東京の感染者数を5週間ぶん予測した (9月22日版)

※ 10月13日版を公開しました knoa.hatenablog.com


※ 9月29日追記: 本日、9月29日版を予定していましたが、人流データが更新されないので予測ができないかもしれません。検査報告体制の簡略化に伴って、もう更新されないのかもしれません。感染者数は目下のところかなり順調に減っていますが、これが2連続の台風による強制的な人流減少(まだ人流データが手に入らないので、どれだけ減少したのかはわかっていません)のおかげではないかとも感じています。そのあたりの考察記事を、予測の替わりに後日公開するかもしれません。


前回までの予測

前回、9月15日の5週予測のうち、1週目の週平均は予測7534人→現実8153人となりました。

予測日 -8/08-8/15-8/22-8/29-9/05-9/12-9/19
7/0675440
7/133422826896
7/213084918850 9508
7/28284081913710648 6641
8/04328082307915521 8387 4481
8/11 249702288714588 8805 4350
8/18 2425515084 9934 5578 3338
8/25 207251553810032 6956
9/01 12024 7700 5659
9/08 9258 6125
9/15 7534
現実 3115126379247431880112286 9475 8153

(スマホなど小さな画面でご覧の方は、隠れてしまった表の中身を左右にスライドさせることができます)

人流の影響を3週前から2週前へ修正する前の、7/06の予測とはズレが大きくなっています。

8/16に最初の誤計上が発覚しましたが、7/21までは実質的に「都のみ」の推移を予測していたと言えます。8/11までは誤計上されたデータに基づいて、それを知らずに予測していたことになります。7月分の誤計上の修正値は8月末に発表されましたが、8月分の修正値は9月末に発表されるものと思われます。

8/04には繁華街人流の増加を受けて、8/11には帰省の大幅回復を受けて上方修正しています。

8/25には感染による免疫の係数を「発表の4倍」から「発表の3.5倍」に修正しました。また、この日の翌日から誤計上が大きく解消されていきました。


今回の予測

(注: 東京都の独特なデータ公開形式の都合で、週の区切りが火曜から翌週月曜までであることに注意してください。グラフ中の「-9/26」は「9/20(火)-9/26(月)」の7日間の週平均を指します)

東京は3連休が「2回とも」台風の影響を受ける見込みで、予測の上では連休による感染増加効果をゼロへ修正しました。(あいにく、本日時点では1つ目の台風が接近する前、9/17までの人流データしか公開されておらず、影響の程度は読めません)

5週先の予測はやや増加傾向になっていますが、将来の台風はもちろん、現時点ではワクチンがオミクロン対応に切り替わる効果も、(接種率の変化が予測できないこともあって)考慮していません。


新たな変異株など

引き続き、東京でも日本全体でも、BA.2.75 や BA.4.6 の検出は少ないままです。

いっぽう、東京に限定したデータはないものの日本全体のゲノム解析データでは BA.5 系統に属する BF.5 が割合を増やしつつあります。最新の-9/11までの週は誤差が大きいので必ずしも下記グラフの通り実数で増加しているとは限りませんが、少なくとも他の BA.5 系統に比べて減らしにくいことは間違いないと言えます。


予測の条件など

8月25日版以降と同様です。(詳細: 3週前の人流がデルタ株の増減と最も相関していたという解説)

  • 変異株ごとの前週比
    BA.2の前週比に対してBA.2.12.1は1.4倍、BA.5は2.25倍。現実には曲線になると思われるが、BA.2の前週比1.0倍付近では近似できるとみなしている。
  • 2週前の人流
    1週前×1 + 2週前×3 で、実質1.75週前の人流と前週比を対応させている。12日くらい前をピークにした正規分布のほうがより適切だと思われるが、労力の都合で人流データを週単位でしか取れていないので、苦肉の策。厚労省のアドバイザリーボードの資料または都のモニタリング会議の資料から、繁華街の滞留人口を人力で(!)読み取っている。
  • 3週前の感染者数
    3週前の感染者数によって、2週前の人流が変動するという仕組み。これのおかげで、観測された過去の人流だけでは2週先までが限界になる予測を、二段ばしごのようにさらに先まで伸ばすことができる。以前の予測では感染者数の「最大値が前週比に影響する」としていたが、「週合計が人流に影響する」ほうが現実に即していたので変更した。
  • ワクチン接種
    個人単位では (1-(経過週数/56週))1/4 の曲線で効果が減衰するものとする。都民全員がワクチンと自然免疫を同時に獲得した直後の集団免疫を仮に200%とし、減衰後の 1-(集団免疫/200%)2 だけ前週比が減るものとする。これはワクチンと自然免疫の重なりをひとまとめに扱うための便宜的な近似。また、仮に経過週数が同じなら、対デルタに比べて対オミクロンの効果は80%とする。これらは前週比に与える影響自体は大きいが、週単位で大きく変動するわけではないので、5週予測の精度というよりも、過去の感染の波との整合性に影響している。(大局的な齟齬がなければ、これらの計算式は週単位の予測にはあまり影響しない)
  • 感染による免疫
    発表の3.5倍の感染者数を想定。効果はワクチンと同等とみなす。5週予測に与える影響もワクチンと同様。
  • 入国者数(海外渡航歴のある感染者)
    感染者の絶対数が少ない時期ほど、BA.2の前週比の割にBA.5の前週比が前述の倍率より高くなりやすいので、入国によるかさ増しを想定している。
  • 祝日や連休など
    祝日は休診の影響でいったん感染者数が減り、逆にその後は休診明けのリバウンドと行楽などによる感染増で感染者数が増えるものとする。月曜と金曜の違いや連休日数に応じて、3.5%から35%までの幅で決め打ちしているが、まだ改善の余地がある。


他の予測など

今週でCATsによる予測が終了しました。内閣府のAI・シミュレーションプロジェクトの更新もありませんでした。(敬称略)

縦軸の感染者数はそれぞれスケールが異なりますが、横軸と予測の色は比較しやすいように時期を揃えてあります。予測が多数ある場合は、楽観と悲観など、代表例のみ紹介しています。日付は原則として予測資料の公開日。より正確には各予測のリンク先を参照してください。

※ 特に断りがない限り、感染者数はいずれも7日平均なので、祝日などによるブレがなければ1日単位の最大値はその1.2-1.5倍くらいになることが多いです。

  • CATs / 三浦瑠麗
    9/20(火) 9/21(水) ※9/21に第7波の総括をしている。ピークについて 予測開始初日(7/20) :35,000人 と書かれているが、予測が公開されたのは7/25の5万4000人が最初なので、善意に解釈して「公開はせずに内々で予測していた数字」なのかもしれない。しかし、ピークが上振れした理由として他府県の誤計上を挙げている点は、7/25時点の発表7日平均2万2377人に対して他府県を除いても693人減の2万1684人でしかなく、いくら将来の感染者数に「てこの原理」が働くにしても、それだけで5万4000人という上振れを説明するのは無理があるのではないかと思う。また、第8波へのあるべき対応 として「初動の1週間で検知、続く2週間でピーク日とピークアウトの高さを予測」と述べている割には、CATsが初動を検知した日:6/23(6/28に判定) にもかかわらず世間に対する予測公開が7/25になってしまったのは、第8波に向けての反省という意味なのだろうか。しかし他の予測に比べれば精度が高いほうだと思うし、次の波を検知した時にはまた予測を公開してほしい。

  • 名古屋工業大学 平田晃正
    ※8/18版は「千葉県の感染者数の東京計上を補正」など。大阪・埼玉・新潟・高知の報道は反映されていないと思われる。公開日は8/18となっているが、実際の掲載日は8/22だった。

  • 筑波大学 倉橋節也

  • 東京大学 大澤幸生
    ※スケールの差が大きいので、グラフを2つに分けた。

  • 慶應義塾大学 栗原聡
    ※スケールの差が大きいので、グラフを2つに分けた。
    8/30に東京都ではなく全国の予測が公開されている。8/30時点の現実の7日平均17万8000人に対して、11月末まで13万人を超える高止まりという内容。(→現実は9/21時点で6万2000人)
    9/13の予測は来年3月までの長期予測。ただし、オミクロン対応ワクチンの接種率の影響比較が主眼。

  • 創価大学 畝見達夫

  • 参考: 当予測

  • 参考: 東京大学 仲田泰祐
    ※「今後新規陽性者数がこうだったら」という仮定に基づいて、病床推移などを予測するのが主眼なので、感染者数の予測ではない。ただし、ピークの仮定が「1万人・2万人・3万人」や「第6波の2倍(3万6000人)」などと、結果的に現実(3万2000人)に近い数字が考察されている。


あとがき

BA.5の感染力、重症や死者数、ワクチンの追加接種などの考察は、7月6日版の記事に書いています。 knoa.hatenablog.com

8月下旬から大きく減った原因は、どうして、こんなに、減ってるの!? という記事で解説しています。 knoa.hatenablog.com

ここに載せていないものも含む各種グラフは、毎日更新しています。

東京の感染者数を5週間ぶん予測した (9月15日版)

