JN.1が作る、だらだらとした9.5波

年末の記事を受けての、中間報告です。 knoa.hatenablog.com

↓人流は予想通り、コロナ禍前と同様に、年が明けて大きく減らしています。直近も内閣府の元データを見る限り、15時の人流 は昨年10月レベルだと言えそうです。

●JN.1 は誤差が大きいですが年末時点で1.35倍。現時点で人流が昨年10月レベルに減っていることを考えると、1月末あたりで ●JN.1 単体は1.0倍を切るんじゃないかと期待していますが、1年前に比べると感染ワクチンによる免疫獲得(下方圧力)が少ないので、人流減による下方圧力を受けてもなお、しぶとく1.0倍を上回り続けることも懸念されます。その場合でも、他の変異株は1.0倍を切るはずなので、2月以降、感染全体としては減少するか、たとえ増えるにしても、だらだらした推移が続くことが予想されます。

愛知県が独自に第10波を宣言しましたが、次に大きな波が来たときに、県によって10波だったり11波だったりするのはまぎらわしいですね。もっとも、ナンバリングもわかりにくくなってきているので、単に「2024年春の波」などと呼んだほうがいいのかもしれません。

参考グラフ:

そのほか、各種グラフ(更新は不定期) f.hatena.ne.jp

元データ:

変異株 JN.1 が日本で大きな波を作ることはないよ

※ 1月19日、新しい記事を書きました。 knoa.hatenablog.com


これまでとれからの感染状況について、ごく簡単にまとめておきます。

感染の波ができる仕組みについては、第9波が「ゆるやかな大波」になる懸念 を参照してください。(これを最初に読んでおかないと、ピンと来ないかも)

直近で ●JN.1 が週あたり約2倍のペースで増えています。 しかしグラフには記載していませんが絶対数としては少なく、年明けまで高い前週比をキープしても、感染者数全体として大きな波を作るほどではありません。

またその ●JN.1 も、おそらく11月までの環境下(人流量や免疫量)では1倍前後の前週比だったと思われます。前週比が1倍→2倍になった要因は、ひとえに年末の人流増(感染機会増)です。(免疫の減衰は、この短期間ではわずかです)

今後は、人流が2019年のような推移を繰り返すとすれば、年明けには人流は11月ごろの水準まで落ち着くことが予想されます。加えて、少しずつでも感染やワクチンによる免疫も蓄積されますから、●JN.1 の前週比も、1倍前後・以下に落ち着くことが期待できます。

その後、4月にかけては少しずつ人流は増えるかもしれませんが、「仮に感染が増えれば、免疫の蓄積で前週比には下方圧力が働く」ことから、結局のところ、少なくとも日本の免疫環境下において、●JN.1 が大きな波を作ることはないと言えます。

あえて、これから大きな波になる要因を挙げるとすれば、

  • テレワークが衰退して、人流の絶対量がコロナ禍前くらいまで回復していく
  • ●JN.1 よりさらに強力な変異株が現れる(今のところ見当たりません)
  • 今流行中のインフルエンザが落ち着いて、学校での感染対策が緩む

といったところですが、当面その心配はないでしょう。(学校が緩んで感染が増えても、すぐに引き締めることができます)

参考グラフ集:

むしろ今はインフルエンザが流行ってます。

そのほか、各種グラフ(今後、更新は不定期になります) f.hatena.ne.jp

元データ:

第9波のこれまでと、これからの見通し

※ 12月30日、新しい記事を書きました。 knoa.hatenablog.com


見出し太字赤字だけを流し読みしても、だいたい要点はつかめます。

5月8日に書いた第9波の記事から3ヵ月が経ち、8月15日には高齢者ワクチンとXBB.1.16/EG.5.1について補足追記もしてありますが、改めてここでいったん中間報告しておきます。 knoa.hatenablog.com

変異株ごとの前週比で読み解く第9波

前週比そのものについての詳しい解説は前掲の5月8日の記事を読んでもらいたいですが、このグラフの要点は以下の通りです。

  • 新しい変異株が現れては、人流減や免疫獲得などによって前週比を下げていく
  • 感染全体の前週比()は、主流となる新しい変異株へとバトンタッチされていく
  • 第9波は、XBB系の前週比のゆるやかな下落に、途中からEG.5.1(通称: エリス)が加わって作られている

(2023だけ再掲) 前週比に着目すると、今後の中期的な変動は以下の要点にまとめることができます。

  • 個々の前週比の下落ペースは、もうしばらくゆるやかに下がり続けるでしょう。EG.5.1が存在しなければ、(台風とお盆の影響を別にしても)8月中には全体の前週比が1倍を切るはずだったと言えます。
  • 感染全体の前週比()は、XBB系からEG.5.1へとゆっくりバトンタッチされつつあり、第9波の収束を先延ばしにする要因となります。(なお、EG.5.1というのはXBB.1.9.2.5.1の別名なので、もともとはXBBの仲間です)
  • 9月20日には全年齢を対象としたワクチン接種が始まるので、その接種規模次第で、個々の前週比の下落が早まることが期待できます。
  • いっぽう秋から年末に向けては、毎年人流が増える傾向にあるので、こちらは前週比の上昇圧力となります。ただし、その人流増の理由が「たまたま3年連続して秋にいったん感染が落ち着いたため」だとすれば、今年の秋の感染状況の落ち着き度合い次第で、人流がそれほど増えない可能性もあります。

(2023だけ再掲) で、結局のところ具体的に感染者数の波はどうなるのよ?という話ですが、

  • 9月までは急増も急減もなくゆるやかな動きが続き
    (個々の前週比の下落とEG.5.1へのバトンタッチ上昇がせめぎあう)
  • 10月には全年齢ワクチンの効果で減少に向かうも
    (ただしワクチン接種がどれだけ進むかは読みにくい)
  • 年末にかけて減りきることなく再び増加に転じる
    (人流の伸びに加えて新しい変異株の登場もありうる)

といった流れになるとみています。大まかに言って、中規模な蔓延が続くでしょう。途中の「へこみ」が小さければ、年末にかけての大きなうねりを(第10波ではなく)第9波としてまとめて呼ぶことになるかもしれません。過去2年連続で、たまたま変異株とワクチンのタイミングが重なって「お盆明けを過ぎれば急減する」という体験をしましたが、今年は状況が違います。

(全体を再掲) 秋接種に向けて用意されたワクチンは2500万回分で、これはおおむね5月からの高齢者向けワクチンの実績と同じ規模です。グラフで言うところの「緑の山」は、昨年の秋冬に比べるとかなり小くなると言えますが、感染者の数だけで言うと若者が大半なので、秋接種の対象が主に若者になるなら、前週比を減らす効果は昨年と同じくらい期待できる可能性もあります。しかし、2500万回のうち実際にどれだけ接種されるのかは、今後の政府や自治体の取り組みによる部分も大きいでしょう。個人にとってのリスク対策だけでなく、社会全体としての「前週比を下げるには、感染するか、ワクチン打つしかないのよ」という世知辛い現実を、国民にわかってもらうのはなかなか難しいかもしれませんが。(マスクや人流減でも下がりますが、「マスクや人流減はいつまでも続けられない」というのもまた、いっぽうの現実だと思います。それと、マスク着用では前週比が例えば1.1から0.9へと一定の幅で「下がる」のであって、着用率100%を維持してもそのまま0.8, 0.7...などと「下がり続ける」わけではありませんし、逆に着用率ゼロを維持しても、前週比が「上がり続ける」わけでもありません。人流も同様で、人流50%を維持しても「下がり続ける」わけではありません。でも感染やワクチンなら、それこそインフルエンザと同様に、世知辛いですが年に一度など免疫を獲得し続けることができますね)

(全体を再掲) また、新しい変異株の登場の有無も大きな要因です。直近に現れたGK.1.1とHF.1は、国際データベースを参照する限り確かに感染力が高いようですが、今の段階での日本における前週比は統計区分上の乱れの可能性もあり、まだ評価できません。しかし、これまでの登場ペースを考えると、新しい変異株の登場は当然ありうると考えておくべきです。国内の変異株のデータ公開は、精度に不満はあるもののだいぶ整備されてきたので、今回のような前週比グラフによって、1-2ヵ月程度の中期的な見通しは今後とも立てていきやすいと思います。

