東京の感染者数を5週間ぶん予測した (8月25日版)
※ 9月1日版を公開しました knoa.hatenablog.com
前回の予測
前回、8月18日の5週予測のうち、1週目の週平均は予測24255人→現実24743人となりました。ただし、先週発覚した千葉県に続いて、大阪府・埼玉県・新潟県のオンライン登録分も東京都に計上されていたことが8月21日に、さらに高知県分も23日に、それぞれ発覚しました。ただし、新潟県と高知県の誤計上は発覚以降は取り除かれていて、千葉県分についても24日発表分から段階的に解消される見込みとなっています。なお、現状、これらの誤計上の過去の正確な人数は不明なままで、報道の断片を頼りに推定するしかありません。今後、正確な数字が発表されるかも不明です。
予測日 | -7/11 | -7/18 | -7/25 | -8/01 | -8/08 | -8/15 | -8/22 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
7/06 | 7000 | 18569 | 38890 | 66093 | 75440 | ||
7/13 | 15060 | 24500 | 34902 | 34228 | 26896 | ||
7/21 | 26693 | 31452 | 30849 | 18850 | 9508 | ||
7/28 | 31458 | 28408 | 19137 | 10648 | |||
8/04 | 32808 | 23079 | 15521 | ||||
8/11 | 24970 | 22887 | |||||
8/18 | 24255 | ||||||
現実 | 8054 | 16216 | 25927 | 32116 | 31151 | 26379 | 24743 |
(スマホなど小さな画面でご覧の方は、隠れてしまった表の中身を左右にスライドさせることができます)
人流の影響を3週前から2週前へ修正する前の、7/06の予測とはズレが大きくなっています。
7/21までは実質的に「誤計上除外」の推移を予測していたと言えます。8/11までは誤計上されたデータに基づいて、それを知らずに予測していたことになります。大阪府・埼玉県・新潟県・高知県の誤計上は、期間も数も多くが不明のままです。予測に与えている影響も不明です。
8/04には繁華街人流の増加を受けて、8/11には帰省の大幅回復を受けて上方修正しています。
今回の予測
(注: 東京都の独特なデータ公開形式の都合で、週の区切りが火曜から翌週月曜までであることに注意してください。グラフ中の「-8/29」は「8/23(火)-8/29(月)」の7日間の週平均を指します)
今回の予測は、減少速度が弱まり、下り坂が少し緩やかになりました。
1つには、お盆の特殊な人流によるリバウンドが予想以上に大きかったことがありますが、これは一時的な「一回休み」で、その後の下り坂の角度にまで影響するものではありません。下り坂の角度が緩くなったのは、無症状で検査をしないまま発表数にカウントされない感染者数の想定を、「発表の4倍」から「発表の3.5倍」に修正したことによります。これは予測と現実のズレに合わせて修正したものですが、千葉県などの誤計上による誤謬かもしれないので、今後再修正するかもしれません。
なお、少なくとも千葉県分の誤計上は8月23日報告分・24日発表分以降、段階的に解消されるはずなのですが、25日現在でいまのところその兆候が見られません。千葉県分の誤計上だけで東京都の感染者数の10%以上を占めているので、見通し不透明な変動の幅が大きいことに注意が必要です。
BA.2.75 (ケンタウロス) と BA.4.6
前回の予測と同様で、当面、比率は増えても実数で増えることは考えにくいです。
東京都では●BA.2.75の検出ゼロまたは1件という週が続いています。●BA.4.6は東京都ではなく日本全体のゲノム解析でしか統計がありませんが、全体のわずか0.1-0.3%となっています。
予測の条件など
感染による免疫の係数を「発表の4倍」から「発表の3.5倍」に修正。ほかは、前回と同様です。(詳細: 3週前の人流がデルタ株の増減と最も相関していたという解説)
- 変異株ごとの前週比