※ 9月22日版を公開しました knoa.hatenablog.com


前回までの予測

前回、9月8日の5週予測のうち、1週目の週平均は予測9258人→現実9475人となりました。

予測日-8/01-8/08-8/15-8/22-8/29-9/05-9/12
7/066609375440
7/13349023422826896
7/21314523084918850 9508
7/2831458284081913710648 6641
8/04 328082307915521 8387 4481
8/11 249702288714588 8805 4350
8/18 2425515084 9934 5578
8/25 207251553810032
9/01 12024 7700
9/08 9258
現実 321163115126379247431880112286 9475

(スマホなど小さな画面でご覧の方は、隠れてしまった表の中身を左右にスライドさせることができます)

人流の影響を3週前から2週前へ修正する前の、7/06の予測とはズレが大きくなっています。

8/16に最初の誤計上が発覚しましたが、7/21までは実質的に「都のみ」の推移を予測していたと言えます。8/11までは誤計上されたデータに基づいて、それを知らずに予測していたことになります。7月分の誤計上の修正値は8月末に発表されましたが、8月分の修正値は9月末に発表されるものと思われます。

8/04には繁華街人流の増加を受けて、8/11には帰省の大幅回復を受けて上方修正しています。

8/25には感染による免疫の係数を「発表の4倍」から「発表の3.5倍」に修正しました。また、この日の翌日から誤計上が大きく解消されていきました。


今回の予測

(注: 東京都の独特なデータ公開形式の都合で、週の区切りが火曜から翌週月曜までであることに注意してください。グラフ中の「-9/19」は「9/13(火)-9/19(月)」の7日間の週平均を指します)

今回の予測は、曲線の形はだいたい同じですが、現実の減少の鈍化を受けて全体が底上げされました。いっぽう、繁華街の人流がいまのところ停滞気味であることを受けて、シルバーウィーク後のリバウンドはやや穏やかになっています。

もっとも、-9/26(月)までの週平均6135人という予測は、シルバーウィーク中の2日分の祝日による検査減少を含めての数字なので、実質的には大まかに「間もなく停滞期を迎える」という予測になっています。新たに強力な変異株が現れたわけではありませんが、少しずつの人流の回復を見込んでいるほか、後述する、少しだけ感染力が増した BF.5 などの影響もあると見ています。


新たな変異株など

前回に引き続き、脅威となるような変異株はありません。

しかし、東京に限ったデータが入手できないのがもどかしいところですが、日本全体のゲノム解析データとして BA.5 系統に属する BF.5 が割合を増やしつつあり、これが直近の鈍化の(ささやかな)一因である可能性もあります。


予測の条件など

8月25日版以降と同様です。(詳細: 3週前の人流がデルタ株の増減と最も相関していたという解説)

  • 変異株ごとの前週比
    BA.2の前週比に対してBA.2.12.1は1.4倍、BA.5は2.25倍。現実には曲線になると思われるが、BA.2の前週比1.0倍付近では近似できるとみなしている。
  • 2週前の人流
    1週前×1 + 2週前×3 で、実質1.75週前の人流と前週比を対応させている。12日くらい前をピークにした正規分布のほうがより適切だと思われるが、労力の都合で人流データを週単位でしか取れていないので、苦肉の策。厚労省のアドバイザリーボードの資料または都のモニタリング会議の資料から、繁華街の滞留人口を人力で(!)読み取っている。
  • 3週前の感染者数
    3週前の感染者数によって、2週前の人流が変動するという仕組み。これのおかげで、観測された過去の人流だけでは2週先までが限界になる予測を、二段ばしごのようにさらに先まで伸ばすことができる。以前の予測では感染者数の「最大値が前週比に影響する」としていたが、「週合計が人流に影響する」ほうが現実に即していたので変更した。
  • ワクチン接種
    個人単位では (1-(経過週数/56週))1/4 の曲線で効果が減衰するものとする。都民全員がワクチンと自然免疫を同時に獲得した直後の集団免疫を仮に200%とし、減衰後の 1-(集団免疫/200%)2 だけ前週比が減るものとする。これはワクチンと自然免疫の重なりをひとまとめに扱うための便宜的な近似。また、仮に経過週数が同じなら、対デルタに比べて対オミクロンの効果は80%とする。これらは前週比に与える影響自体は大きいが、週単位で大きく変動するわけではないので、5週予測の精度というよりも、過去の感染の波との整合性に影響している。(大局的な齟齬がなければ、これらの計算式は週単位の予測にはあまり影響しない)
  • 感染による免疫
    発表の3.5倍の感染者数を想定。効果はワクチンと同等とみなす。5週予測に与える影響もワクチンと同様。
  • 入国者数(海外渡航歴のある感染者)
    感染者の絶対数が少ない時期ほど、BA.2の前週比の割にBA.5の前週比が前述の倍率より高くなりやすいので、入国によるかさ増しを想定している。
  • 祝日や連休など
    祝日は休診の影響でいったん感染者数が減り、逆にその後は休診明けのリバウンドと行楽などによる感染増で感染者数が増えるものとする。月曜と金曜の違いや連休日数に応じて、3.5%から35%までの幅で決め打ちしているが、まだ改善の余地がある。


他の予測など

今週は、CATsによる予測が毎日更新されているほか、内閣府のAI・シミュレーションプロジェクトで9月13日(火)に2つ公開されていました。(敬称略)

縦軸の感染者数はそれぞれスケールが異なりますが、横軸と予測の色は比較しやすいように時期を揃えてあります。予測が多数ある場合は、楽観と悲観など、代表例のみ紹介しています。日付は原則として予測資料の公開日。より正確には各予測のリンク先を参照してください。

※ 特に断りがない限り、感染者数はいずれも7日平均なので、祝日などによるブレがなければ1日単位の最大値はその1.2-1.5倍くらいになることが多いです。

  • CATs / 三浦瑠麗
    9/12(月) 9/13(火) 9/14(水) 9/15(木) 9/16(金) ※毎日更新されるが、同じURLで記事が上書きされてしまうので、可能な範囲で記録に残してリンクしている。

  • 名古屋工業大学 平田晃正
    ※8/18版は「千葉県の感染者数の東京計上を補正」など。大阪・埼玉・新潟・高知の報道は反映されていないと思われる。公開日は8/18となっているが、実際の掲載日は8/22だった。

  • 筑波大学 倉橋節也

  • 東京大学 大澤幸生
    ※スケールの差が大きいので、グラフを2つに分けた。

  • 慶應義塾大学 栗原聡
    ※スケールの差が大きいので、グラフを2つに分けた。
    8/30に東京都ではなく全国の予測が公開されている。8/30時点の現実の7日平均17万8000人に対して、11月末まで13万人を超える高止まりという内容。(9/14時点で現実は8万9500人)
    9/13の予測は来年3月までの長期予測。ただし、オミクロン対応ワクチンの接種率の影響比較が主眼。

  • 創価大学 畝見達夫

  • 参考: 当予測

  • 参考: 東京大学 仲田泰祐
    ※「今後新規陽性者数がこうだったら」という仮定に基づいて、病床推移などを予測するのが主眼なので、感染者数の予測ではない。ただし、ピークの仮定が「1万人・2万人・3万人」や「第6波の2倍(3万6000人)」などと、結果的に現実(3万2000人)に近い数字が考察されている。


あとがき

BA.5の感染力、重症や死者数、ワクチンの追加接種などの考察は、7月6日版の記事に書いています。 knoa.hatenablog.com

8月下旬から大きく減った原因は、どうして、こんなに、減ってるの!? という記事で解説しています。 knoa.hatenablog.com

ここに載せていないものも含む各種グラフは、毎日更新しています。

東京の感染者数を5週間ぶん予測した (9月8日版)

※ 9月15日版を公開しました knoa.hatenablog.com


前回の予測

前回、9月1日の5週予測のうち、1週目の週平均は予測12024人→現実12286人となりました。

予測日-7/25-8/01-8/08-8/15-8/22-8/29-9/05
7/06388906609375440
7/1324500349023422826896
7/2126693314523084918850 9508
7/28 31458284081913710648 6641
8/04 328082307915521 8387 4481
8/11 249702288714588 8805
8/18 2425515084 9934
8/25 2072515538
9/01 12024
現実 25927321163115126379247431880112286

(スマホなど小さな画面でご覧の方は、隠れてしまった表の中身を左右にスライドさせることができます)

人流の影響を3週前から2週前へ修正する前の、7/06の予測とはズレが大きくなっています。

8/16に最初の誤計上が発覚しましたが、7/21までは実質的に「都のみ」の推移を予測していたと言えます。8/11までは誤計上されたデータに基づいて、それを知らずに予測していたことになります。7月分の誤計上の修正値は8月末に発表されましたが、8月分の修正値は9月末に発表されるものと思われます。

8/04には繁華街人流の増加を受けて、8/11には帰省の大幅回復を受けて上方修正しています。

8/25には感染による免疫の係数を「発表の4倍」から「発表の3.5倍」に修正しました。また、この日の翌日から誤計上が大きく解消されていきました。


今回の予測

(注: 東京都の独特なデータ公開形式の都合で、週の区切りが火曜から翌週月曜までであることに注意してください。グラフ中の「-9/12」は「9/06(火)-9/12(月)」の7日間の週平均を指します)