いっぽう、人流の増減が感染状況とはほとんど連動しなくなったことと、台風などの突発的な影響の大きさもわかってきたこと、そして5類化以降、得られるデータが変わってきたことで、相対的に週単位の短期の予測はしにくくなっています。(そもそも短期予測への需要も減っているでしょう)

9月3日追記: この前週比のグラフは、下記の9月1日(金)の最新版では人流増減率も追加して、よりわかりやすくなっています。(そして、HF.1が「それほどでもなかった」ほか、GK.1.1は割合が5%に満たなくなったので、いったん外れました) グラフ自体は以下のURLで毎週金曜に掲載予定ですが、人流との関係についても含めた詳しい解説記事は、いずれまた書きたいと思います。
https://f.hatena.ne.jp/Knoa/COVID-19/


参考グラフ集

1日単位に直したモデルナ推計です。これは人によるかもしれませんが、祝日の影響で7日単位でデコボコしてしまうモデルナ発表の7日平均(折れ線)よりも、1日単位(棒)のグラフのほうが、私の目には見やすいです。海の日やお盆の後のへこみも、1日単位では不自然さがなくなります。


イギリスと日本を比較した4月の記事でも考察しましたが、陽性率と発表感染者数の関係からは、イギリスのように「陽性率は高いのに感染者数はあまり増えなくなっていく(グラフが下方向へ傾いていく)」という現象は今も起きていません。すなわち日本では5類化以降、第9波になってもなお、「ちゃんと検査しに来る人の割合」には大きな変化がないように見えます。(モデルナの感染者数の推計が陽性率を元にしている場合はこのグラフは無意味な逆算になりますが、モデルナは診断された患者の実数を元に推計しています)


2022年初からの推移を都道府県別に振り返ってみると、波のピークにはかなり大きな地域差があることがわかります。人流やワクチン接種率、感染免疫といった基本的要素だけでなく、新しい変異株がどれだけ早くに流入して広まるか、それがたまたま人流の多い時期に重なるかどうかといった運の要素も大きいので、注意が必要です。また、コロナは若者ほど感染率が高いので、同じ100万人あたりの人数でも、人口の世代構成が若いと数字は大きくなりやすいと言えます。


定点観測は最新の期間が8月14日(月)-20日(日)の7日間なので(9月2日更新: その翌週の期間も含めた最新グラフに差し替えてあります)、お盆の減少と明けてからの反動が混ざっています。また都道府県別の前週比は、沖縄から九州を北上した台風6号、関西を通過した台風7号、そしてお盆の影響が顕著に出ています。台風の突発的な影響の大きさについては、昨年も検証しています


(9月2日更新: 熊本県のデータが間違っていたので修正しました。前掲の各グラフも差し替えてあります。なお、私ではなく熊本県厚労省による間違いです)
たびたびニュースに出てくる「1医療機関あたりの報告数」を表す定点観測の値ですが、都道府県が定点に選ぶ病院の規模は基準もなくバラバラなので、5月8日までの公表値を元に計算すると、各県の定点値の重みには3倍を超える格差があります都道府県も、厚労省も、マスメディアも、専門家さえも、そのことを意識せずに一律の値として扱ったり、県同士を比較したりしていますが、空恐ろしくなります。

なお本記事では、5月7日までの最終4週の平均値を用いて、定点あたりの感染者数を定数化しています。


累計のワクチン接種回数は、高齢者の人口比率を考慮してもなお、沖縄だけ明らかに少なくなっています。その分を、感染による免疫で埋め合わせをしている状況です。また、同じ感染規模でも医療への負荷が高くなりやすいと言えます。


入院者数と医療の逼迫度合いは、都道府県ごとに人口補正しても入院基準や医療体制の格差が大きいので、東京都と沖縄県を取り出して考察していきます。

東京の第9波では、高齢者向けのワクチン接種が早期に進んだおかげなのか、はたまた5類になって入院基準が変わっただけなのか、ともあれ当初は入院者数がかなり少なめに推移してきましたが、8月に入ってからは感染規模に比べても急に増えてきました。医療逼迫の事実上の目安である入院4000の壁が、5類になった今も同じ水準で存在しているのかどうかわかりませんが、安心していられる状況ではなくなりつつあります。

いっぽう沖縄は第9波が収束しかけてはいるものの、ピーク時の医療崩壊の度合いが強烈だったことがわかります。第9波の感染者数に対しては入院者数が多すぎる気がするので、先の陽性率のグラフで触れた「ちゃんと検査しに来る人の割合」については、沖縄に限っては検査しない人が多かった可能性はあります。(検証したいところですが、モデルナの陽性率は全国値しかなく、沖縄だけのまとまった陽性率データはなさそうです)


ここで紹介したもののほか、各種最新のグラフはそれぞれ週に一度のペースで更新しています。
https://f.hatena.ne.jp/Knoa/COVID-19/


参考リンク集


おすすめの記事

knoa.hatenablog.com knoa.hatenablog.com

どうしてゲノム解析予算は効率的に使われなかったのか?

東京都は昨年7月には月間3万5000件、年間で17万件というめちゃくちゃな量のゲノム解析をしていました。
https://www.hokeniryo.metro.tokyo.lg.jp/kansen/corona_portal/henikabu/screening.files/genomu0505112.pdf

それがいまや、週100件規模にまで削減されてしまいました。※1※2
https://www.hokeniryo.metro.tokyo.lg.jp/kansen/corona_portal/henikabu/screening.files/genomu0506292.pdf

※1 上記URLは毎週廃棄されるので、下記から「ゲノム解析結果の内訳[週別]」をたどってください。
https://www.hokeniryo.metro.tokyo.lg.jp/kansen/corona_portal/henikabu/screening.html
※2 ちなみに、この過去数週間にわたる週別の内訳は、私が都に開示請求した結果、Web上でも公開されるようになったものです。都への開示請求は厚労省に比べて圧倒的に対応が早かった。


これは、5類になったから削減された面もありますが、そもそも解析数の目標が感染者数に対する比率で定められていたことが根底にありました。

統計学の基礎的な知識から言えば、このような「感染規模に応じたゲノム解析」は極めて無駄で、むしろ流行していても沈静化していても毎週1000件を粛々と解析するほうがずっと有用※3です。(都の担当者に問い合わせたところ「厚労省の通達が感染規模に対するパーセンテージで示されているので」と答えたので、現在厚労省にパーセンテージの目標※4※5※6を示すに至った経緯を開示請求中ですが、進展が遅く、いつになるやら)

※3 総務省統計局 - 標本調査とは?
https://www.stat.go.jp/teacher/survey.html
※4 厚労省 - 新型コロナウイルス感染症の積極的疫学調査におけるゲノム解析及び変異株PCR 検査について(要請)
https://www.mhlw.go.jp/content/001051969.pdf
※5 正確には率と絶対数の両方が目標として示されているが、地方自治体の担当者レベルで「統計的な意義を理解して、絶対数のほうを最低限の条件として解釈する」ことは難しいし、実際に都の担当者は理解していなかった。
※6 開示請求した甲斐があったのか、他からもツッコミがあったのか、5類化以降は、パーセンテージ目標がなくなり、「都道府県ごとに、100 件/週程度を目安」に改善された。Q&Aとして「新規感染者数が 100 件/週以下の場合には、可能な限り全例をゲノム解析することが、病原体の動向把握のために望ましい」とまで記載されており、後述する私からの開示請求内容にぴったり寄り添う形となっている。しかし月間3万5000件が可能だった東京都にしてみれば、あまりに低すぎる目標だし、逆に多くの道府県では5類化前でさえ100/週に遠く及ばなかったので、5類化以降、実際に100/週の解析ができているかは今のところ不明。(それでも本当に47都道府県で4700/週の規模が担保されるなら、東京都など個々の精度には難があるものの、日本全体としては大きな改善)
https://www.mhlw.go.jp/content/001092227.pdf


というわけで、私の心の叫び。

  1. 統計学的に、誤差をできるだけ小さくする観点から、感染者数に対するパーセンテージではなく絶対数を基準にすべきだった
  2. 予算の効率化の面でも予算の見通しの面でも、やはりパーセンテージではなく絶対数基準(毎週1000件など)が優れるはず
  3. 人的な労力や効率の面でも、単純に繁忙期と閑散期を作るのは好ましくないし、まして猫の手も借りたかったはずの流行時に無駄に大量解析する余裕が本当にあったのか

ふしぎ!