BA.2の前週比に対してBA.2.12.1は1.4倍、BA.5は2.25倍。現実には曲線になると思われるが、BA.2の前週比1.0倍付近では近似できるとみなしている。 - 2週前の人流
1週前×1 + 2週前×3 で、実質1.75週前の人流と前週比を対応させている。12日くらい前をピークにした正規分布のほうがより適切だと思われるが、労力の都合で人流データを週単位でしか取れていないので、苦肉の策。厚労省のアドバイザリーボードの資料または都のモニタリング会議の資料から、繁華街の滞留人口を人力で(!)読み取っている。 - 3週前の感染者数
3週前の感染者数によって、2週前の人流が変動するという仕組み。これのおかげで、観測された過去の人流だけでは2週先までが限界になる予測を、二段ばしごのようにさらに先まで伸ばすことができる。以前の予測では感染者数の「最大値が前週比に影響する」としていたが、「週合計が人流に影響する」ほうが現実に即していたので変更した。 - ワクチン接種
個人単位では (1-(経過週数/56週))1/4 の曲線で効果が減衰するものとする。都民全員がワクチンと自然免疫を同時に獲得した直後の集団免疫を仮に200%とし、減衰後の 1-(集団免疫/200%)2 だけ前週比が減るものとする。これはワクチンと自然免疫の重なりをひとまとめに扱うための便宜的な近似。また、仮に経過週数が同じなら、対デルタに比べて対オミクロンの効果は80%とする。これらは前週比に与える影響自体は大きいが、週単位で大きく変動するわけではないので、5週予測の精度というよりも、過去の感染の波との整合性に影響している。(大局的な齟齬がなければ、これらの計算式は週単位の予測にはあまり影響しない) - 感染による免疫
発表の3.5倍の感染者数を想定。効果はワクチンと同等とみなす。5週予測に与える影響もワクチンと同様。 - 入国者数(海外渡航歴のある感染者)
感染者の絶対数が少ない時期ほど、BA.2の前週比の割にBA.5の前週比が前述の倍率より高くなりやすいので、入国によるかさ増しを想定している。 - 祝日や連休など
祝日は休診の影響でいったん感染者数が減り、逆にその後は休診明けのリバウンドと行楽などによる感染増で感染者数が増えるものとする。月曜と金曜の違いや連休日数に応じて、3.5%から35%までの幅で決め打ちしているが、まだ改善の余地がある。
他の予測など
今週は、CATsによる予測が毎日更新されていたほか、内閣府のAI・シミュレーションプロジェクトで8月22日(月)に1つ修正版が公開されていました。(敬称略)
今回から、これまでに紹介したすべての予測の履歴グラフを掲載します。縦軸の感染者数はそれぞれスケールが異なりますが、横軸と予測の色は比較しやすいように時期を揃えてあります。予測が多数ある場合は、楽観と悲観など、代表例のみ紹介しています。日付は原則として予測資料の公開日。より正確には各予測のリンク先を参照してください。
※ 特に断りがない限り、感染者数はいずれも7日平均なので、祝日などによるブレがなければ1日単位の最大値はその1.2-1.5倍くらいになることが多いです。
※ 「現実」のグラフに千葉県などの誤計上は考慮されていません。
CATs / 三浦瑠麗
8/22(月) 8/23(火) 8/24(水) 8/25(木) 8/26(金) ※毎日更新されるが、同じURLで記事が上書きされてしまうので、可能な範囲で記録に残してリンクしている。名古屋工業大学 平田晃正
※8/18版は「千葉県の感染者数の東京計上を補正」など。大阪・埼玉・新潟・高知の報道は反映されていないと思われる。公開日は8/18となっているが、実際の掲載日は8/22だった。東京大学 大澤幸生
※スケールの差が大きいので、グラフを2つに分けた。参考: 当予測
参考: 東京大学 仲田泰祐
※「今後新規陽性者数がこうだったら」という仮定に基づいて、病床推移などを予測するのが主眼なので、感染者数の予測ではない。ただし、ピークの仮定が「1万人・2万人・3万人」や「第6波の2倍(3万6000人)」などと、結果的に現実(3万2000人)に近い数字が考察されている。
あとがき
BA.5の感染力、重症や死者数、ワクチンの追加接種などの考察は、7月6日版の記事に書いています。
ここに載せていないものも含む各種グラフは、毎日更新しています。