前回とおおむね同じですが、繁華街の人流が8/28(日)前後にピークを付けたあと減少していることを受けて、今後1-2週の減少が少し緩やかになっています。このくらいは期間中の天候や台風の接近レベルでも変動すると言えます。また、4-5週先のシルバーウィーク明けのリバウンドは1週先延ばしになったように見えています。ただし、前回も書いたように、直近のお盆を挟んだ期間の統計データは平常時と同じようには扱えないので、4-5週先の予測はまだ不安定です。


BA.2.75 (ケンタウロス) と BA.4.6

前回の予測と同様で、当面、比率は増えても実数で増えることは考えにくいです。


予測の条件など

前回と同様です。(詳細: 3週前の人流がデルタ株の増減と最も相関していたという解説)

  • 変異株ごとの前週比
    BA.2の前週比に対してBA.2.12.1は1.4倍、BA.5は2.25倍。現実には曲線になると思われるが、BA.2の前週比1.0倍付近では近似できるとみなしている。
  • 2週前の人流
    1週前×1 + 2週前×3 で、実質1.75週前の人流と前週比を対応させている。12日くらい前をピークにした正規分布のほうがより適切だと思われるが、労力の都合で人流データを週単位でしか取れていないので、苦肉の策。厚労省のアドバイザリーボードの資料または都のモニタリング会議の資料から、繁華街の滞留人口を人力で(!)読み取っている。
  • 3週前の感染者数
    3週前の感染者数によって、2週前の人流が変動するという仕組み。これのおかげで、観測された過去の人流だけでは2週先までが限界になる予測を、二段ばしごのようにさらに先まで伸ばすことができる。以前の予測では感染者数の「最大値が前週比に影響する」としていたが、「週合計が人流に影響する」ほうが現実に即していたので変更した。
  • ワクチン接種
    個人単位では (1-(経過週数/56週))1/4 の曲線で効果が減衰するものとする。都民全員がワクチンと自然免疫を同時に獲得した直後の集団免疫を仮に200%とし、減衰後の 1-(集団免疫/200%)2 だけ前週比が減るものとする。これはワクチンと自然免疫の重なりをひとまとめに扱うための便宜的な近似。また、仮に経過週数が同じなら、対デルタに比べて対オミクロンの効果は80%とする。これらは前週比に与える影響自体は大きいが、週単位で大きく変動するわけではないので、5週予測の精度というよりも、過去の感染の波との整合性に影響している。(大局的な齟齬がなければ、これらの計算式は週単位の予測にはあまり影響しない)
  • 感染による免疫
    発表の3.5倍の感染者数を想定。効果はワクチンと同等とみなす。5週予測に与える影響もワクチンと同様。
  • 入国者数(海外渡航歴のある感染者)
    感染者の絶対数が少ない時期ほど、BA.2の前週比の割にBA.5の前週比が前述の倍率より高くなりやすいので、入国によるかさ増しを想定している。
  • 祝日や連休など
    祝日は休診の影響でいったん感染者数が減り、逆にその後は休診明けのリバウンドと行楽などによる感染増で感染者数が増えるものとする。月曜と金曜の違いや連休日数に応じて、3.5%から35%までの幅で決め打ちしているが、まだ改善の余地がある。


他の予測など

今週は、CATsによる予測が毎日更新されているほか、内閣府のAI・シミュレーションプロジェクトで9月6日(火)に1つ公開されていました。(敬称略)

縦軸の感染者数はそれぞれスケールが異なりますが、横軸と予測の色は比較しやすいように時期を揃えてあります。予測が多数ある場合は、楽観と悲観など、代表例のみ紹介しています。日付は原則として予測資料の公開日。より正確には各予測のリンク先を参照してください。

※ 特に断りがない限り、感染者数はいずれも7日平均なので、祝日などによるブレがなければ1日単位の最大値はその1.2-1.5倍くらいになることが多いです。

  • CATs / 三浦瑠麗
    9/05(月) 9/06(火) 9/07(水) 9/08(木) 9/09(金) ※毎日更新されるが、同じURLで記事が上書きされてしまうので、可能な範囲で記録に残してリンクしている。

  • 名古屋工業大学 平田晃正
    ※8/18版は「千葉県の感染者数の東京計上を補正」など。大阪・埼玉・新潟・高知の報道は反映されていないと思われる。公開日は8/18となっているが、実際の掲載日は8/22だった。

  • 筑波大学 倉橋節也

  • 東京大学 大澤幸生
    ※スケールの差が大きいので、グラフを2つに分けた。

  • 慶應義塾大学 栗原聡
    ※8/30に東京都ではなく全国の予測が公開されている。8/30時点の現実の7日平均17万8000人に対して、11月末まで13万人を超える高止まりという内容。(9/07時点で現実は11万7000人)

  • 創価大学 畝見達夫

  • 参考: 当予測

  • 参考: 東京大学 仲田泰祐
    ※「今後新規陽性者数がこうだったら」という仮定に基づいて、病床推移などを予測するのが主眼なので、感染者数の予測ではない。ただし、ピークの仮定が「1万人・2万人・3万人」や「第6波の2倍(3万6000人)」などと、結果的に現実(3万2000人)に近い数字が考察されている。


あとがき

BA.5の感染力、重症や死者数、ワクチンの追加接種などの考察は、7月6日版の記事に書いています。 knoa.hatenablog.com

8月下旬から大きく減った原因は、どうして、こんなに、減ってるの!? という記事で解説しています。 knoa.hatenablog.com

ここに載せていないものも含む各種グラフは、毎日更新しています。

東京の感染者数を5週間ぶん予測した (9月1日版)

※ 9月8日版を公開しました knoa.hatenablog.com


前回の予測

前回、8月25日の5週予測のうち、1週目の週平均は予測20725人→現実18801人となりました。このズレの要因のひとつは、他府県の誤計上が段階的に解消されていることによります。その一方で、誤計上ではないものの、「都外からの検体持ち込み」の比率が増えています。これは以前から東京都の感染者数に含まれてはいたのですが、7月にはほぼ1%未満だったものが8月には日によって9%にも達するなど、無視できない大きさになっているため、今回から統計上は誤計上と同様に扱うようにします。

予測日-7/18-7/25-8/01-8/08-8/15-8/22-8/29
7/0618569388906609375440
7/131506024500349023422826896
7/21 26693314523084918850 9508
7/28 31458284081913710648 6641
8/04 328082307915521 8387
8/11 249702288714588
8/18 2425515084
8/25 20725
現実 16216259273211631151263792474318801

(スマホなど小さな画面でご覧の方は、隠れてしまった表の中身を左右にスライドさせることができます)

人流の影響を3週前から2週前へ修正する前の、7/06の予測とはズレが大きくなっています。

8/16に最初の誤計上が発覚しましたが、7/21までは実質的に「都のみ」の推移を予測していたと言えます。8/11までは誤計上されたデータに基づいて、それを知らずに予測していたことになります。7月分の誤計上の修正値は8月末に発表されましたが、8月分の修正値は9月末に発表されるものと思われます。

8/04には繁華街人流の増加を受けて、8/11には帰省の大幅回復を受けて上方修正しています。

8/25には感染による免疫の係数を「発表の4倍」から「発表の3.5倍」に修正しました。


今回の予測

(注: 東京都の独特なデータ公開形式の都合で、週の区切りが火曜から翌週月曜までであることに注意してください。グラフ中の「-9/05」は「8/30(火)-9/05(月)」の7日間の週平均を指します)

今回の予測は、前回とほぼ同じで、誤計上が解消された分だけ少し下方向にスライドした形です。5週先の9/27(火)-10/03(月)には、人流増とシルバーウィークの影響によるリバウンドを予測していますが、5週も先である上に現在はお盆を挟んで直近の統計データが心もとないので、不安定です。

いま大きく減っている原因は、別途 どうして、こんなに、減ってるの!? という記事で解説しました。 knoa.hatenablog.com

夏休みの終わりを心配する声もあり、確かにオミクロンでは学校の長期休暇が感染抑制に効いているようには見えますが、その影響は感染減少を増加に転じさせるほどの力ではありません。減少速度のブレーキ要因のひとつになるだけでしょう。


BA.2.75 (ケンタウロス) と BA.4.6

前回の予測と同様で、当面、比率は増えても実数で増えることは考えにくいです。

中国で BF.15 という新しい変異株が広まっているようですが、既に日本でも空港検疫を含めて6月ごろから BF.15 として 2-3% ほど、特に比率を高めることなく存在し続けているので、すぐにどうこうというわけではなさそうです。もっとも、まだ日が浅い上に中国は国際データベースにゲノム解析データをほとんど登録してくれないので、詳しいことはよくわからないままです。


予測の条件など

前回と同様です。(詳細: 3週前の人流がデルタ株の増減と最も相関していたという解説)