そして実際に厚労省に開示請求した際に添付した文章が、こちら:

健 感 発 0 2 0 5 第 4 号
令 和 3 年 2 月 5 日
令 和 5 年 2 月 3 日 一 部 改 正
新型コロナウイルス感染症の積極的疫学調査におけるゲノム解析及び変異株PCR 検査について(要請)
https://www.mhlw.go.jp/content/001051969.pdf

上記文書について、「全国の変異株の発生動向を監視するため、ゲノム解析に関して、都道府県ごとに、実施率を5-10%程度又は 300-400 件/週程度を目安に、自治体主体で実施していただくようお願いします」とある。
このうち、「実施率を5-10%程度又は 300-400 件/週程度」と要請した数字的な根拠や、外部に諮問したのであればそのやり取りの内容など、当該部分の表現の決定に至る経緯を示す一切の文書。

-背景-

本来、統計学的な見地から言えば、ゲノム解析の実施件数は実施「率」ではなく実施「件数」を最低基準として担保すべきところだが、例えば東京都は感染者数の多い時期(2022年7月)に週当たり8000件もの解析を行いながら、感染者数の少ない時期(2023年3月)には週当たり300件程度に落ち込むなど、実施「率」に偏った運用がなされている。

東京都の過去1年間の解析数を平均すれば、同じ予算で1年間にわたって毎週3000件以上の解析ができていたはずであるが、感染者数の多い時期には統計的な費用対効果の薄い無駄遣いをし、感染者数の少ない時期には極めて大きな統計的な誤差を生んでいるのが実態である。また、保健所の繁忙状況的にも、感染者数の多い時期に多数のゲノム解析を行うのは効率が悪い。

斟酌するに、統計的な見識のある専門家からは、より適切な目標数値の表現が打診されたはずだが、それを厚労省の担当者が行政文書として表現する際に、そうした統計的見知の機微が失われてしまったのではないか。

なお、東京都の福祉保健局の担当者にゲノム解析数について直接尋ねたところ、やはり厚労省の「5-10%」という比率目標が、下限ばかりでなく上限としても(!)意識されているようであった。また、厚労省の「実施率を5-10%程度又は 300-400 件/週程度」という表現を、統計的な見知に基づいて適切に解釈するといった知識や裁量もないように感じられた。東京都でこれなのだから、他の都道府県の担当部局も、同様だろう。

予算的な制約も考慮するなら、「自治体の人口規模に応じて、感染者数にかかわらず人口100万人当たり200-300 件/週程度。感染者数がそれ以下であれば、可能な限りの全数」などと表現するのがよかったはずである。

以上。

厚労省への開示請求の履歴:
4月07日 請求
5月08日 開示期限の延長通知(6月6日まで)
6月06日 (スルー)
7月03日 ←いまここ (4月7日以来 ステータス : 審査中 のまま)
7月3日、記事を書いた後に思い立って、厚労省に電話してみた。開示期限の延長は請求日から60日間まで、かつ1度だけと定められているせいで、60日を過ぎても2度目の延長通知ができないらしい。バカバカしいルールをしぶしぶ遵守している状況とのことで、担当者自身も嘆いていた。ともあれ、少なくとも忘れ去られているわけではないことがわかって安心した。


(参考)
東京都への開示請求(前掲の週別内訳)の履歴:
3月14日 請求
3月14日 担当者から開示内容の確認の電話
3月15日 担当者から開示内容の確認の電話(2回目)
3月20日 開示決定通知
3月23日 Webでも公開される
4月20日 担当者からフォローの電話

東京都福祉保健局、有能すぎない?


関連: knoa.hatenablog.com

第9波が「ゆるやかな大波」になる懸念

(8月25日、第9波の中間報告となる記事を書きました) knoa.hatenablog.com

(8月15日、以下の3点を補足追記)

  • 記事公開時点の5月8日において、「今後のワクチン接種が当分ほとんど見込めない」というのは、まったくの誤りでした。5月8日以降に始まった主に高齢者を対象とした6回目接種は、かなり順調に進んでいます。感染の大半を占めるのは若者なので、感染規模をそこまで抑制するわけではありませんが、入院の大半は高齢者なので、入院者数の低減には大きな効果をもたらしています。
  • XBB.1.16の感染力は、既存のXBB.1.5やXBB.1.9.1などに比べて、そこまで強くありませんでした。ただしその後、6月以降に増えだしたEG.5.1は、既存のXBBより頭ひとつ抜きん出ているようです。既存XBBだけであれば本来そろそろ前週比1倍を切るころだったはずが、EG.5.1が登場したせいで全体としての1倍切りはしばらく持ち越しになった、というのが今の状況です。
  • なかなかしっかりした記事を書けていませんが、役に立つグラフは随時更新しています→ https://f.hatena.ne.jp/Knoa/COVID-19/

(追記ここまで)


見出し太字赤字だけを流し読みしても、だいたい要点はつかめます。

本記事は、第9波の具体的な予測ではなく、過去の波に比べてどのような点が違うのかを、大局的かつ理論的な面から紹介するものです。


第9波もそのうちまた倍々ゲームになるの?

いいえ。おそらくは。

悲観的な人は、今回の第9波でも毎週「倍々ゲーム」のような急増期が来るのではないかと心配しているかもしれませんが、いまのところその心配はありません。下図に示す通り、第9波の●新興株XBBの前週比は、それほど大きくありません。第6波(BA.1)や第7波(BA.5)の時と違って、今回は水面下で倍々に増えている変異株は存在しないのです。

ゴールデンウィーク明けに限ってはリバウンドで前週比が大きくなるかもしれませんが、それはあくまで一時的なものです。

※ 後述しますが、倍々「近く」になるかもしれない変異株は、残念ながら存在しています。


感染の波ができる仕組み

感染の波ができる仕組みを、おさらいしておきましょう。まず初めに、免疫が存在せず、人々の行動も毎日まったく変わらない世界を考えてみます。そうすると当然、今週も来週も何も変わらないわけですから、今週の感染者数の前週比が1.2倍なら、来週も1.2倍になります。(当たり前ですが「今週の感染者数が1200人なら、来週の感染者数も1200人だ」ではありません。同じになるのは前週比であって、感染者の人数ではありません)

しかし実際にはもちろん、毎日まったく同じ日々を過ごしたとしても、感染すれば寝込む人もいるし、回復すれば免疫を身につけているので、すぐにまた感染する確率は低くなります。すると、新規の免疫のおかげで前週比は少しずつ小さくなっていくわけです。これが前週比の大原則。どれだけ過去に免疫を蓄積していようと、先週と同じ免疫状態では、先週と同じ前週比のまま。あくまで「新規」の免疫獲得が必要です。また、個々の変異株の前週比が下がる中で、拡大初期に●合計の前週比が上がっていくのは、あくまで下がり続ける●新興株の前週比に近づいていった結果、そう見えているだけです。

ただし、現実はもちろん、このような単純なグラフ通りにはいきません。前週比に影響を与えるもうひとつの大きな要因が、人々の行動です。もともと人流と表現することが多かったですが、今はマスク着用率なども含めて、人々の行動と表現したほうが適切でしょう。

飲み会の開催人数が4人から6人に増えれば、その場で感染する人数も多くなりやすいのは当然ですね。マスクを外すのも同様です。全体として先週よりも人々の行動が活発になれば、今週の前週比は大きくなるのが道理です。(ただし前週比が大きくなるというのは、必ずしも感染者数が増えるという意味ではありません。前週比0.6倍だったものが0.9倍になるだけなら、感染者数は減り続けるでしょう)

結果として、本来は免疫によって「少しずつ小さくなるはず」だった前週比が、人流増によって逆に上向いたり、人流が急減すれば前週比も少しずつではなく大きく急落したりすることがあるわけです。

その観点では、新型コロナが5類に変更されて人々の行動も前向きになっている中、人流は今後しばらく、増える可能性はあっても、大きく減ることは考えにくいと考えるのがふつうでしょう。しかし、実は現実はそうではなく、●2023年の人流は年明けから少しずつですが減少傾向にあります。この理由はよくわかりません。意外ですね。

