数が限界を迎えていたことで、感染者数や前週比がピーク前は過小に、ピーク後は過大になっています。ただし、大きく見積もっても20-30%程度のズレではないかと思います。
  • 変異株比率の誤差: 感染者数全体に対するデルタの比率は、統計上の標本誤差を避けられません。仮に、統計的に理想的なスクリーニングができていないとすれば、誤差はさらに大きくなります。
  • 人流測定地点の限界: ここで用いた人流は、都内7箇所の繁華街や、新宿だけのものです。より幅広いデータを正しく用いれば、より実態に近づくはずです。
  • 人流読み取りの限界: 人流は公開されたグラフを人力で読み取っています。あってもせいぜい1-2%だと思っていますが、ブレはあるかもしれません。
  • 人流データの正しさの限界: いずれの公開データも、あくまでGPSなどを元にした推計値ですから、真の値とは言えませんし、実際、後日修正されることもあります。
  • 感染者数が少ないときの誤差: 10-12月にかけては特に絶対数としての感染者数が少なく、クラスター発生の偶然などで前週比がブレやすくなっています。
  • 年代別の感染者数、接種率による精度: 感染者数や接種率は年代ごとに推移が異なるので、本来はそれらを分けて分析した方が精度が高まると思われます。

感染者数の最大値の影響 (都民のびっくり度合い)

ついでに、5週予測で用いている、感染者数の最大値についても触れておきます。すなわち、「感染者数が多いと都民がびっくりして、人流を減らすなどの影響を経て、最終的に感染者数の前週比を減らす」というものです。心理的影響を数値としてくみ取っている割には、大きな流れをつかむくらいには十分役立つと言えます。

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なお、ここまで見てきた人流や感染者数との関係は、基本的には「従来株時の都医学研の研究が、デルタでも(ワクチンなどの追加要素を考慮すれば)当てはまりました」という結論になります。

デルタとオミクロンの前週比の関係

最後に、デルタの前週比が予測できれば、それに基づいた二段ばしごとはなりますが、オミクロンの前週比も推定できます。これには、貴重な先行事例となった海外のデータが役に立ちました。

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※ 詳細は割愛しますが、右肩上がりの曲線上に並ぶはずだと推定できるということです。

ちなみに、日本でのオミクロンのデータが蓄積されるにつれて、オミクロンと人流についての散布図も少しずつ描けるようになってきていますが、今回のオミクロンの検査飽和の程度はデルタ時よりずっと深刻なので、前週比に基づく予測を極めて難しくさせています。

参照