  • 変異株ごとの前週比
    BA.2の前週比に対してBA.2.12.1は1.4倍、BA.5は2.25倍。現実には曲線になると思われるが、BA.2の前週比1.0倍付近では近似できるとみなしている。
  • 2週前の人流
    1週前×1 + 2週前×3 で、実質1.75週前の人流と前週比を対応させている。12日くらい前をピークにした正規分布のほうがより適切だと思われるが、労力の都合で人流データを週単位でしか取れていないので、苦肉の策。厚労省のアドバイザリーボードの資料または都のモニタリング会議の資料から、繁華街の滞留人口を人力で(!)読み取っている。
  • 3週前の感染者数
    3週前の感染者数によって、2週前の人流が変動するという仕組み。これのおかげで、観測された過去の人流だけでは2週先までが限界になる予測を、二段ばしごのようにさらに先まで伸ばすことができる。以前の予測では感染者数の「最大値が前週比に影響する」としていたが、「週合計が人流に影響する」ほうが現実に即していたので変更した。
  • ワクチン接種
    個人単位では (1-(経過週数/56週))1/4 の曲線で効果が減衰するものとする。都民全員がワクチンと自然免疫を同時に獲得した直後の集団免疫を仮に200%とし、減衰後の 1-(集団免疫/200%)2 だけ前週比が減るものとする。これはワクチンと自然免疫の重なりをひとまとめに扱うための便宜的な近似。また、仮に経過週数が同じなら、対デルタに比べて対オミクロンの効果は80%とする。これらは前週比に与える影響自体は大きいが、週単位で大きく変動するわけではないので、5週予測の精度というよりも、過去の感染の波との整合性に影響している。(大局的な齟齬がなければ、これらの計算式は週単位の予測にはあまり影響しない)
  • 感染による免疫
    発表の3.5倍の感染者数を想定。効果はワクチンと同等とみなす。5週予測に与える影響もワクチンと同様。
  • 入国者数(海外渡航歴のある感染者)
    感染者の絶対数が少ない時期ほど、BA.2の前週比の割にBA.5の前週比が前述の倍率より高くなりやすいので、入国によるかさ増しを想定している。
  • 祝日や連休など
    祝日は休診の影響でいったん感染者数が減り、逆にその後は休診明けのリバウンドと行楽などによる感染増で感染者数が増えるものとする。月曜と金曜の違いや連休日数に応じて、3.5%から35%までの幅で決め打ちしているが、まだ改善の余地がある。


他の予測など

今週は、CATsによる予測が毎日更新されているのみで、内閣府のAI・シミュレーションプロジェクトでは、東京都ではなく全国の予測が1つ公開されていました。(敬称略)

縦軸の感染者数はそれぞれスケールが異なりますが、横軸と予測の色は比較しやすいように時期を揃えてあります。予測が多数ある場合は、楽観と悲観など、代表例のみ紹介しています。日付は原則として予測資料の公開日。より正確には各予測のリンク先を参照してください。

※ 特に断りがない限り、感染者数はいずれも7日平均なので、祝日などによるブレがなければ1日単位の最大値はその1.2-1.5倍くらいになることが多いです。

  • CATs / 三浦瑠麗
    8/29(月) 8/30(火) 8/31(水) 9/01(木) 9/02(金) ※毎日更新されるが、同じURLで記事が上書きされてしまうので、可能な範囲で記録に残してリンクしている。

  • 名古屋工業大学 平田晃正
    ※8/18版は「千葉県の感染者数の東京計上を補正」など。大阪・埼玉・新潟・高知の報道は反映されていないと思われる。公開日は8/18となっているが、実際の掲載日は8/22だった。

  • 筑波大学 倉橋節也

  • 東京大学 大澤幸生
    ※スケールの差が大きいので、グラフを2つに分けた。

  • 慶應義塾大学 栗原聡
    ※8/30に東京都ではなく全国の予測が公開されている。8/30時点の現実の7日平均17万8000人に対して、11月末まで13万人を超える高止まりという内容。

  • 創価大学 畝見達夫

  • 参考: 当予測

  • 参考: 東京大学 仲田泰祐
    ※「今後新規陽性者数がこうだったら」という仮定に基づいて、病床推移などを予測するのが主眼なので、感染者数の予測ではない。ただし、ピークの仮定が「1万人・2万人・3万人」や「第6波の2倍(3万6000人)」などと、結果的に現実(3万2000人)に近い数字が考察されている。


あとがき

BA.5の感染力、重症や死者数、ワクチンの追加接種などの考察は、7月6日版の記事に書いています。

ここに載せていないものも含む各種グラフは、毎日更新しています。

どうして、こんなに、減ってるの!?

(見出し太字赤字だけに目をすべらせても、だいたいわかるように書きました)


感染による免疫は、効果あり

過去にコロナに感染した人が「再感染」する確率は、もともと低いとされていましたが、韓国ではBA.5による感染が拡大して以降、再感染率が平均3%から6%へと上昇しています。これは確かにBA.5に既存の免疫が効きにくいことを示しています。しかしそれでも、韓国の感染経験者が7月末までに2000万人もいて、全人口5200万人のうち38%が再感染のサイコロを振り続けていることを考えれば、実際に再感染する確率自体は極めて低いと言えます。

仮にBA.5が過去の感染による免疫を完全に回避するなら、BA.5の再感染率は感染経験のある国民と同じ、38%になるはずです。でも現実には6%に抑えられている。つまり単純計算で過去の感染経験は、84%の対感染効果があるということです。

※ 無症状のために検査もしなかった隠れ感染者、つまり感染の補足率にかかわらず、この関係は成り立ちます。(その場合、「感染経験」ではなく「感染と判定された経験」となります)

※ 感染免疫の減衰、「1年前の感染経験なんてほとんど効果を失っている」といった視点では、むしろより一層この関係は成り立ちます。38%の感染経験者のうちたとえば19%が、既に免疫を失っていると考えてみましょう。すると、BA.5の再感染率は6%ではなく19%のほうに近づかなくてはなりません。そうした減衰の結果も含めて現実が6%になっているのです。

感染による免疫に高い効果があるというカタールの報告もあります。特に、デルタ以前の感染経験は(減衰か免疫回避かにかかわらず)BA.4/5の感染に対して28.3%しか効果がない一方で、オミクロン(BA.1/2)への感染経験はBA.4/5に対して79.7%も効果があるとされています。韓国の感染経験は2000万人のうち1900万人以上がオミクロンですから、上述の84%という単純計算ともよく整合すると言えます。


都民の20%が感染を経験している

40%に達する韓国ほどではありませんが、都民も相当感染しています。若い世代では30%、都民全体でも20%が感染済みで、その大半がオミクロンによる感染です。

※ BA.5による第7波は、これからの下り坂でさらに感染者が増えることに注意。

そしてこれは、あくまで検査して報告された感染者数なので、実際の感染者数はもっと多いと予想されます。東京都の8月の「無症状率」は10%未満なのに対して、全員を検査していた5月までの空港検疫では無症状が77%、検査免除の国が多くなった6月以降でさえ70%でした。また、ランダムに選ばれた家を訪問して毎月30万件レベルで統計をとっているイギリスでは、感染者のうち40%が無症状だと報告されています。もともとの対象集団も調査手法も異なるので単純比較はできませんが、少なくとも検査によって補足された以上に多くの感染者がいることは確かです。また、昨年夏の第5波以降、検査体制が逼迫するたびに検査漏れが多く発生していたことも考慮しなければなりません。


増えやすい変異株こそ、減りやすい

矛盾しているようですが、両立するのです。

デルタに感染した人が他の誰かに感染させるまでの平均時間(世代時間)は5日、オミクロンでは2日だと推定されています。これはつまり、

1人が平均1.2人に感染させるような(実効再生産数1.2)の状況では、100人の感染者が

  • デルタなら5日後に120人、7日後には129人に増える
  • オミクロンでは2日後に120人、7日後には189人に増える

逆に、1人が平均0.9人にしか感染させない状況であれば、100人の感染者が

  • デルタなら5日後に90人、7日後には86人に減る
  • オミクロンでは2日後に90人、7日後には69人に減る

ということです。

「毎週1.89倍に増えていたものが、どうして0.69倍にまで減ってしまうのか」と考えると非常に大きな力が働いたように見えますが、実は、人流に換算すれば1日平均12人と接触していた人が9人に減らすだけで、免疫であれば都民のうち25%が感染をはねのけるだけで、達成できてしまうのです。そして実際には人流も小幅ながら減っているし、感染による免疫だけでなくワクチンも追加接種されているわけです。

※ ワクチンの感染に対する効果は、本来は「ワクチンを接種したこともないし、自然感染したこともない」という集団を対照として比較しなければなりませんが、いまや多くの国でそのような人はほとんどおらず、イギリスでは成人の96%が一定以上の抗体を保持していて、「抗体を多少なりとも保持している」というレベルであればほぼ100%に達しています。よって、ワクチンの効果として発表される数字の多くが実質的に「自然感染の経験者」との比較になっていることに注意が必要です(「多少なりとも抗体を保持している」レベルとの識別は特に困難)。もちろん、結果的にそうした数字は「今、実際に接種することの効果」を測る上ではむしろ適切で、だからこそ対感染の効果よりも対入院・重症・死亡の効果が相対的に重視されるようになったわけです。

※ 実際には世代時間だけでなく、体内で増えるウイルス量や、免疫回避能力も変異株によって異なります。よって、世代時間が同じでもウイルス量が多い・免疫を回避する、「増えやすいし、減りにくい」という困った変異株が登場することもあります。


行動制限しなくても感染は収束する?