2023年5月8日 東京都新型コロナウイルス感染症モニタリング資料より(5月9日追記: 5月8日公開の最新版に差し替えました)

まさかこのままずっと減少が続くことはないとは思いますが、今後の人流が増えるか減るか、はたまた今の水準を保つのかは、分からないというのが謙虚な解釈でしょう。以前は感染が拡大すると人流が減る傾向が顕著でしたが、今はそんな時代ではなくなっています。(なお、東京ではすっかりテレワークが定着しているので、例え増えてもコロナ前の◎2019年の水準にいきなり戻ることはないと思います。また、毎年ゴールデンウィーク明け直後は人流の回復がやや低調ですが、それぞれ当時の感染状況があった上での傾向なので、今年どうなるかはわかりません)

いっぽう、マスク着用率は、元が100%近かったですから、基本的には減っていくものと思われます。ただし、感染が拡大すれば自然と着用率が増えることはありえますし、仮に医療逼迫の恐れが生まれれば政府にはもう一度マスク着用を推奨するという切り札もあるので、その時は着用率だけに留まらず、人々の行動全般に与える心理的アナウンス効果も大きいかもしれません。


第9波にはワクチン接種による支援がない

実は先に紹介した波の一生のイメージ図では、まだ触れていない要因がありました。それがワクチン接種による獲得免疫です。もともとワクチンは、発症や重症化を防ぐ効果に比べれば感染自体を防ぐ効果は低いのですが、それでも集団全体の前週比に影響を与えるには十分な威力があります。

改めて、例えば「感染規模を上回る1日3万回のワクチン接種が、期間を通して継続される」ものとして計算し直すと、イメージ図は次のようになります。●ワクチン接種の効果で、感染による免疫だけの時よりも速やかに前週比が下がっていくことがわかります。

実際のワクチン接種は感染規模が大きいほど人々が接種を希望しやすいという側面もあり、「1日3万回」のような一定ペースではまったくありませんが、過去の大きな感染の波は、同時期に感染以上に大規模なワクチン接種による支援を受けていました(ただし本来は同時期に支援するより、イギリスのように感染拡大するより前に支援した方が効率的です)

その大規模なワクチン接種が、今回はほとんど見込めません

すると、ワクチン接種だけでなく人流減にもマスク着用増にも頼りにくい第9波では、前週比を下げる要因が主に感染による免疫だけとなり過去の波に比べるとなかなか前週比が下がらず、「ゆるやかな大波」になる懸念があるというわけです。


免疫の威力はどんどん増していく

いっぽうで、楽観的な見方として、「免疫の天井に近い」という可能性はあります。極端な例かつ感染確率をゼロイチで捉えた理論上の話ですが、100万人のうち10万人が免疫を獲得しても、感染しうる人々は90万人残っていて元の0.9倍にしか減らないのに対して、100万人のうちすでに90万人が免疫を持っているなら、残り10万人のうち追加で2万人が免疫を獲得するだけで感染は0.8倍にできます。第7波より第8波、第8波より第9波のほうが、少ない追加免疫でも大きな効果が得られるはずだとは言えるでしょう。

ただし、免疫の天井効果は天井近くまで免疫が蓄積されればされるほど強くなりますが、少なくともイギリスのように1年も前から感染対策を緩和して感染しまくった国に比べれば、日本人の蓄積はまだまだだとも言えます。


さらに新たな変異株は現れるのか

はい。そのうち目に見えてくるでしょう。

今増えているXBB.1.5やXBB.1.9.1などの新興株とは別に、インドで増えたさらに少しだけ感染力の強いXBB.1.16が、日本でも既に広まっています。国際データベースGISAIDによれば日本でも既に306例が報告されていて、比率で言えば5月の現時点で感染全体の20%ほどとも推計できるレベルなので、限られた地域だけで運良く収束するといった可能性は、もうないでしょう。ただ、いまのところ、国立感染研による国内の市中を対象にしたゲノムサーベイランスには含まれておらず、おそらくまだXBBなどの他の系統として、ひとまとめにされてしまっているものと思われます(新しい系統を区分し直すのが遅くなったことは、過去にもありました)。逆に台湾ではXBB.1.16が「日本から」流入したことがニュースになっているくらいなので、日本の警戒感の薄さが気になります。

(追記) …と、書いて本記事を公開した矢先に、都の変異株報告書にXBB.1.16が含まれるようになっていました。1週分だけなので、前週比を推計することはできませんが、4月17日までの時点で都の感染全体の14%を占めています。現時点では少なくとも20%、多ければ30%に達していてもおかしくありません。もっとも、統計誤差が非常に大きいので、日本全体の統計にも反映されるのを待ちたいところです。

なお、それ以外の強力な変異株は、世界に目を向けても、いまのところ見つかっていないようです。ただしもちろん、いずれは現れるでしょう。


イメージ図を描くシミュレーションに用いたデータ

波の一生を形作る各要因を紹介し終えたところで、イメージ図を描いた元データを示しておきます。ただしあくまで、大きな要因のひとつである人々の行動が、期間を通してまったく変わらないというという前提なので注意してください。

既存株
前週比
新興株
前週比
合計の
感染者数
前週比
既存株
週平均
新興株
週平均
合計の
感染者数
週平均
ワクチン
接種数
週平均
1.00 2.00 1.05 1000 100 1100 30000
0.97 1.95 1.06 975 195 1170 30000
0.95 1.90 1.11 926 370 1296 30000
0.93 1.85 1.19 857 685 1542 30000
0.90 1.80 1.30 771 1234 2005 30000
0.87 1.75 1.41 675 2159 2833 30000
0.85 1.69 1.49 571 3657 4228 30000
0.82 1.63 1.52 466 5966 6432 30000
0.78 1.56 1.50 363 9295 9658 30000
0.73 1.47 1.44 267 13662 13929 30000
0.68 1.36 1.35 182 18633 18815 30000
0.62 1.24 1.24 113 23136 23249 30000
0.56 1.11 1.11 63 25707 25770 30000
0.49 0.98 0.98 31 25309 25340 30000
0.44 0.87 0.87 13 22115 22129 30000
0.39 0.79 0.79 5 17368 17374 30000
0.36 0.72 0.72 2 12489 12490 30000
0.34 0.67 0.67 1 8379 8379 30000
0.32 0.64 0.64 0 5329 5329 30000
0.30 0.61 0.61 0 3251 3251 30000

設定条件

※ 人々の行動が期間を通してまったく変わらないという仮定。
※ 感染者数やワクチン接種数は週平均なので、週合計では各7倍となる。
※ 表やグラフに示しているのは実際の感染者数を想定した「2倍」にする前の、発表の感染者数。
※ 実際の免疫は個人単位では有無ではなく量であり、変異株やワクチンの組み合わせごとに効果が違うなど、とても複雑。また、ここでは免疫の減衰の影響も考慮していない。


現実の日本

そしてこちらは、現実の日本全体の主な変異株ごとの推移です。にぎやかなグラフになってしまいましたが、おおむね、「新しい変異株が登場しては、前週比を下げていくという傾向をつかんでいただけると思います。また、このように感染総数ではなく変異株ごとに見るなら、「前週比が右肩上がりになるのは、人流が回復した時だけである」ということもわかるでしょう。前週比を上げる要因としては免疫の減衰もありますが、人流に比べて急には変化しないのです。(減衰が新規獲得の影響を上回るとすれば主に感染が落ち着いている時ですから、結局それは人流回復のタイミングと同じになりやすいという事情もあります)

まとめると、

個別の変異株を単体で見た時の、前週比を下げる要因は主に

  • 行動変容(人流の減少など) ←第9波では予測しがたいが、マスク再推奨の切り札はある
  • ワクチン接種による免疫 ←第9波では期待できない
  • 感染による免疫 ←第9波では免疫の天井に近い効果が期待できる

個別の変異株を単体で見た時の、前週比を上げる要因は主に

  • 行動変容(人流の増加やマスク着用率の減少など)
  • 免疫の減衰

となります。

このほかには季節要因も考えられますが、割愛します。(悪天候や台風、または人為的な帰省や歓送迎会のようなものを除けば、短期ではなく中長期の影響になるはずです。また、季節性のはっきりしているインフルエンザよりは、影響は小さいでしょう)