はい、します。

しかし、過去の行動制限に意味がなかったと考えるのは早計です。確かに今年初めの第6波でも、行動制限せずに放置していれば、今回の第7波と同じくらいの感染規模を許容するなら、やはり自然に収束していったものと思われます。しかしワクチンの3回目接種すらままならなかった状況で第7波並の感染規模を経験していれば、当時でさえ崩壊していた医療の現場がどうなっていたか、想像するのは恐ろしいことです。それを経験したのが同時期の韓国だったとも言えます。

逆に、第6波では1月末時点で3回目接種率が3.6%でしかなかったにもかかわらず、そして感染規模も第7波に比べればずっと小さかったにもかかわらず、2月に感染を減少に転じさせることができたのは、1月21日にまん延防止等重点措置によって行動制限したからこそだと言えます。

感染拡大と縮小の仕組みは、マスク着用など人間の行動の中身だけでなく、ワクチン、人流、変異株、そして減少局面では特に感染免疫という複数の要因が同時に関係していて、とても複雑です。これらの要因のうちいくつかを選んで「まったく関係ない」などとする人類の無力感を強調する言説も多く見られますが、あくまで「そう見える」だけです。特に今回の第7波で言えば、人流は行動制限ではなく感染増に伴う自然な減少だけ、ワクチンも主に高齢者の追加接種だけだったにもかかわらず、過去最多の感染免疫のおかげで、感染減少にこぎ着けることができました。(もっとも、この事実を人類の無力と捉えることはできます)

※ このほか、季節要因はインフルエンザの例からも冬に流行しやすいなどの影響が、また年末年始やお盆の人流を季節要因の一種とみなすこともできます。


これからのコロナ

過ぎたことですが、できることなら、ワクチンの4回目接種について前回接種からきっちり5ヵ月待ってもらうことなく、前倒しで接種を始めていれば、第7波の医療逼迫は、少なくとも現実より抑えられたものと思います。(入院病床の70%以上は、4回目接種の対象である60代以上が占めているのです)

しかし、幸か不幸か、日本も少しずつ感染による免疫を欧米並に獲得しつつあり、オミクロン対応のワクチンが間もなく手に入るようになることも合わせて、今後当面、医療崩壊の恐れはないものと期待しています。BA.2.75 (ケンタウロス) と BA.4.6 の感染力も相対的には弱く、そのほかに脅威となる変異株も見つかっていません。

欧米のようにマスクを外す生活をいち早く手に入れたいなら、医療崩壊だけは避けるレベルを見定めながら、むしろこれからもたくさん感染を経験した方がよいと言えます。イギリスでは、自主的な検査ではなく家庭訪問による検査の統計で、昨年8月からの1年間で国民の175%が感染していると見られます。これがある意味で欧米の原動力です。もちろん好き好んで自ら感染したい人はいないでしょうし、どんな感染も新たな変異株を誕生させるきっかけになることも忘れてはいけません。結局のところ、「正解のない、むずかしい問題だ」ということですね。

※ イギリスの統計基準は、週単位かつCt値が30以下。Ct値の平均推移から、デルタではおおむね全数とみなせるが、オミクロンではやや取りこぼしがある(感染者数はもっと多い)かもしれない。


追記: コメントで韓国や台湾との差についての疑問がいくつか寄せられました。まず、本記事ではなじみ深くデータも取りやすい「人流」という形で表現していますが、より具体的には「人と人の接触機会、ウイルスに触れる機会の総和」だと言えます。これは1日に平均して会う人数だけでなく、接触時間、接触距離、それこそマスクの有無やキス、ハグ、握手、声の大きさまで少しずつ影響すると思われます。それらが、オミクロン以降、わずか10%の差が2日後に1.1倍、7日後には1.4倍、28日後には3.8倍の差になるほど敏感に影響するのです。日本国内でさえ都道府県によって差がある以上、海外との生活習慣の差はずっと大きいでしょう。加えて、感染者数や医療逼迫の報道などに対する国民の心理的反応(行動自粛)の大きさや、時期による空気感や世論の変動、もちろんワクチンの種類や接種時期、感染による免疫も違うはずです。なので、国によって大きな差が生まれるのはある意味で当然だと言えます。

東京の感染者数を5週間ぶん予測した (8月25日版)

※ 9月1日版を公開しました knoa.hatenablog.com


前回の予測

前回、8月18日の5週予測のうち、1週目の週平均は予測24255人→現実24743人となりました。ただし、先週発覚した千葉県に続いて、大阪府・埼玉県・新潟県のオンライン登録分も東京都に計上されていたことが8月21日に、さらに高知県分も23日に、それぞれ発覚しました。ただし、新潟県高知県の誤計上は発覚以降は取り除かれていて、千葉県分についても24日発表分から段階的に解消される見込みとなっています。なお、現状、これらの誤計上の過去の正確な人数は不明なままで、報道の断片を頼りに推定するしかありません。今後、正確な数字が発表されるかも不明です。

予測日-7/11-7/18-7/25-8/01-8/08-8/15-8/22
7/06700018569388906609375440
7/13 1506024500349023422826896
7/21 26693314523084918850 9508
7/28 31458284081913710648
8/04 328082307915521
8/11 2497022887
8/18 24255
現実 8054162162592732116311512637924743

(スマホなど小さな画面でご覧の方は、隠れてしまった表の中身を左右にスライドさせることができます)

人流の影響を3週前から2週前へ修正する前の、7/06の予測とはズレが大きくなっています。

7/21までは実質的に「誤計上除外」の推移を予測していたと言えます。8/11までは誤計上されたデータに基づいて、それを知らずに予測していたことになります。大阪府・埼玉県・新潟県高知県の誤計上は、期間も数も多くが不明のままです。予測に与えている影響も不明です。

8/04には繁華街人流の増加を受けて、8/11には帰省の大幅回復を受けて上方修正しています。


今回の予測

(注: 東京都の独特なデータ公開形式の都合で、週の区切りが火曜から翌週月曜までであることに注意してください。グラフ中の「-8/29」は「8/23(火)-8/29(月)」の7日間の週平均を指します)

今回の予測は、減少速度が弱まり、下り坂が少し緩やかになりました。

1つには、お盆の特殊な人流によるリバウンドが予想以上に大きかったことがありますが、これは一時的な「一回休み」で、その後の下り坂の角度にまで影響するものではありません。下り坂の角度が緩くなったのは、無症状で検査をしないまま発表数にカウントされない感染者数の想定を、「発表の4倍」から「発表の3.5倍」に修正したことによります。これは予測と現実のズレに合わせて修正したものですが、千葉県などの誤計上による誤謬かもしれないので、今後再修正するかもしれません。

なお、少なくとも千葉県分の誤計上は8月23日報告分・24日発表分以降、段階的に解消されるはずなのですが、25日現在でいまのところその兆候が見られません。千葉県分の誤計上だけで東京都の感染者数の10%以上を占めているので、見通し不透明な変動の幅が大きいことに注意が必要です。


BA.2.75 (ケンタウロス) と BA.4.6

前回の予測と同様で、当面、比率は増えても実数で増えることは考えにくいです。

東京都ではBA.2.75の検出ゼロまたは1件という週が続いていますBA.4.6は東京都ではなく日本全体のゲノム解析でしか統計がありませんが、全体のわずか0.1-0.3%となっています


予測の条件など

感染による免疫の係数を「発表の4倍」から「発表の3.5倍」に修正。ほかは、前回と同様です。(詳細: 3週前の人流がデルタ株の増減と最も相関していたという解説)

  • 変異株ごとの前週比
    BA.2の前週比に対してBA.2.12.1は1.4倍、BA.5は2.25倍。現実には曲線になると思われるが、BA.2の前週比1.0倍付近では近似できるとみなしている。
  • 2週前の人流
    1週前×1 + 2週前×3 で、実質1.75週前の人流と前週比を対応させている。12日くらい前をピークにした正規分布のほうがより適切だと思われるが、労力の都合で人流データを週単位でしか取れていないので、苦肉の策。厚労省のアドバイザリーボードの資料または都のモニタリング会議の資料から、繁華街の滞留人口を人力で(!)読み取っている。
  • 3週前の感染者数
    3週前の感染者数によって、2週前の人流が変動するという仕組み。これのおかげで、観測された過去の人流だけでは2週先までが限界になる予測を、二段ばしごのようにさらに先まで伸ばすことができる。以前の予測では感染者数の「最大値が前週比に影響する」としていたが、「週合計が人流に影響する」ほうが現実に即していたので変更した。
  • ワクチン接種
    個人単位では (1-(経過週数/56週))1/4 の曲線で効果が減衰するものとする。都民全員がワクチンと自然免疫を同時に獲得した直後の集団免疫を仮に200%とし、減衰後の 1-(集団免疫/200%)2 だけ前週比が減るものとする。これはワクチンと自然免疫の重なりをひとまとめに扱うための便宜的な近似。また、仮に経過週数が同じなら、対デルタに比べて対オミクロンの効果は80%とする。これらは前週比に与える影響自体は大きいが、週単位で大きく変動するわけではないので、5週予測の精度というよりも、過去の感染の波との整合性に影響している。(大局的な齟齬がなければ、これらの計算式は週単位の予測にはあまり影響しない)
  • 感染による免疫
    発表の3.5倍の感染者数を想定。効果はワクチンと同等とみなす。5週予測に与える影響もワクチンと同様。
  • 入国者数(海外渡航歴のある感染者)
    感染者の絶対数が少ない時期ほど、BA.2の前週比の割にBA.5の前週比が前述の倍率より高くなりやすいので、入国によるかさ増しを想定している。
  • 祝日や連休など
    祝日は休診の影響でいったん感染者数が減り、逆にその後は休診明けのリバウンドと行楽などによる感染増で感染者数が増えるものとする。月曜と金曜の違いや連休日数に応じて、3.5%から35%までの幅で決め打ちしているが、まだ改善の余地がある。