なお、今の第9波を作りつつある●XBB.1.9.1は、まだ誤差は大きいものの、平均すると前週比1.4倍程度でスタートしています。2倍や4倍でスタートしていた過去の変異株に比べれば、前週比1.0を切るまでの道のりは本来短いと言えますが、低空飛行でも前週比1.0倍さえ上回り続ければ、第8波のように緩やかな大波となります。逆に絶対数が大きく増えないうちに1.0倍さえ切ってしまえば、あとは0.9倍になるまでゆっくり何週間かかろうが、大した脅威ではないでしょう。どちらになるかは、とても微妙なラインだと思います。

いっぽうで、先のグラフにはないですが、日本でGISAIDデータベースに報告されているXBB.1.16は、まだ誤差は非常に大きいものの、平均すると前週比1.8倍程度のスタートを切っているようです。今後は●XBB.1.9.1よりも、こちらが主力となる可能性が高いでしょう。下記に、先ほどの感染研のデータとは別のGISAIDのデータを元にした、●XBB.1.16入りのグラフを参考までに示しておきます。(感染研によるグラフより統計誤差が大きめです)

5月8日以降は感染者の総数がわからなくなってしまいますが、5月8日までのゲノム解析はまだ終わっておらず、今後しばらくは前週比が推計できるデータが蓄積されるはずなので、注視していきたいと思います。


第9波のシミュレーション

最後に、東京都での第9波の初期環境を4月1週目とみなして、

設定したシミュレーションを示します。ただし、あくまで人々の行動は一定という前提です。(連休なども考慮されていません)

結果は7月に週平均3万3000人のピークとなりました。しかしピークの時期や規模は設定条件次第で大きく変わるので、この推移はごく一例となります。特に、第9波の主力になると思われる●XBB.1.16は、東京に限定したデータが存在せず、日本全体での比率を無理やり当てはめていますから、現段階の推計は当てになりません。また、現実の人流も4月1週目からはやや減少傾向で推移していますから、既に下振れしているとも言えます。

下記にGoogleスプレッドシートを用意したので、興味があればご自身のGoogleドライブにインポートしたり、ダウンロードしてからExcelなどで、数字をいじることができます。先述の条件では合計ピークが3万3000人となりましたが、●XBB.1.16の初期値の影響が極めて大きい(前週比1.8倍ではなく1.6倍スタートなら合計ピークは1万8000人になる)ことや、個人にとってのワクチンによる感染を防ぐ効果が例え30%と低くても、ワクチンの支援が少ないからこそ感染規模が大きくなっている(毎日2000回ではなく毎日3万回=期間中に都民の30%が接種なら合計ピークは1万人になる)こと、また「最初の時点で免疫を持っている人」による免疫の天井効果は、かなり天井に近くないとなかなか大きな効果にはならないことなどを、確認してみてください。

また、こうしたシミュレーションを上にも下にも大きく変動させる威力を持つのが、人々の行動でもあります。(スプレッドシートでは変動させることもできます)


あとがき

今回は短中期的な予測ではなく、大局的かつ理論的な面から、これまでの波と第9波の仕組みを紹介しました。

結局のところ、医療さえ逼迫しなければ(東京都の入院が実質限界の4000を超えなければ)、あとは仕方ないという気持ちでいますが、毎回「もう今度は大丈夫では?」と期待しておきながら、裏切られているので、油断できません。入院数は5類移行後も継続して報告されるようですが、5類になることで入院4000の実質限界は変わるのでしょうか?どちらの方向に?

前回の記事に追記して気になったのは、イギリスはどの時期に調査しても全国民の3%が後遺症を患っているという状況だということです。1%が回復しても、別の1%がまた患うといった調子です。こればかりは、良い薬ができることを切に願いたいと思います。

前回記事: knoa.hatenablog.com

イギリスはどのように「コロナと共に」生きているのか

見出し太字赤字だけを流し読みしても、だいたい要点はつかめます。

(4月23日: 最後に後遺症についてのリンク集を追加しました)


イギリスの感染規模の推移を東京の人口に換算したものを、東京のものと縦軸を合わせて並べてみました。


イギリスの実態

イギリスでは、もはやほとんどの人は症状があっても検査していません。しかし、いわゆる●感染者数として発表される通常の検査とは別に、統計局による家庭訪問調査が長く行われていたために、●感染規模の実態はかなり正確に把握し続けることができていました。それに基づけば、過去最大のピークはオミクロンBA.2による1日15万人規模(東京の人口換算なので、文字通り東京なら1日15万人規模という意味)、最後の調査となった今年3月半ばの時点では1日5万人規模の感染状況だったと推計されています。(参考までに、韓国のピーク時は、推計ではなく実際に検査で陽性になった人数が東京換算で1日10万人規模でした)

しかし、イギリスはコロナ禍最初の拡大時とアルファによる第2波には大変な犠牲を払いましたが、ワクチン接種に加えて、累計で国民全員が3回ずつ感染するほどの圧倒的な免疫のおかげで、感染規模に対する医療の逼迫度合いは、●入院数を目安にすると東京に比べれば低く抑えられていると言えます。(●死亡は症状が重篤だった場合に加えて、高齢者の感染が増えると重篤性にかかわらず必然的に増えてしまう側面もあるので注意) もっとも、インフルエンザがコロナと同じ程度の規模で同時流行した今年1月には医療逼迫も報じられています。コロナ単体で見れば少しずつ入院規模も小さくなっているようにも見えますが、少なくとも当分は、一年中ずっとタチの悪いインフルエンザが流行しているくらいの感覚で共存していくのでしょう。

なお、入院率こそ減りつつありますが、オミクロン以降、ほとんどの人が検査しなくなった後になっても、味覚や嗅覚を除けば、コロナの各症状の発症率は変わっていません。むしろ、咳や喉の痛みは多くなっています


東京都の実態

他方、東京は「真の感染規模」を推計できる統計はないのですが、どれだけ大きく見積もっても、イギリスのように「発表の数十倍の感染者がいる」ことは考えにくいです。かと言って、「発表数がほぼ実態通りである」とも言えないでしょう

以下には、参考となる情報を列挙しておきます。

陽性率と発表感染者数の関係

陽性率と発表感染者数の関係を見ると、イギリスもアメリカも検査体制の整っていなかった●2020年の初期を除けば、おおむね●2022年のオミクロン以降、同じ陽性率(感染状況)でも検査人数が減っていくせいで発表される感染者数がどんどん減っていき、グラフが下へ傾いて行っています。対して東京のグラフはずっと同じ領域内を行ったり来たりしており、直近でわずかに残っているインフルエンザの影響を考慮してもなお、日本の「ちゃんと検査する率」は、率の数字はともかく、最初期を除けばコロナ禍を通じてあまり変化していないのではないかと推測できます。 下記は東京のグラフ

(4月26日追記: とは言え、検査する人が50分の1にまで減ってしまったイギリスでやっとこれだけの傾きになったのだと思えば、数分の1程度の減少ならグラフには現れにくい可能性はありますね。しかしそれでも、東京はむしろ過去の平均領域の中でも少し上の方に位置しているので、インフルエンザの影響を差し引いてもなお、やはり「ちゃんと検査する率」は、少なくとも大きくは変化していないのではないかと思います)

感染者数に対する入院数

いっぽう、●感染者数に対する●入院数の人数に着目すると、本来であれば感染やワクチンによる免疫力獲得と共に少しずつ改善されていくはずなのに、昨年末の第8波(BF.5)だけは感染規模に対して一転して多くなっていました。単純に考えると、第8波はそれ以前の波よりも「真の感染規模」が大きかった可能性が疑われます。これは、先ほどの陽性率との関係からの推測とは矛盾しますね。もっとも、オミクロン以降、感染者のうち、入院しやすい高齢者が占める割合が大局的に少しずつ多くなっているので、ある程度はそれで説明できるのかもしれません。もうひとつ、第8波の主力だったBF.5はほぼ日本でのみ流行した変異株なので、これがBA.5などよりわずかに病原性が強かった可能性も考えられます。(第8波については、死亡者数の増加についての考察はありますが、入院率についてはほとんど触れられていません)