他の予測など

今週は、CATsによる予測が毎日更新されていたほか、内閣府のAI・シミュレーションプロジェクトで8月22日(月)に1つ修正版が公開されていました。(敬称略)

今回から、これまでに紹介したすべての予測の履歴グラフを掲載します。縦軸の感染者数はそれぞれスケールが異なりますが、横軸と予測の色は比較しやすいように時期を揃えてあります。予測が多数ある場合は、楽観と悲観など、代表例のみ紹介しています。日付は原則として予測資料の公開日。より正確には各予測のリンク先を参照してください。

※ 特に断りがない限り、感染者数はいずれも7日平均なので、祝日などによるブレがなければ1日単位の最大値はその1.2-1.5倍くらいになることが多いです。

※ 「現実」のグラフに千葉県などの誤計上は考慮されていません。


あとがき

BA.5の感染力、重症や死者数、ワクチンの追加接種などの考察は、7月6日版の記事に書いています。

ここに載せていないものも含む各種グラフは、毎日更新しています。

東京の感染者数を5週間ぶん予測した (8月18日版)

※ 8月25日版を公開しました knoa.hatenablog.com


前回の予測

前回、8月11日の5週予測のうち、1週目の週平均は予測24970人→現実26379人となりました。ただし、7月21日以降、千葉県のオンライン登録分が東京都に計上されていたことが8月16日に発覚しました。誤計上の人数も千葉県の言い分と東京都の言い分が食い違うほか、発覚後も、制度上の都合で東京都は千葉県分を含んだ感染者数を発表し続ける事態になっています。残念ながら、予測精度の確認もぐだぐだになってしまっていると言うほかありません。

予測日-7/04-7/11-7/18-7/25-8/01-8/08-8/15
7/06 700018569388906609375440
7/13 1506024500349023422826896
7/21 26693314523084918850
7/28 314582840819137
8/04 3280823079
8/11 24970
現実 338080541621625927321163115126379

(スマホなど小さな画面でご覧の方は、隠れてしまった表の中身を左右にスライドさせることができます)

人流の影響を3週前から2週前へ修正する前の、7/06の予測とはズレが大きくなっています。7/21までは実質的に「千葉除外」の推移を予測していたと言えます。8/11までは千葉を含んだデータに基づいて、千葉を含まないはずの推移を予測していたことになります。また、8/04には繁華街人流の増加を受けて、8/11には帰省の大幅回復を受けて上方修正しています。


今回の予測

(注: 東京都の独特なデータ公開形式の都合で、週の区切りが火曜から翌週月曜までであることに注意してください。グラフ中の「-8/22」は「8/16(火)-8/22(月)」の7日間の週平均を指します)

今回の予測は、前回とほぼ同じです。千葉県のオンライン登録分については、これまでの予測もそれを含んだデータに基づいていたことになり、先述の通り、今後とも東京都の発表数には含まれ続けるとのことです。


BA.2.75 (ケンタウロス) と BA.4.6

引き続き、BA.2.75の流行はインドのみに留まり続けています。いっぽう、BA.4.6がイギリスとアメリカで5%に達するなど、各国で少しずつ「割合を」増やしていくことが予想されます。ただし、(一時的にお盆明けのリバウンドで増えている地域もありますが)日本も含めて多くの国で既にBA.5を減らしている環境になっていて、そのような環境下では、BA.5のほうがもっと減るのでBA.4.6の割合は増えるものの、BA.4.6が実数で大きく増える(前週比が1.0を大きく超える)ことは考えにくいです。

東京都ではBA.2.75の検出ゼロの週が続いていて、当面、全体の感染者数に影響を与えるほど増加する心配はまったくありません。BA.4.6は東京都ではなく日本全体のゲノム解析でしか統計がありませんが、全体のわずか0.1-0.2%となっていて、先述の通り、当面、比率は増えても実数で増えることは考えにくいです。


予測の条件など

前回と同様です。(詳細: 3週前の人流がデルタ株の増減と最も相関していたという解説)

  • 変異株ごとの前週比
    BA.2の前週比に対してBA.2.12.1は1.4倍、BA.5は2.25倍。現実には曲線になると思われるが、BA.2の前週比1.0倍付近では近似できるとみなしている。
  • 2週前の人流
    1週前×1 + 2週前×3 で、実質1.75週前の人流と前週比を対応させている。12日くらい前をピークにした正規分布のほうがより適切だと思われるが、労力の都合で人流データを週単位でしか取れていないので、苦肉の策。厚労省のアドバイザリーボードの資料または都のモニタリング会議の資料から、繁華街の滞留人口を人力で(!)読み取っている。
  • 3週前の感染者数
    3週前の感染者数によって、2週前の人流が変動するという仕組み。これのおかげで、観測された過去の人流だけでは2週先までが限界になる予測を、二段ばしごのようにさらに先まで伸ばすことができる。以前の予測では感染者数の「最大値が前週比に影響する」としていたが、「週合計が人流に影響する」ほうが現実に即していたので変更した。
  • ワクチン接種
    個人単位では (1-(経過週数/56週))1/4 の曲線で効果が減衰するものとする。都民全員がワクチンと自然免疫を同時に獲得した直後の集団免疫を仮に200%とし、減衰後の 1-(集団免疫/200%)2 だけ前週比が減るものとする。これはワクチンと自然免疫の重なりをひとまとめに扱うための便宜的な近似。また、仮に経過週数が同じなら、対デルタに比べて対オミクロンの効果は80%とする。これらは前週比に与える影響自体は大きいが、週単位で大きく変動するわけではないので、5週予測の精度というよりも、過去の感染の波との整合性に影響している。(大局的な齟齬がなければ、これらの計算式は週単位の予測にはあまり影響しない)
  • 感染による自然免疫
    発表の4倍の感染者数を想定。効果はワクチンと同等とみなす。5週予測に与える影響もワクチンと同様。
  • 入国者数(海外渡航歴のある感染者)
    感染者の絶対数が少ない時期ほど、BA.2の前週比の割にBA.5の前週比が前述の倍率より高くなりやすいので、入国によるかさ増しを想定している。
  • 祝日や連休など
    祝日は休診の影響でいったん感染者数が減り、逆にその後は休診明けのリバウンドと行楽などによる感染増で感染者数が増えるものとする。月曜と金曜の違いや連休日数に応じて、3.5%から35%までの幅で決め打ちしているが、まだ改善の余地がある。


他の予測など

今週は、CATsによる予測が毎日更新されているほか、内閣府のAI・シミュレーションプロジェクトで8月16日(火)に2つ公開されていました。(敬称略)

今回から、各予測の履歴グラフを追加しました。縦軸の感染者数はそれぞれスケールが異なりますが、横軸と予測の色は比較しやすいように時期を揃えてあります。予測が多数ある場合は、楽観と悲観など、代表例のみ紹介しています。日付は原則として予測資料の公開日。より正確には各予測のリンク先を参照してください。

※ 特に断りがない限り、感染者数はいずれも7日平均なので、祝日などによるブレがなければ1日単位の最大値はその1.2-1.5倍くらいになることが多いです。


あとがき

BA.5の感染力、重症や死者数、ワクチンの追加接種などの考察は、7月6日版の記事に書いています。

ここに載せていないものも含む各種グラフは、毎日更新しています。

東京の感染者数を5週間ぶん予測した (8月11日版)

※ 8月18日版を公開しました knoa.hatenablog.com


前回の予測

前回、8月4日の5週予測のうち、1週目の週平均は予測32808人→現実31151人となりました。

予測日-7/04-7/11-7/18-7/25-8/01-8/08
7/06 700018569388906609375440
7/13 15060245003490234228
7/21 266933145230849
7/28 3145828408
8/04 32808
現実 3380805416216259273211631151

(スマホなど小さな画面でご覧の方は、隠れてしまった表の中身を左右にスライドさせることができます)

人流の影響を3週前から2週前へ修正する前の、7月6日の予測とはズレが大きくなっています。


今回の予測

(注: 東京都の独特なデータ公開形式の都合で、週の区切りが火曜から翌週月曜までであることに注意してください。グラフ中の「-8/15」は「8/09(火)-8/15(月)」の7日間の週平均を指します)

前回と同様に、8月上旬のピークを越えて、大きく減っていくという予測です。ただし、お盆の影響をより悲観的に見直したことで、下り坂の形が大きく膨らんでいます。これは感染状況や医療の逼迫が伝えられる中でも、なお帰省が昨年に比べて大きく回復しているとの報道によります。

本日の山の日も含めたお盆の影響は、明日以降の減少と、その後の一時的な増加という形で現れるはずですが、正月やゴールデンウィークなどと共に、予測の難しい時期となっています。(帰省の人流が交通機関の予約状況などからデータ化できれば助けになるとは思いますが、本予測では都心の繁華街しかデータ化できていません)


BA.2.75 (ケンタウロス)

引き続き、データが不足して予測に組み込める状況ではありません。が、少なくとも東京においては、BA.5の増加の割に、BA.2.75の検出数は相対的に極めて少なくなっています。インドではBA.5に対する優位が現れてきましたが、世界的に見ると、流行していると言えるのは依然としてインドだけとなっています。


予測の条件など

「祝日や連休など」のパーセンテージを除けば、前回と同様です。(詳細: 3週前の人流がデルタ株の増減と最も相関していたという解説)

  • 変異株ごとの前週比
    BA.2の前週比に対してBA.2.12.1は1.4倍、BA.5は2.25倍。現実には曲線になると思われるが、BA.2の前週比1.0倍付近では近似できるとみなしている。
  • 2週前の人流
    1週前×1 + 2週前×3 で、実質1.75週前の人流と前週比を対応させている。12日くらい前をピークにした正規分布のほうがより適切だと思われるが、労力の都合で人流データを週単位でしか取れていないので、苦肉の策。厚労省のアドバイザリーボードの資料または都のモニタリング会議の資料から、繁華街の滞留人口を人力で(!)読み取っている。
  • 3週前の感染者数
    3週前の感染者数によって、2週前の人流が変動するという仕組み。以前の予測では感染者数の「最大値が前週比に影響する」としていたが、「週合計が人流に影響する」ほうが現実に即していたので変更した。
  • ワクチン接種
    個人単位では (1-(経過週数/56週))1/4 の曲線で効果が減衰するものとする。都民全員がワクチンと自然免疫を同時に獲得した直後の集団免疫を仮に200%とし、減衰後の 1-(集団免疫/200%)2 だけ前週比が減るものとする。これはワクチンと自然免疫の重なりをひとまとめに扱うための便宜的な近似。また、仮に経過週数が同じなら、対デルタに比べて対オミクロンの効果は80%とする。これらは前週比に与える影響自体は大きいが、週単位で大きく変動するわけではないので、5週予測の精度というよりも、過去の感染の波との整合性に影響している。(大局的な齟齬がなければ、これらの計算式は週単位の予測にはあまり影響しない)
  • 感染による自然免疫
    発表の4倍の感染者数を想定。効果はワクチンと同等とみなす。5週予測に与える影響もワクチンと同様。
  • 入国者数(海外渡航歴のある感染者)
    感染者の絶対数が少ない時期ほど、BA.2の前週比の割にBA.5の前週比が前述の倍率より高くなりやすいので、入国によるかさ増しを想定している。
  • 祝日や連休など
    祝日は休診の影響でいったん感染者数が減り、逆にその後は休診明けのリバウンドと行楽などによる感染増で感染者数が増えるものとする。月曜と金曜の違いや連休日数に応じて、3.5%から35%までの幅で決め打ちしているが、まだ改善の余地がある。


他の予測など

今週は、CATsによる予測が毎日更新されているのみで、いまのところ内閣府のAI・シミュレーションプロジェクトの更新はありませんでした。(敬称略)

※ 特に断りがない限り、感染者数はいずれも7日平均なので、祝日などによるブレがなければ1日単位の最大値はその1.2-1.5倍くらいになることが多いです。

※ 感染者数のピークを過ぎたので、各予測の内容は、ピークの代わりに適宜指標を決めて紹介していきます。

  • 東京都のコロナ新規感染者数(第7波)は「減少加速」 (CATs)
    8月01日: 東京都は8月上旬にピークで3万4000人
    8月02日: 東京都は8月上旬にピークで3万3000人
    8月03日: 東京都は8月上旬にピークで3万5000人
    8月04日: 東京都は8月上旬にピークで3万3000人
    8月05日: 東京都は8月上旬にピークで3万3000人
    8月06日: 更新なし
    8月07日: 更新なし
    8月08日: 東京都は8月31日時点で2万0000人
    8月09日: 東京都は8月31日時点で2万0000人
    8月10日: 東京都は8月31日時点で1万9000人
    8月11日: 東京都は8月31日時点で1万8000人
    8月12日: 東京都は8月31日時点で1万6000人
    8月13日: 更新なし
    8月14日: 更新なし
    8月15日: 東京都は9月7日時点で1万3000人
    8月16日: 東京都は9月7日時点で1万4000人
    8月17日: 東京都は9月7日時点で1万3000人
    ※毎日更新されるが、同じURLで記事が上書きされてしまうので、可能な範囲で記録に残してリンクしている。


あとがき

BA.5の感染力、重症や死者数、ワクチンの追加接種などの考察は、7月6日版の記事に書いています。

ここに載せていないものも含む各種グラフは、毎日更新しています。

東京の感染者数を5週間ぶん予測した (8月4日版)

※ 8月11日版を公開しました knoa.hatenablog.com


前回の予測

前回、7月28日の5週予測のうち、1週目の週平均は予測31458人→現実32116人となりました。

予測日-7/04-7/11-7/18-7/25-8/01
7/06 7000185693889066093
7/13 150602450034902
7/21 2669331452
7/28 31458
現実 33808054162162592732116

人流の影響を3週前から2週前へ修正する前の、7月6日の予測とはズレが大きくなっています。


今回の予測

(注: 東京都の独特なデータ公開形式の都合で、週の区切りが火曜から翌週月曜までであることに注意してください。グラフ中の「-8/08」は「8/02(火)-8/08(月)」の7日間の週平均を指します)

今回の予測は、大まかな山の形はあまり変わりませんが、先週と見込んでいた週平均のピークを今週3万3000人、1日単位では3万9000人とし、それに伴って全体が後ろへずれ込んでいます。ただし、予測2週目(-8/15)は山の日やお盆の影響も含んでいるので、予測の週平均ほど減少する印象にはならないかもしれません。

この変更の主な要因は「感染増に伴って予測通りに減り続けていた人流が、逆にわずかに増加していた」ことによります。今後ともこのまま増加を続けるようなら、さらに修正が必要かもしれません。

このような人流の急変はデルタ時にも起こっていて、当時の予測記事では「タガが外れたような推移」と表現しています。当時はオリンピックが開幕されたお祭り感、今回は行動制限をしないという強いメッセージが安心感を与えたのではないかとも想像しますが、なにぶん心理的な問題なので、難しいところです。また、変異株の特性もあってか、今回は当時以上に人流の影響がすぐに現れるようになっています。(とは言え、多くの専門家が将来の人流を「現状維持とする」「前年と同様の推移とする」「1%ずつ減るものとする」などと決め打ちしているのに比べれば、都医学研の研究でも示されている「感染者数が人流に影響する」という動的な指標は、それでも優れていると思っています)

ただ、ここ1週間ほど、検査報告の遅れ具合が非常に激しく変動していて、感染者数だけでなく、陰性報告ほど優先度が低くなることから陽性率もアテにならず、実態の正しい把握が難しくなっています。検査数が上限付きで削減されてしまった第6波ほどの事態ではないにしろ、発熱外来の受診抑制の要請(マイナス要因)や、無料検査キットの送付オンラインでの検査診断の開始(プラス要因)などもあって、日々の感染者数の一貫性は薄れてしまっているように思います。


BA.2.75 (ケンタウロス)

引き続き、データが不足していて、今回の予測に組み入れるには至りませんでした。これは逆に言うと、十分なデータが集まるほどBA.2.75の感染が増えていないということでもあります。唯一、ある程度の感染規模になっているインドの推移を見ても、いまのところBA.5とあまり変わらない前週比が続いています。

また、東京都もBA.2.75系統を早期に把握する検査を開始しましたが、BA.5と比べても拡大の兆候は見られません。「大したことなかった」というニュースは報道されないでしょうが、本予測記事では、近いうちにそのように宣言することができるのではないかと期待しています。


予測の条件など

「祝日や連休などの」の数字で試行錯誤しています。そのほかは、前回と同様です。(詳細: 3週前の人流がデルタ株の増減と最も相関していたという解説)