抗体保有調査

また、過去の感染経験を示す抗N抗体保有調査が何度か行われていますが、イギリスの「今現在感染中かどうかを毎週大規模に検査する」調査とは違って、日本人の感染規模を推計するには十分な手がかりとは言えません。

時期 主体・対象者 累計発表感染者数との比較
2020年12月 4倍程度
2021年12月 兵庫県 2.6倍
2021年12月 同じ程度
2022年03月 同じ程度
2022年10月 広島県 0.7倍
2022年11月 献血 1.4倍
2022年12月 同じ程度
2023年03月 同じ程度

※ いずれも統計誤差は避けられないが、特に感染経験率の少なかった初期の調査ほど誤差は大きくなりやすい。
※ いずれも、感染しても抗体が作られなかった感染者や、抗体の減衰の影響があるので、「累計発表感染者数との比較」の値は、後期のものほど実際にはもっと大きい可能性がある。
献血者をを除いて調査対象者は無作為に選ばれているが「協力を承諾した」という偏りがあるので、特に初期ほど感染経験率が(おそらく)少ないほうに偏っている可能性がある。

後半の調査ほど、抗体保有者数と発表感染者数が一致していて、まるで「日本人はほぼ全員がちゃんと検査して感染者数として発表されている」かのように見えてしまいますが、抗体保有者数のほうが発表感染者数より少なかった広島県の調査が示唆するように、抗体の減衰の影響を大きく受けているものと思われます。たとえば、「全ての感染者が90日で抗体を失ってしまう」ような極端な条件では、最後の調査では「発表の5倍の感染者」が想定される計算になります。より正確に想定するには、抗体の減少率などを調べる必要があり、厚労省もどうやら最新2回分の調査でようやくそれを探ろうとしていた可能性もあるのですが、いまのところそのような分析発表はありません。もっとも、全ての感染者が90日で抗体を失ってしまうという極端な条件でさえ5倍に留まるのですから、これを上限としてもイギリスのような「発表の50倍の感染者」にはほど遠いと言えます。

無症状率

いっぽうで、倍率の下限の手がかりとしては、「無症状率」が使えるかもしれません。イギリスの調査から、真の無症状率はおおむね4割と想定できるのに対して、東京の調査では5-10%となっています。「症状があるのに検査しない人」がほとんどいないと仮定できるなら、無症状者で気付かなかったせいで検査しない感染者を逆算して加えると、「発表の1.6倍の感染者」が想定できます。実際には症状があっても検査しに来ない人もいるでしょうから、この倍率は下限と言えそうです


結局、東京の実態が発表の何倍なのか、ずばりの数字は分からないわけですが、最後にもう一度、冒頭のグラフを貼っておきます。


参考:

後遺症関連:(4月23日追加)


あとがき

これは個人的な観測範囲の印象でしかありませんが、欧米のYouTuberを見ていると、みんなめちゃくちゃ体調を崩してます。感染規模を見ればそりゃそうだろうとも思うわけですが、それが新しい日常なのでしょう。しかし「体調が悪いから今日の配信は休みます」程度の軽いものもあれば、最近でも39.4度の熱を出して検査で陽性になり「過去20年で最悪の日々を過ごした」とか、深刻な後遺症が数ヶ月も続いて緊急救命室に運ばれた例もあって、インフルエンザよりは、明らかに嫌な病気が増えちゃったよなぁとも思います。これから先、医療と変異株のイタチごっこが、人間優位で推移していくことを願っています。

東京の感染者数を5週間ぶん無理やり予測した (12月29日版)

まえがき

これまでの予測の大きな柱のひとつであった「感染者数が増えると、都民が自粛して人流が減る」という関係性が、特に第8波になってまったく破綻してしまいました。(感染者数が増えているのに、人流は減っていない)

厚労省の繁華街滞留人口資料より

また、国や都が発表している変異株のデータも、「多くの新興変異株が乱立している」「データ公開形式が整っていない・精度が悪い」などの理由で、予測に活用するには心もとない状況です。

しかし「減るのか増えるのかも分からない」というほど真っ暗闇というわけではないので、可能な範囲で予測を公開しておきます。


予測

ただし、下記のような無理のある前提に基づいています。

  • 感染が拡大しても、人流が高いレベルを保ち続ける
    医療崩壊が報じられるほどになっても人流が減らないというのは、予測としては悲観的。
    ※ 年末年始の人流は、過去4年分のJR東日本・東海・西日本の座席予約数(499万-190万-277万-337万)を参考にした。
  • 変異株を既存株と新興株の2つにまとめて単純化する
    ※ 本来は相対的に感染力の強いものに収斂していくはずなので、感染力の違うものをまとめると予測としては楽観寄りになりうる。
    ※ 「国立感染研が公開する東京都のゲノム解析」「都のゲノム解析」「都の変異株PCR検査」は、変異株系統の分類に統一性がないばかりか内訳もそれぞれ大きくズレているので、まだしも統計的誤差が少ないと思われる「都のゲノム解析」に基づいて計算した。

精度は過去の予測に比べて相当悪いはずですが、「ピークが2倍や半分にはならないだろう」くらいには思っています。

年明けの急増は極端に見えますが、これは休診明けのリバウンドによる影響が大きいためで、2年前の推移や、1年前の「オミクロンを除いたデルタ株だけ」の推移に近いです。

グラフに示したのは週平均でピークは3万3000人としていますが、具体的な1日単位のピークは1月7日(土)ごろ、または1月12日(木)ごろに4-5万人、その後は順当に減少に転じるという内容です。(年末年始をこれほどの規模の感染者数で迎えたことがないので、検査体制が需要に見合わない可能性もあります)

今回、人流は一定という前提なので、減少の原動力はワクチンや感染による獲得免疫になっています。


医療負荷

通常医療への影響は第6-7波を上回る規模になる可能性があります。というのも、感染がじわじわと増えてきた分、直近の医療負荷の蓄積が大きく、年末時点ですでに実質的な病床限界(4000床)に達しているためです。公称の確保病床は7000床を超えていますが、これが現実にどれだけ機能するのかは、懐疑的に見ています。

ひとつだけ良かったのは、今回は「ワクチンの接種時期が流行に(どうにか)間に合った」と言える点です。「前回接種からきっちり5ヵ月待ってもらう」という非効率を廃止し、期間を3ヵ月に改めたた成果だと思います。


新たな変異株

感染爆発している中国がゲノム解析を中止してしまい、未知の危険な変異株の発生に警戒しているところですが、いっぽうアメリカで急激にXBB.1.5が増えています。重症化リスクが増しているなどの報告はいまのところありませんが、新しい変異株が生まれ続ける現実と、これからも付き合っていくほかなさそうです。

※ 追記: XBB.1.5は既に日本でも1例だけ報告されていました。アメリカからの入国は基本的に素通しなので、流入は防ぎようがないと思われます。


他の予測


あとがき

第7波での予測結果は、こちらでご確認いただけます。 knoa.hatenablog.com

予測以外の各種最新のグラフは、こちらのページで毎日更新しています。 f.hatena.ne.jp

人流と前週比の比較画像を貼り付けて但し書きを連ねるだけの記事

比較画像がやっつけクオリティですみません。

要約: 人流のあからさまなピークは、必ず後の前週比として現れます。連休などの影響で見にくいけど、過去ずーっとさかのぼってもそうです。その上で、変異株や集団免疫によって、人流以上の大きな波が現れます。

前週比は人流の12日遅れでやってくる


厚労省の繁華街滞留人口資料のうち、東京の部分拡大を加工

前週比

  • 7日平均ではなく1日ごとの前週比であることに注意
  • 祝日明けとその翌週などのトゲトゲは無視する必要がある
  • トゲトゲ明けに数日続く緩やかなしわ寄せもできれば無視する必要がある

人流

  • 連休時などの減少は無視する必要がある(繁華街の人流は、他県への行楽などを反映しないので)
  • 昼間(ピンクや赤)の時間帯とよく合致する経験則がある
  • 神奈川・埼玉・千葉などの人流も本来は考慮すべきである
  • 本来「対象となっている7つの繁華街」だけで代表できるはずがないので(連休の人流しかり)、あくまで「東京では、幸いにも、未知なる真の指標との合致度が高い」という目で見る必要がある