  • 変異株ごとの前週比
    BA.2の前週比に対してBA.2.12.1は1.4倍、BA.5は2.25倍。現実には曲線になると思われるが、BA.2の前週比1.0倍付近では近似できるとみなしている。
  • 2週前の人流
    1週前×1 + 2週前×3 で、実質1.75週前の人流と前週比を対応させている。12日くらい前をピークにした正規分布のほうがより適切だと思われるが、労力の都合で人流データを週単位でしか取れていないので、苦肉の策。厚労省のアドバイザリーボードの資料または都のモニタリング会議の資料から、繁華街の滞留人口を人力で(!)読み取っている。
  • 3週前の感染者数
    3週前の感染者数によって、2週前の人流が変動するという仕組み。以前の予測では感染者数の「最大値が前週比に影響する」としていたが、「週合計が人流に影響する」ほうが現実に即していたので変更した。
  • ワクチン接種
    個人単位では (1-(経過週数/56週))1/4 の曲線で効果が減衰するものとする。都民全員がワクチンと自然免疫を同時に獲得した直後の集団免疫を仮に200%とし、減衰後の 1-(集団免疫/200%)2 だけ前週比が減るものとする。これはワクチンと自然免疫の重なりをひとまとめに扱うための便宜的な近似。また、仮に経過週数が同じなら、対デルタに比べて対オミクロンの効果は80%とする。これらは前週比に与える影響自体は大きいが、週単位で大きく変動するわけではないので、5週予測の精度というよりも、過去の感染の波との整合性に影響している。(大局的な齟齬がなければ、これらの計算式は週単位の予測にはあまり影響しない)
  • 感染による自然免疫
    発表の4倍の感染者数を想定。効果はワクチンと同等とみなす。5週予測に与える影響もワクチンと同様。
  • 入国者数(海外渡航歴のある感染者)
    感染者の絶対数が少ない時期ほど、BA.2の前週比の割にBA.5の前週比が前述の倍率より高くなりやすいので、入国によるかさ増しを想定している。
  • 祝日や連休など
    祝日は休診の影響でいったん感染者数が減り、逆にその後は休診明けのリバウンドと行楽などによる感染増で感染者数が増えるものとする。月曜と金曜の違いや連休日数に応じて、3.5%から21%までの幅で決め打ちしているが、まだ改善の余地がある。


他の予測など

今週は、CATsによる予測が毎日更新されているほか、8月2日(火)にも3つ公開されていました。(敬称略)

※ 特に断りがない限り、感染者数はいずれも7日平均なので、祝日などによるブレがなければ感染ピークの1日単位の最大値はその1.2倍くらいになることが多いです。


あとがき

BA.5の感染力、重症や死者数、ワクチンの追加接種などの考察は、7月6日版の記事に書いています。

ここに載せていないものも含む各種グラフは、毎日更新しています。

東京の感染者数を5週間ぶん予測した (7月28日版)

※ 8月4日版を公開しました knoa.hatenablog.com


前回の予測

前回、7月21日の5週予測のうち、1週目の週平均は予測26693人→現実25927人となりました。予測がほぼ的中していた割には、34995人が発表された先週金曜などは、現実がかなり上回っていくように見えていたかもしれません。この週は3連休明けだったので、火曜・水曜の少なさと木曜・金曜のリバウンドの差が激しく、週平均の予測だけで済ませているデメリットが出てしまいました。

予測日-7/04-7/11-7/18-7/25
7/06 70001856938890
7/13 1506024500
7/21 26693
現実 338080541621625927

人流の影響を3週前から2週前へ修正する前の、7月6日の予測とはズレが大きくなっています。


今回の予測

(注: 東京都の独特なデータ公開形式の都合で、週の区切りが火曜から翌週月曜までであることに注意してください。グラフ中の「-8/01」は「7/26(火)-8/01(月)」の7日間の週平均を指します)

前回とほぼ同じ予測で、ピークは今週、週平均で3万1000人、1日単位のピークで3万8000人くらいと見ています。なお、昨日7月27日(水)は1日単位のピークの有力候補の1つでしたが、直前のHER-SYSの不具合によって感染者数の一部が持ち越されてしまったため、本日7月28日(木)が本来より大きく膨れ上がってしまいました。直接的な数字でいえば本日の4万0406人が1日単位のピークになる可能性が高いです。

これまで増加していたものを急減に転じさせる原動力は、自然免疫が6割、人流減が4割といったところです。第6波ではBA.1系統によるピークの後、入れ替わるようにBA.2が増えたために減少が鈍くなりましたが、今回は後述のBA.2.75も含めて、そのような兆候はいまのところありません。お盆の影響は読みにくいところですが、お盆をきっかけにした人流の活発化はあくまで一時的なものなので、仮に悪い影響が出るとしても5月のゴールデンウィーク時のように「一回休み」か「ひとマス戻る」だけで、大きな流れとしての減少傾向は継続します。

前回の予測とのわずかな違いは、主にワクチン接種のわずかな加速化と、人流減少のわずかな鈍化の影響によるものです。

さて、検査の逼迫が報道される中で、この感染者数が実態をどれだけ反映しているかという問題があります。当然、検査をあきらめるなどした不足分はあるはずですが、いっぽうで陽性率は既にピークを迎えつつあるように見えます。少なくとも現実の市中で感染が増え続けている状況ではなさそうです。

また、陽性率と感染者数の関係を示したグラフも、今回の波で感染が少なかった時期から順当な曲線を描いて推移していて、前回の第6波で国が検査数を抑制したときのような急変はいまのところありません。少なくとも、検査不足の程度は第6波よりはマシだと言えそうです。


医療の逼迫と社会の停止

ワクチンや自然免疫のおかげで、感染規模が大きいにもかかわらず、前回の第6波に比べて入院は同等、重症は少なくなっていますが、救急医療など現場は既に逼迫しています。満床になりえない、数字だけの7046床という入院病床数に意味はありません。また、死者数は高齢者を中心に感染規模に比例しがちな側面があるので、今後増えていくことも考えられます。

いっぽう、病状の軽重にかかわらず、感染者数が多すぎるあまりに社会が停止する事態にもなっています。低くなった重症化率を喜ぶのはいいのですが、それで問題がなくなったと感じさせてしまうのは間違いです。(欧米並みに今の何倍も感染を経験して、より強い集団免疫を獲得すれば、また新しいステージに至るかもしれませんが、まだ日本はその域に達していません)


BA.2.75 (ケンタウロス)

新しい強力な変異株として報道されていますが、謙虚に見ていまのところ「まだデータが少なすぎてわからない」状態で、杞憂に終わる可能性も十分あります。来週には予測に組み入れることができるかもしれませんが、大した影響がないことに期待します。


予測の条件など

前回と同様ですが、言葉足らずを承知の上で、数字と共に詳しく書き出しておきます。解説記事にはもともと書いてありますが、「祝日や連休など」も列挙項目に加えました。(詳細: 3週前の人流がデルタ株の増減と最も相関していたという解説)

  • 変異株ごとの前週比
    BA.2の前週比に対してBA.2.12.1は1.4倍、BA.5は2.25倍。現実には曲線になると思われるが、BA.2の前週比1.0倍付近では近似できるとみなしている。
  • 2週前の人流
    1週前×1 + 2週前×3 で、実質1.75週前の人流と前週比を対応させている。12日くらい前をピークにした正規分布のほうがより適切だと思われるが、労力の都合で人流データを週単位でしか取れていないので、苦肉の策。厚労省のアドバイザリーボードの資料または都のモニタリング会議の資料から、繁華街の滞留人口を人力で(!)読み取っている。
  • 3週前の感染者数
    3週前の感染者数によって、2週前の人流が変動するという仕組み。以前の予測では感染者数の「最大値が前週比に影響する」としていたが、「週合計が人流に影響する」ほうが現実に即していたので変更した。
  • ワクチン接種
    個人単位では (1-(経過週数/56週))1/4 の曲線で効果が減衰するものとする。都民全員がワクチンと自然免疫を同時に獲得した直後の集団免疫を仮に200%とし、減衰後の 1-(集団免疫/200%)2 だけ前週比が減るものとする。これはワクチンと自然免疫の重なりをひとまとめに扱うための便宜的な近似。また、仮に経過週数が同じなら、対デルタに比べて対オミクロンの効果は80%とする。これらは前週比に与える影響自体は大きいが、週単位で大きく変動するわけではないので、5週予測の精度というよりも、過去の感染の波との整合性に影響している。(大局的な齟齬がなければ、これらの計算式は週単位の予測にはあまり影響しない)
  • 感染による自然免疫
    発表の4倍の感染者数を想定。効果はワクチンと同等とみなす。5週予測に与える影響もワクチンと同様。
  • 入国者数(海外渡航歴のある感染者)
    感染者の絶対数が少ない時期ほど、BA.2の前週比の割にBA.5の前週比が前述の倍率より高くなりやすいので、入国によるかさ増しを想定している。
  • 祝日や連休など
    祝日数×4%だけ休診の影響で感染者数が減るものとする。逆に前週の祝日数×10%だけ、休診明けのリバウンドと行楽などによる感染増で感染者数が増えるものとする。ここはパーセンテージのみならず月曜と金曜の違いや連休日数の違いなど、まだ改善の余地がある。


他の予測など

今週から、第6波でも予測していたCATsによる予測が毎日更新されるようになったほか、7月26日(火)にも1つ公開されていました。(敬称略)

※ 特に断りがない限り、感染者数はいずれも7日平均なので、祝日などによるブレがなければ感染ピークの1日単位の最大値はその1.2倍くらいになることが多いです。


あとがき

BA.5の感染力、重症や死者数、ワクチンの追加接種などの考察は、7月6日版の記事に書いています。

ここに載せていないものも含む各種グラフは、毎日更新しています。