短期と中長期の視点

  • 短期で急激に変動しうるのは人流だけなので短期予測の参考材料になる
  • 新たな変異株の増加は比較的短期間で前週比を「右肩上がり」にする
  • ワクチンや感染による免疫は中長期的に前週比を「右肩下がり」にする
  • オミクロン以降、人流と前週比のズレは12日だが、デルタ時は3週間だった


参考: 年末の人流

現状の人流を維持すれば急増は避けられるようにも思いますが、これまでの年末の人流傾向を鑑みると、年末に向けての国民心理がどちらに傾くかは予測の難しいところです。


厚労省の繁華街夜間滞留人口資料より部分拡大
※ 前掲の時間帯別とは異なり、こちらは「夜間」の滞留人口による「年ごとの比較」なので注意。


参考: 日本全体の変異株

海外で増えているBQ.1.1などの新興変異株は、日本ではまだ相対的に極めて少ないままです。その意味で、日本は世界の多くの国に比べると「まだ不安材料を抱えている」と言えます。もっとも、日本では「既存のBA.5系統より少しだけ感染力が強いBF.5」が増えているおかげ(?)で、BQ.1.1などとの感染力の差が相対的に小さく、「強烈な変異株が急激に増えて、人々が人流を減らすより早く感染しまくってしまう」といういつものパターンは、やや穏やかなものになるかもしれません。とはいえ、タイミング的にはBQ.1.1などがそれなりの絶対数を確保したあたりで年末年始を迎えるはずで、1月の感染拡大は避けられないでしょう。


展望: いまは変異株もBA.5やBF.5が主流で落ち着いていて、集団免疫も急激に獲得しているわけではないので、主に人流が前週比を左右しています。年明けにかけて人流から新興変異株へと主役となる因子が移っていくはず。


最新のグラフはこちらのページで毎日更新しています。 f.hatena.ne.jp

ゲノム解析について東京都健康安全研究センターに要望してみた

11月5日に「都のゲノム解析と変異株PCR検査体制の問題で、まともな予測精度にならない、というような記事をのんびり書くかも(または、書かないかも)」と追記したあと、なかなか筆が進まないまま日が経ってしまいましたが、本日の東京都のモニタリング会議で、ゲノム解析についてうれしい改善がありました。

それをきっかけに、さらなる改善の要望を東京都健康安全研究センターに送ってみようという気になり、メールを書きました。

本来であれば、このブログの読者向けにわかりやすい形で記事を書きたかったのですが、丁寧に書こうとすると大変な長文になってしまうので、労力を端折って、東京都健康安全研究センター宛に書いたメールを紹介することで、お茶を濁すことにします。(いきなりメールを紹介されてもピンと来ないとは思うのですが、労力を端折りました。すみません)

以下のメールは、一部、ブログ向けに装飾しています。

件名: 週単位のゲノム解析結果に BF.5 を追加してほしい

こんにちは。

本日の第107回東京都新型コロナウイルス感染症モニタリング会議にて、
変異株のゲノム解析結果についても「週単位」のデータを公開していただき、
(以前、お問い合わせフォームから当該要望を送った者です)
ありがとうございました。


変異株PCR検査に比べて1週ほど遅いとは言え、
モニタリング会議で賀来所長が言及されたように(動画の38:26)、
精度の高さは段違いで、大変役に立ちます。


欲を言えば、感染研の
新型コロナウイルス ゲノムサーベイランスによる国内の系統別検出状況 (.csv)
https://www.niid.go.jp/niid/ja/2019-ncov/2551-cepr/10745-cepr-topics.html

と同様の、全変異株系統について細かく
CSVなどの形で公開していただきたいですが、
それが難しくてもせめて、BF.5 については、
その他の BA.5 系統に比べて明らかに優位性があるため、

個別に項目を分けていただきたいと思っています。


またそもそも、
上記の感染研のゲノム解析データには、
都が公開しているゲノム解析データが含まれていないように思います。
(たとえば BQ.1.1 だと、都だけで累計255件なのに、感染研は66件)

東京都の変異株の状況を分析しようとしても、
あらゆるデータが「一長一短」の状態で、歯がゆく感じています。
都のゲノム解析は、GISAIDや感染研に共有されないのでしょうか?


1. covSPECTRUM
  おそらく検疫データが含まれているせいで、国内状況とズレがある。
  東京都など、地域によってはデータが(大部分)含まれていない(?)。

2. 感染研の「新型コロナウイルス~系統別検出状況 (.pdf)」
  貴重な都道府県別データだが、グラフを「目」で読むしかない。
  東京都に限ると、後述の5.に比べてもデータが少ない上に遅い。

3. 感染研の「新型コロナウイルス~国内の系統別検出状況 (.csv)」
  東京都など、地域によってはデータが(大部分)含まれていない。
  最新の Pango Lineages への追随がやや遅い(?)。

4. 感染研の「民間検査機関の~検出状況(.pdf)」
  3.に比べると1-2週遅い。
  目標が全国で週800件でしかなく(下記74ページ参照)、精度が悪い。
  https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/001010889.pdf#page=74

5. 都のモニタリング会議資料(ゲノム解析)
  月単位から週単位になったことは、大変すばらしい改善。
  できればパーセンテージだけでなく、実数も併記を。
  BF.5 が BA.5 に含まれているなど、分類がゆるい。
  最新の Pango Lineages への追随がやや遅い(?)。

6. 都のモニタリング会議資料(変異株PCR検査)
  可能ならもっと検査数を増やしてほしい。
  後述の7.のL452R検査ばかりやってる場合ではないはず。
  新興株が乱立する状況下では、今後の迅速な対応が難しいのでは?
  (結局は、イギリス並の迅速なゲノム解析こそ目指すべきなのでは?)

7. 都のモニタリング会議資料(L452R PCR検査)
  BA.5の拡大時には幸運にも(!)大変役に立ったが、
  (しかし私 https://knoa.hatenablog.com/archive 以外には、
  6.以上の高い精度を求めて7.を活用していた事例がなく、もったいなかった)
  いまや残念ながら意義が薄い。他へ労力を振り向け直してはどうか。
  (同じことは BA.2 拡大時にも、6.へ振り向けてほしいと感じていた)
  (実際にモニタリング会議での賀来所長の扱いも毎回ぞんざいである)
  (L452Rの試薬ばかり大量に余って困っているのかと邪推してしまう)

大まかに言って、「BF.5 を追加してほしい」という要望を足がかりに、日本と東京の歯がゆい状況を書いているのですが、他国は他国で問題点を抱えているし、東京におけるL452Rの変異株PCR検査は、偶然とは言え BA.5 の拡大時にとても有用だったので、いまの歯がゆい状況も、裏を返せば「運が悪かった」部分も大きいと感じています。(東京都は、新しい変異株が次々に乱立する状況には対応しにくい体制になっている)


※11月24日に、下記のメールを追加で送信しました。

こんにちは。

本日の変異株資料で、BN.1が追加されたことは心強く思います。
しかし、BF.5のゲノム解析はBA.5から分離されていませんでしたね。

楽観的に「要望してから時間が足りなかっただけ」だと思いたいですが、
「BF.5が、他を抑えて将来の支配的な変異株になることは考えにくい」
という理由でBF.5を軽視しているのではないかと危惧しましたので、
念のため、BF.5を分離する意義について付け加えておきたいと思います。

重要なのは、BA.5とBF.5や、BF.5とBQ.1.1、BF.5とBN.1などの、
相対的な感染力の差(前週比の差など)です。

それを元に、将来的なBQ.1.1などの増え方を予測することができます。
BQ.1.1の感染力を測るための物差しが、「BA.5とBF.5のミックス」じゃ
困るわけです。

かかる労力が分からないので気軽に要望しますが、
欲を言えば、「BA.5とBF.5の増え方の違い」について、
BF.5が増え始めた6-7月あたりまでさかのぼって、
ずっと追うことができれば助かります。

どうかご検討のほど、よろしくお願いいたします。

※11月30日に、お返事をいただきました。

ご指摘いただきありがとうございます。

都のゲノム解析データは、
GISAIDや国立感染症研究所のデータベースに共有しておりますが、
公開までにタイムラグが生じてしまいます。
また、ゲノム配列のクオリティによって、
登録できない場合があることも、どうぞご了承ください。

東京都のモニタリング会議資料や
国立感染症研究所で公開されている内容については、
恐れ入りますが、それぞれにお問い合わせください。

データベースの共有はしているけど、公開までタイムラグが大きくて(東京での資料公開から数週間?)、まるで共有していないかのように見えてしまっているのですね…。(そしてBF.5についてはゼロ回答…!健康安全研究センターじゃなくて東京都そのものに問い合わせろってこと?善意に解釈するなら、健康安全研究センターは都にデータを提供しているので、BF.5が含まれていないのは都の資料作成担当者だという意味かな?)

東京の感染者数を5週間ぶん予測する替わりに、台風の影響について考察した (10月13日版)

※ 11月17日 記事を書きました。 knoa.hatenablog.com

※ 11月5日追記: 本来ならとっくに予測記事を書いてるところなんだけど、都のゲノム解析と変異株PCR検査体制の問題で、まともな予測精度にならない、というような記事をのんびり書くかも(または、書かないかも)。本日時点でまだ人流増の影響も新しい変異株の影響もMAXになっていないので、急増はまだ続くはずです。

※ 10月21日追記: 昨日、更新を予定していましたが、お休みします。海外の変異株が気になっていますが、引き続き、日本国内での強力な変異株の増加はないようです。いまのところ「急増も急減も予兆はない」と言えます。そして、それは「データとして今、日本国内に予兆がないだけで、来週には一変してしまうという可能性もある」ということでもあります。毎週水曜公開の国内変異株データで予兆を捉えることができるので、急変があればまた記事を書くつもりです。


(見出し太字赤字だけに目をすべらせても、だいたいわかるように書きました。ちょっと多めですが。)


9月22日版を最後に更新をお休みしていましたが、予測の再開ではなく、いったん台風の考察を挟みます。

お休みは、更新を予定していた9月29日(木)に人流データが入手できなかったことがきっかけでしたが、データ公開の日程がずれたのはその週だけだったようで、今後は木曜までに入手できそうです。それでも、2連続の台風、シルバーウィーク、全数把握の簡略化と、3つの不安定要素が重なり予測が難しくなってしまったため、予測をお休みしています。

前回までの予測

最近の予測の一覧:
7/06 | 7/13 | 7/21 | 7/28
8/04 | 8/11 | 8/18 | 8/25
9/01 | 9/08 | 9/15 | 9/22

前回9/22の予測では、台風による影響を「連休による感染増加効果をゼロ」(=本来増えるはずだったぶんが増えなくなる)とみなしていましたが、まったく甘すぎる見積もりでした。むしろ短期間だけ緊急事態宣言が発令されたかのような、強い減少圧力を与えたと見ています。

台風は9/17からの3連休と9/23からの3連休の二度にわたってタイミング悪く(?)それぞれ接近し、実際の被害こそ想定を下回ったと言えるものの、当予測の根幹でもある「2週前の人流」が感染に影響するという原則に基づいて、おおむね2週にわたって感染者数を大きく減らしました

(より詳しくは、当予測では、現実と照らし合わせた結果、12日くらい前をピークにした正規分布のような影響があると仮定している)


台風の影響について

今回の2つの台風について、現時点での考察を書いておきます。(いちおうそれぞれ反例や矛盾がないかは確認しましたが、そのようなデータがあればご指摘を歓迎します)

  • 前提として、本来連休はその後の感染者数を一時的に増やす圧力になる。(が、コロナ以後、シルバーウィークは三年連続で大なり小なり台風の接近があった)
  • 今回の2つの台風は、特に1つ目の14号について、過去最強とも言われて強く警戒されていた。
  • 台風接近が平日ではなく連休と重なったことで行動自粛による効果がより高まった一方、連休そのものによる影響との切り分けが難しい。
  • 9/26からの全数把握の簡略化(全数自体は報告されるものの、濃厚接触や連絡先などの把握が簡略化される)とも時期が重なったため、やはり影響の切り分けが難しい。
  • 既に感染していた人が、台風接近時に外出が困難で検査受診ができないことによる一時的な遅延や、そのまま症状が治まることによる見かけ上の減少もある。
  • 通常の悪天候の日とは違って、「台風は事前に進路や接近日が予想されているために、当日の実際の降水量や風速にかかわらず、人々がそもそも予定を入れないとか、中止したり延期したりする」という影響が大きい。
  • オミクロンの世代時間(感染してから次の人に感染させるまでの時間)が約2日と短いからこそ、台風による強い行動自粛が、短期間でも高い効果を発揮した。
  • 人流とのデータ上の関係は、「本来、連休中は都心の人流が減る(他県へ出かける)はずなのに、減らなかった」という形で現れるので、公開されている都心の人流データと統計的に関係させるのは難しい。


台風以外の変動要因は?

先週は7日平均の前週比が60%にまで落ち込んでいたのに、今週いきなり100%以上をうかがう勢いで増えているわけですが、この変動をすべて台風だけのせいにしてもよいのでしょうか?

  • スポーツの日の3連休のしわ寄せでは?
    いいえ。しわ寄せは確かにありますが、過去の月曜祝日の連休と比較しても、通常のしわ寄せよりはるかに大きな感染者数が出ています。
  • 全国旅行支援のための(ワクチンの替わりの)検査需要が増えているのでは?
    いいえ。検査需要は確かにその分だけ増えていると思いますが、陽性率を押し下げるほどの規模ではなさそうです。
  • 季節的なものでは?
    いいえ。季節要因は常にありえますが、先週と今週で急激な変動を生み出せるものがあったとすれば、それはむしろ台風のことでしょう。影響が2週遅れる仕組みは、3週前の人流がデルタ株の増減と最も相関していたという解説をご確認のうえ、デルタに比べてオミクロンは世代時間が短いことを考慮してください。
  • 新たな変異株が増えているのでは?
    いいえ。後述しますが、少なくとも10/02(日)までの国内データでそのような兆候は見られません。BF.5の感染力も「やや強い」程度です。ごく短期間で急激に増える未知の変異株が発生している可能性は、ゼロではないですが、低いと思われます。
  • じゃあ、すべて台風のせい?
    いいえ。台風が最大要因ですが、ここに挙げた各項目も、(全項目に「いいえ」と答えたものの、)それぞれ少しずつ寄与していると思います。

なお、台風接近の直前まで、東京都の7日平均の前週比は、9月1日の65%から18日の86%へと少しずつ上昇していた途上だったことにも留意が必要です。これは、仮に連休も台風もなく同じ傾向があと2週間続いたとすれば、9月中に100%に近づくほどのペースでした。


今回の予測 (今回は予測なし)

具体的な予測はまだできませんが、今週から少しずつ増えると見ています。その点では下記の前回9/22の予測と同じですが、土台となる出発点は台風のおかげで低くなっています。


新たな変異株など

引き続き、日本全体のゲノム解析データでは BA.5 系統に属する BF.5 が割合を増やしています。他の BA.5 系統に比べて減らしにくく、増えやすいということです。

欧米ではBF.5以外のいくつかの変異株系統が実数でも少しずつ増えていて、感染者数全体としても増加に転じているところもありますが、BA.5の時のように圧倒的に強い変異株が登場しているわけではなさそうです。

欧米のBF.5と日本のBF.5は分類上はいまのところ同じですが、欧米のBF.5は日本のような感染力の強さを示していません。これはおそらく、日本の系統特有の変異箇所の影響ではないかと考えています。


他の予測など

今週ではなく先週ですが、内閣府のAI・シミュレーションプロジェクトで10月4日(火)に3つ公開されていました。(敬称略)

第7波の総括は9/22の記事を参照してください。

縦軸の感染者数はそれぞれスケールが異なりますが、横軸と予測の色は比較しやすいように時期を揃えてあります。予測が多数ある場合は、楽観と悲観など、代表例のみ紹介しています。日付は原則として予測資料の公開日。より正確には各予測のリンク先を参照してください。

※ 特に断りがない限り、感染者数はいずれも7日平均なので、祝日などによるブレがなければ1日単位の最大値はその1.2-1.5倍くらいになることが多いです。


あとがき

8月下旬から大きく減った原因は、どうして、こんなに、減ってるの!? という記事で解説しています。 knoa.hatenablog.com

ここに載せていないものも含む各種グラフは、毎日更新しています。